難聴への早期対応が認知症予防に
症状改善のためチーム医療に尽力
しみず耳鼻咽喉科クリニック
(京都市北区/北大路駅)
最終更新日:2025/02/12


- 保険診療
高齢化が進む一方で、日本の補聴器の使用率は低いといわれている。要因の一つとして「補聴器は高齢者の象徴」という否定的なイメージが根強いことが挙げられるだろう。「しみず耳鼻咽喉科クリニック」では、この状況を変えるべく、補聴器に関する相談や適合判定に対応する医師、言語聴覚士、認定補聴器技能者といった専門性を持つスタッフが連携し、検査から調整、フォローアップまで一貫してサポート。車いすのまま入ることのできる広々とした防音検査室での検査や、3ヵ月の補聴器の無料貸し出し期間による丁寧な調整で、快適な装用感の実現をめざしている。難聴に対する早期の対応は、認知症予防につながることも期待でき、聞こえの改善は会話や社会とのつながりを取り戻す第一歩となる。同院の取り組みについて、清水智実院長に話を聞いた。
(取材日2025年1月16日)
目次
使用しないと耳の機能は衰える。認知症予防の観点でも、難聴があれば早期に耳鼻咽喉科の受診を
- Q補聴器の仕組みや機能について教えてください。
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A
▲補聴器は患者の聞こえ方に合わせて調整するため耳の負担が少ない
補聴器の特徴は、一人ひとりの聞こえ方に合わせてこまやかな調整ができる点です。高い音が聞こえにくい人には高音域を、低い音が聞こえにくい人には低音域を、必要な分だけ補います。難聴にはさまざまなタイプがあり、患者さんごとに症状は異なります。そのため、その人に合わせたきめ細かい周波数の調整が必要です。よく比較される集音器は、メガホンのように際限なく音を大きくするため、耳を傷める危険性があるんです。一方、補聴器は、足りない周波数のところを補うので、大きな負担はありません。最近は補聴器の小型化も進んでいます。難聴の程度にもよりますが、髪の毛で隠れ、周囲を気にせず使える補聴器も増えていますね。
- Q日本の補聴器の普及率が低い理由についてどうお考えですか?
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A
▲年齢に関わらず補聴器が必要な患者には使用してほしいと話す院長
欧州諸国と比べると、日本での補聴器の使用率は著しく低いとされています。この差の背景には、日本特有の意識も関係しています。補聴器の使用を「年を取った証」と捉える傾向が強く、「補聴器をつけたら自分は年寄りだと自他ともに認めることになる」というイメージが根強く残っているのです。この状況は、長年にわたる全国規模の調査でもほとんど変化が見られないといわれています。しかし、補聴器を使うことで、聞こえの改善が期待できるようになりますから、必要な方には積極的に勧めていきたいと思っています。
- Q補聴器の使用にあたり耳鼻咽喉科を受診するメリットは何ですか?
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A
▲診察で難聴の原因特定、治療を行ってから補聴器を調整する
難聴の原因をしっかり特定できる点です。一般の補聴器販売店では耳の中を見ないこともあり、水がたまっているだけの状態や、治療可能な中耳炎による難聴などを見逃す可能性があります。治療で改善が望めるのであれば、それが一番ですからね。まずは診察を受けることが大切。聞こえが改善すれば、家族との会話が増え友人関係が活発になるなど、社会性の回復にもつながるでしょう。さらに重要なのは、難聴への適切な対応が認知症予防につながる点です。実は、難聴は認知症リスクの主要な要因の一つとされており、改善により認知症予防が期待できます。早期の受診と適切な対応で、コミュニケーションを取り戻し活動的な生活を送ることをめざします。
- Qこちらでの難聴検査の流れについて教えてください。
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A
▲聴力検査室は3畳弱の広さで、車いすに乗ったまま検査が可能
まず一般の外来に来ていただき、基本的な聴力検査と耳の診察をします。補聴器が必要と思う方には、「補聴器専門の外来」でさらに詳しい検査を約1時間行います。少し大変ですが一緒に頑張りましょう。検査費用は保険適用となります。ちなみに、補聴器自体の費用は機能によって変わり、主な違いは、周波数の調整幅やノイズカット機能などの性能です。ただし、高額な機能が誰にとっても必要とは限りません。まずは低価格のものから様子を見て、必要に応じて上位機種を検討するという方法もお勧めです。
- Q補聴器の診療ではどのような特徴がありますか?
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A
▲専門のスタッフと意見交換をしながら細かい配慮で患者をサポート
3つの特徴があります。1つは、専門スタッフの充実です。補聴器に関する相談や適合判定に対応する医師、言語聴覚士、認定補聴器技能者という、異なる専門性を持つスタッフで意見交換し診療を行います。聴力や言語の専門知識、補聴器の機能まで、総合的な視点でサポートできます。2つ目は検査設備の充実です。広めの防音検査室で、スピーカーを使用した音場検査ができます。これにより、実生活に近い環境での評価が可能です。3つ目は、3ヵ月間のフォローアップです。この期間は補聴器を無料で貸し出し、2週間ごとに来院いただきます。就寝・入浴時以外は装用していただき、耳と脳が補聴器に慣れていくまで細かく調整しながらサポートします。