高橋 優子 院長の独自取材記事
ゆう ひらかた乳腺・外科クリニック
(枚方市/枚方市駅)
最終更新日:2025/03/17

2024年12月、京阪本線枚方市駅北口すぐのバスロータリー沿いにあるメディカルモール2階に「ゆう ひらかた乳腺・外科クリニック」は開業した。お香の香る待合室や圧迫感を与えないカウンセリングルームなどの院内設備には、患者の精神面への配慮が感じられる。先進の3Dマンモグラフィや超音波診断装置などの検査機器で精度の高い診断を行い、一方的にならずに対話により患者を理解して丁寧に説明し、不安に寄り添うのが、高橋優子院長のポリシーだ。同院のロゴマークは、枚方市の鳥であるカワセミとキク科のハーブで「あなたの痛みを癒やします」が花言葉のエキナセアがモチーフ。そこには、「患者を癒やしたい」「狙った魚を逃さないカワセミのように病気を見逃さない」という高橋院長の強い想いが込められている。
(取材日2025年1月29日)
女性の乳腺外科医の必要性を実感し、研鑽を積む
枚方市のご出身と伺いました。

実家は枚方市で、大阪医科大学(現・大阪医科薬科大学)卒業後の研修も当時の枚方市民病院でしたし、その後市立ひらかた病院の乳腺・内分泌外科部長として戻ってきたこともあり、縁の深い土地です。大阪や名古屋、京都など、病院やクリニック、健診センターなど、さまざまな医療現場を経験し、そろそろ年齢的にも実家近くに拠点を移そうかと考えていた時に、この場所での開業のお話をいただきました。このエリアは乳腺外科のクリニックが少なかったので、乳がんの検査を希望する方や乳房に気になる症状がある方、術後の経過観察をしたい方などにとって、気軽に受診できる受け皿になりたくて、開業を決めました。
乳腺外科を専門に選んだのは、なぜですか?
医学部卒業後、母校の外科医局に入局した当初は、乳腺外科の領域はまだ一般的ではなく、正直、あまり関心はありませんでした。でも、一般・消化器外科の臨床現場で、乳がん患者さんの診療に携わったことで、考えがガラッと変わりました。当時は病気がかなり進行してから受診する方も多く、腫瘍が露出して出血による貧血進行や潰瘍が形成され、全身にがんが転移した状態の患者さんもいて、その病状を目の当たりにしたことで、女性医師だからこそデリケートな部分に配慮した診療が必要なのではないかと思い、乳腺外科を専門に選びました。
大学院で病理学を学んだそうですが、現在の診療にも生かされていますか?

当時所属していた一般・消化器外科の前教授の、「外科医も病理を学ぶべき」という考えの流れに従い、病理も学びましたが、その中でも乳腺病理は特に診断が難しいので、さらなる知識を身につけるために、大学院では病理学を専攻し研究することにしました。なかなか研究テーマが決まりませんでしたが、病理学教室の指導医の先生から愛知県立大学の先生を紹介していただき、乳がんの間質をテーマになんとか基礎研究を行うことができました。その頃から、愛知県内で乳腺診療に携わっている母校の先輩を頼って、乳腺の画像診断や乳腺病理のエキスパートの先生方に師事する機会にも恵まれたことは、乳がんのみならず、鑑別困難な病変の診断過程に非常に生かされています。現在も週1回名古屋医療センターで非常勤医師として勤めさせていただいており、引き続きスキルアップに努めるとともに、気になる症例があるときは相談に乗っていただけるのも心強いです。
先進の機器で精度の高い診断をし、啓発にも注力
開業してみて、感じていることをお聞かせください。

まず、想定していたより幅広い年齢層が来られることに驚いています。中高年の方は乳がんを心配して来院される方が多く、男性も含まれます。若い世代では、しこりや痛み、授乳期女性の乳腺炎で受診される方が多く、思春期は女の子に限らず、男の子も痛みなどで受診することもあります。乳腺の悩みは年齢・性別を問わず起こり得るので、診療を通じて、乳がん検診だけでなく、乳腺疾患全般についても知ってもらう必要性も感じています。検診については、来院時に「実は気になる自覚症状があります」と言われる方も多いので、症状がある場合には、保険診療になることも広めたいですね。市検診ではマンモグラフィだけになりますが、保険診療なら触診や超音波検査も行ってその場で結果の説明を受けられたら早くすっきりするでしょうし、乳がんの疑いが見つかれば、さらなる精査につなげることができます。
乳がんの検査について具体的に教えてください。
マンモグラフィは、乳房を圧迫し薄く延ばして撮影し、乳腺の陰影を映し出してしこりなどの異常所見を見つける乳房専用のエックス線検査です。 超音波検査は、超音波を出す探触子(プローブ)を乳房の表面に当てて、超音波の跳ね返りを画像に変換したモニターを見ながら乳房の断面を観察し、異常所見を検出します。検査を行う際には乳房の構成や検査機器の特性によって、わかりにくい病変もあることを意識して行うことが大切です。異常所見が見つかれば、適宜乳房MRI検査を行い、細胞や組織の一部を採取して、病理診断により確定をつける必要があります。当院では、病変の範囲や造影効果を確認するMRI検査は、高次医療機関に依頼しています。
先進の検査機器がそろっていますね。

検査の精度を上げ、自分自身の診断能力を維持するためにも、検査機器にはこだわりました。マンモグラフィは3D撮影も可能な低被ばくで高品質の物を導入しました。超音波診断装置は高周波のプローブで分解能力が高く、血流の程度や組織の硬さから悪性度を判別可能な機器を使用しています。また、当院では地域連携により術後の患者さんのフォローも行っています。乳がんの術後で最も多いのは、女性ホルモンの働きを抑えるための治療なので、骨粗しょう症のリスクが高まります。そのため、正確な骨密度検査を定期的に行えるよう、腰椎と大腿骨の2ヵ所で測定できる機器を導入しています。
患者との対話を大切に、不安に寄り添う診療を
診察で心がけていることを教えてください。

患者さんを理解することと、一方的にならず患者さんが話しやすい雰囲気づくりを心がけています。患者さんは性格もバックグラウンドも異なり、同じ説明でも患者さんによって受け止め方も違ってきますし、治療にあたり、お子さんのことや親御さんの介護を心配される方もいます。患者さんの表情やしぐさからその背景を推し量り、仕事や家庭環境など、気づいた点はカルテに記載し、紹介状にも書き添えます。特に初診時は、わかりやすくを心がけて画像を見せながら説明を行うため時間がかかってしまいます。乳がんの可能性を告げる場合は、不安が募って闇雲にインターネットで情報を検索しがちになるので、まずは日本乳癌学会編の“患者さん向けの乳がん診療ガイドライン”から必要な項目のみ拾い読みするように勧め、いたずらに不安をあおらないように気を配っています。
今後の展望をお聞かせください。
開業したばかりで初診の方が中心なので、まずは検診や自分の乳房を知ってもらうことに重きを置いて診療している状態ですが、ゆくゆくは地域の皆さんの乳がん検診の受診率を高め、早期発見、乳がん死の減少につなげられたらと思っています。また、乳がん患者さんのほうから「自分の経験を生かしたい」という動きがあれば、患者会のようなコミュニティーを立ちあげるお手伝いをしたいです。医師主導ではなく、必要があれば医師として軌道修正するなど、あくまでサポートの立場で患者さんの自主性を第一にした会ができたらいいですね。そして、自分自身のブラッシュアップに励まなくてはと考えています。新しい治療薬の知識もさることながら、画像診断の進化についていけるよう、研鑽を重ねて患者さんに還元したいです。
読者の皆さんへメッセージをお願いします。

乳がんは怖い病気と思われるかもしれませんが、早期発見できれば早期に対応ができ、術後も副作用のより少ないお薬での治療が可能となり再発リスクも低くなることにつながります。逆に、怖がって受診をためらっていたら、進行して一生つらく長い治療を受けることになる可能性もあります。まだまだ乳腺外科は認知度が低いので、乳がん検診で要精密検査の結果が出ても、気になる症状があっても、「どこに行けばいいの?」「産婦人科かな?」という方もいると思います。そんな方が気軽に相談できる場所が、私のクリニックです。当院は、勉強熱心で信頼できるスタッフが、患者さんに寄り添い、温かくお迎えいたします。乳がん検診をご希望の方や乳腺の痛みや張り、しこりなどお悩みがある方は、どうぞ気軽に受診していただければと思います。