生活の中での「生きづらさ」に着目
大人の発達障害の特性を理解
渋谷駅前メンタルクリニック
(渋谷区/渋谷駅)
最終更新日:2025/03/03


- 保険診療
近年、メディアで取り上げられることが多くなった大人の発達障害。「渋谷駅前メンタルクリニック」の唐渡雅行院長によると、大人の発達障害はADHD(注意欠陥多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)などがあり、先天性の要因が大きいと考えられているそうだ。だが、症状の程度によっては、幼少期には人間関係などの問題が目立たないことも多く、大人になってからADHDやASDと診断されるケースが増えている。集中力の低下や段取りの悪さ、不注意によるミスの連発など、社会生活に悪影響を及ぼすこともある発達障害の症状。ADHDはどうやって改善をめざすのか、薬や根本的な治療法が存在しないASDであっても受診する意味はあるのか。唐渡院長に話を聞いた。
(取材日2025年2月5日)
目次
大人の発達障害の患者に必要なのは「気づき」。特性を理解して行動することで、改善をめざす
- Q大人の発達障害とはどのようなものなのか教えてください。
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A
▲名古屋での診療経験を生かし、新たに渋谷での診療を始める
大人の発達障害は、ADHD(注意欠如多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)に大別されます。ADHDの主な症状は、多動性・衝動性や不注意。ASDの場合は、対人コミュニケーションが苦手だったり、特定の物事に強いこだわりを持つ傾向があったり、聴覚や触覚などの感覚が過敏もしくは鈍感です。ASDは、アスペルガー症候群といわれていたような病像を緩やかなスペクトラム(連続性)として捉えたものです。これらの症状は1種類だけ現れるとは限らず、またうつ病など他の精神疾患を合併するケースもあります。
- Q大人になってから発症することもあるのですか?
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A
▲幼少期での特徴や癖が発見の鍵になることも
大人の発達障害の原因は完全には解明されていませんが、先天性の要因が大きいと考えられています。ですので、大人になってから発症するというものではありません。ただ、軽度のADHDやASDで多少落ち着きがなかったり、感覚が過敏だったり、人の輪に入りにくかったとしても、成長するまで問題が目立たないことも多いのです。大人になって社会に出てから職場や家庭で困り事が増え、「もしかして」と受診される方が増えています。メディアで大人の発達障害について取り上げられる機会が増えたことも、ご本人が「自分もそうかもしれない」と思うきっかけの一つになっているのでしょう。
- Q社会生活の中では、どのような困難が感じるのでしょうか?
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A
▲特性を生かす分野や働き方の工夫が大切
ADHDの症状の一つである多動は年齢とともに落ち着くことが多いです。ですが社会に出ると集中力の低下や段取りの悪さが仕事に悪影響を及ぼしてしまい、不注意によるミスが重なり、予定や締め切りを忘れてしまうことも。そこから対人関係にトラブルが生じ、自信喪失からうつ病や不安障害へとつながるケースもあります。ASDの場合はコミュニケーションが取りにくく、言葉を額面どおりに受け取ってしまうので冗談や皮肉が通じにくいことなどが挙げられます。急な予定変更や環境の変化に対応しにくいなどのケースもありますね。いずれもご本人の性格や知能の問題ではなく症状の特性なのですが、程度によって生きづらさを感じることは確かです。
- Q心療内科や精神科を受診する目安はありますか?
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A
▲大人になってから心配して受診するケースも
大人の発達障害の診断に至る経緯は大きく2つあります。1つはご本人が「発達障害なのではないか」と受診されるケース。もう1つはうつ病など他の精神疾患の症状があり受診したところ、ベースに発達障害の特性があったとわかるケースです。いずれにしても、何かに悩んでいらっしゃるのならば早めにご来院ください。人は誰しも白と黒の間のグレーゾーンの中にいて、そのグレーが薄いか濃いかの違いだと思うのです。白黒つけることが重要ではなく、ご自身の特性を知るのは今後の生活のためにも大切なことと考えます。もしADHDやASDだったとしても、それを理解して行動できるのならば、症状の改善や生活の質の向上をめざすことが可能です。
- Qこちらで行っている治療について教えてください。
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A
▲患者の不安に寄り添った診療を心がける唐渡院長
ADHDには3種類の薬が存在し、患者さんの症状や生活に応じて使い分けをし、場合によっては併用を検討します。これらの薬は生きづらさを軽減するための補助的な役割。集中力や注意力を高めるための薬の服用、認知行動療法や心理カウンセリングなど、ADHDの特性をカバーできるような工夫を日常生活に取り入れていきます。対してASDは、うつ病や不安障害といった合併症に対する薬物療法は行えますが、ASD自体には薬や根本的な治療法がありません。ご自身の特性に気づいていただき、日常生活や仕事上での支障軽減のための習慣を確執し、必要に応じて職場や学校に理解を求めながら、生活の質や自己効力感を高めていくのが主な治療です。