大島 一成 院長の独自取材記事
おおしまメンタルヘルスクリニック飯田橋
(千代田区/飯田橋駅)
最終更新日:2026/02/13
JR中央・総武線飯田橋駅西口から徒歩3分、オフィスビルや大学が集まるエリアのビル4階にある「おおしまメンタルヘルスクリニック飯田橋」。2024年12月に開業した心療内科・精神科のクリニックだ。院長の大島一成先生は、精神科分野の先進国であるフランスの政府給費生として約3年間パリに留学。ピティエ・サルペトリエール病院の小児思春期施設でチーム医療を学び、帰国後は東京医科歯科大学で博士号を取得した。患者の話に丁寧に耳を傾け、一人ひとりの背景や個別性を理解しようとする穏やかな語り口が印象的だ。「いろいろな問題に開かれたクリニックでありたい」と話す大島院長に、留学で培った視点や診療への思いを聞いた。
(取材日2026年1月8日)
症状改善を図るだけでなく、生活の満足と幸せを追求
まずはクリニックのコンセプトについて教えてください。

現代の複雑な社会において、さまざまな困難を抱える会社員や大学生、思春期の方々を対象に、あらゆるメンタルヘルスと精神疾患に対応できるクリニックをつくりたいという思いが開業の原点になっています。飯田橋周辺にはオフィスビルや複数の大学があり、そうした方々のお役に立てるのではないかと思っています。院名に「メンタルヘルス」という言葉を入れたのは、WHOの健康の定義に基づく考えからです。かつて健康とは病気ではない状態を指していましたが、現在では心が健康であるだけでなく、その人が満足して充実した生活を送れることが重視されています。単にうつ病の症状を治療しておしまいというのではなく、仕事や家庭、生活全体の満足、そして最終的には幸せを追求するところまで視野に入れた支援をめざしております。
通いやすさについて工夫されていることはありますか?
いつでもすぐに通院できるということを大切に考え、職場やご自宅に近い場所として飯田橋を選びました。飯田橋駅西口から徒歩3分ほどですし、駅近くのオフィスビルや商業施設からも近い位置にあります。例えば会社にお勤めの方であれば、昼休みに通院して診察を受け、すぐに会社に戻ることもできます。もう一つの工夫として、ウェブ予約を採用しております。特に若い方にとっては電話で受付に問い合わせるプレッシャーがなく、深夜でも予約ができるというのは心理的ハードルを下げる上でも大切なことです。診療15分前でも空いていれば予約ができる仕組みにしています。実際に来院される方は、お仕事をされている方が一番多く、次いで学生の方、そして地域にお住まいの方と、幅広い層の方々にご利用いただいております。
外国の方の診療にも力を入れていらっしゃるのですか?

はい。日本にいる外国の方のメンタルヘルスを支援したいという思いから、英語とフランス語での診療にはいつでも対応できる体制を整えております。他の言語の場合は通訳の同行があれば診療が可能です。フランスで仕事をした経験があることから、フランス関係の施設からご紹介いただくこともあります。外国から日本に来られた方を診る際に大切なのは、東京や日本での生活だけでなく、その方が生まれ育った国でどのような生活をされてきたのかを理解することです。母国での暮らしや文化的な背景を踏まえなければ、本当の意味でその人を理解することは難しいと考えています。そうした視点を持ちながら、日々の診療にあたっております。
フランスのチーム医療にふれて培った個別性への視点
先生がフランスに留学された経緯を教えてください。

学生時代から精神医学だけでなく、フランス哲学やフランス文学に関心があり、大学の近くにあった学校に通って勉強していた時期がありました。その後、医師として仕事をする中で外国人の患者さんを診療する機会もあり、いつかは留学したいという思いをずっと抱いていたのです。フランスは、精神医学の伝統が深く、精神分析の歴史もある国です。薬理学や基礎研究の目的で留学される方が多いですが、臨床に近い立場で学べるフランスに惹かれました。1998年から2001年までの約3年間パリに留学し、最初はフランス政府給費生としてエスキロール病院で、次にサンタンヌ病院、そしてピティエ・サルペトリエール病院の小児思春期施設で研鑽を積みました。
留学中、特に印象に残っている経験はありますか?
ピティエ・サルペトリエール病院の小児思春期施設での経験が最も印象深いですね。当時、ヨーロッパの中でも充実した病院の一つとして知られていました。そこでは医師だけでなく、看護師、ソーシャルワーカー、学校の先生、臨床心理士、言語療法士など、多くの専門職が1人の子どもについて真剣に議論するんです。7、8人のスタッフが集まって、患者さんの背景や家庭環境、宗教のことまで含めて話し合う。複数のスタッフが自信を持って意見を言い合う姿に感銘を受けました。そこで学んだのは、患者さんの個別性を追求するということです。フランスでは多文化が当たり前の環境でしたから、全員が違う背景を持っているという前提で診療が行われていました。その経験が、今の私の診療の原点になっています。
帰国されてからはどのような道を歩まれたのですか?

帰国後は東京医科歯科大学(現・東京科学大学)の精神科で病棟医長やデイケア責任者を務めました。そこでは統合失調症の初期症状に関する研究などに取り組み、博士号を取得しています。臨床教授として後進の指導にもあたりました。フランスで学んだ患者さんの個別性を大切にする視点と、東京医科歯科大学で積み重ねた生物学的な治療や薬物療法の知識、この両方があって今の診療が成り立っていると感じています。その後は大学で教えていた時期もありましたが、やはり最後は臨床に戻りたいという思いがずっとありました。自分が考える理想的な医療を、患者さんにとって有益な形で実践したい。その思いから、2024年12月にこのクリニックを開業する決意をしたのです。
患者の笑顔を願い、開かれたクリニックでありたい
診療で大切にされていることを教えてください。

何より大切にしているのは、患者さんの言葉に耳を傾けて、その方のことをよく理解することです。症状だけでなく、対人関係や家庭のこと、職場でどのような環境に置かれているのかまで含めて理解した上で診断するようにしています。最も重視しているのは患者さんの個別性、つまり全員違うということです。例えば不眠症一つとっても、睡眠障害なのか、適応障害で夜中に仕事のことを反芻して眠れないのか、それともうつ病の内因性の症状なのか、ADHDの睡眠・覚醒リズムの障害なのか、原因や背景はさまざまです。その辺りを細かく診ていくことにこだわりを持っています。マニュアル的な医療では、この人の環境が他の人とどう違うのか、この人の症状にどんな特徴があるのかが見えてきません。一人ひとりの置かれた状況を理解することが、回復への道を開くと考えています。
医師としてやりがいを感じるのはどのようなときですか?
いろいろな困難を抱えて大変だった患者さんが良くなるよう、手を尽くしているときです。もし笑顔で仕事や日常生活に戻られるような瞬間を見ることができれば、本当にうれしく感じると思います。初めてお会いする患者さんに対しては、緊張感を持って面接に臨むようにしています。その方のことをどのように理解していけば良いか、真剣に向き合う姿勢を大切にしているのです。治療が順調に進めば、きっぱりと終了になります。外来でもグループセラピーでも、患者さん自身が回復したと感じ、こちらも治療が完了したと確認できてはじめて終了というのが良いことだと思っています。お会いしなくなるというのは、その方が元気に暮らしているということ。患者さんの回復する力を育てることを図りながら、そうした最後をめざして日々の診療を行っております。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

現代社会において、思春期の方、学生の方、お仕事をされている方など、さまざまな立場で苦しんだり不調になったりしている方の助けになりたいという思いです。そのためにも当院は、そうしたいろいろな問題に開かれたクリニックをめざしています。以前は精神科を受診することにためらいを感じる方も少なくなかったようですが、今は近隣にお住まいの方も気軽に通院してくださるようになりました。ご自身で予約をして、ご自身で通院できる自律性をお持ちの方に、そういう場所を提供していきたいと考えております。今掲げている理想を実現するために、これからも地道に努力を続けてまいります。

