鈴木 大次郎 院長の独自取材記事
Dsこどもとみんなのクリニック
(愛知郡東郷町/日進駅)
最終更新日:2025/01/21

近年オープンした大型商業施設に程近いのどかな住宅地の中に、「Dsこどもとみんなのクリニック」がある。院内にはトンネルや遊具のようなソファー、大きな動物のデコレーションなど、子どもが楽しくなる工夫がいっぱいだ。鈴木大次郎院長は回り道をして医師になった。「尊敬していた開業医の祖母のように、地域に信頼される医師になりたいと思いました」と語るように、当初から地元でのクリニック開業をめざし、2024年11月その思いを形にした。子育て世代を全力サポートできる場所にしたいと意気込む院長に、力を入れる診療内容や、今後の展望について聞いた。
(取材日2024年11月26日)
回り道をして医療の道へ
医師をめざす前は、音楽スタッフの道を歩んでいたとお聞きしました。

もともと目立ちたがりでやんちゃな子どもで、高校生の頃は好きな音楽に関わる仕事がしたいと考え、音楽系のスタッフを養成する専門学校に入りました。卒業後は東京でアルバイトを重ねながら就職し、3年ほど音楽の仕事をしていたんです。そんな中、親しい友人が突然亡くなったり、開業医だった祖母が入院したり、時を同じくして父も入院したりしたことが重なって起きました。そのあたりから「自分が大切な人を助けられたら良いのに」という思いが生まれ、東京で入院する祖母に相談をしたところ背中を押してもらい、人生を大きく方向転換することに決めました。過去に祖母のクリニックで手伝いをしたこともあり、「地域の患者さんから信頼される存在になりたい」という考えも当時から持っていました。
医師だった祖母の影響が大きいのですね。
祖母は名古屋市内で開業していたのですが、本当に地域で慕われていました。昔ながらのスタイルのクリニックで、毎朝オープン前には患者さんの行列ができていたほどです。日々の診療で、患者さんに優しく声をかけていた姿が忘れられません。結局祖母は私が医師になる前に亡くなってしまったのですが、クリニックを閉めた後も祖母を慕って訪ねる人がいて、わざわざ弔いのためにバイオリンの演奏をしたいと足を運んでくれた患者さんもいらっしゃいました。自分も地域の人たちの力になりたいという思いがあり、最初から地域で開業したいという思いを持って医学部受験に向けて歩み始めました。
医学部受験やその後の勉強は大変だったのではないでしょうか?

趣味やスポーツに明け暮れ勉強をしてこなかったので、1年間は独学で頑張ったのですが、これではらちが明かないと気づき、予備校に入って勉強しました。足かけ2年でなんとか医学部に合格しました。医学部の6年次にはアフリカのザンビアという国へ行って、とにかく医療設備がない環境下でへき地医療を学びました。ザンビアは貧しい国ではありますが、子どもたちはエネルギッシュで、キラキラとしていてまぶしいほどでした。日本の子どももこんなふうに元気で明るくあってほしいと、小児科の道を進むことにしたのです。
診療プラス子育てをサポートできる場所に
クリニックを開業された思いをお聞かせください。

東郷・日進・長久手は自分の故郷なので、子育て世代を全力サポートしたいと思いました。必要とされる医療を提供するのはもちろん、子育てに困ったらなんでも相談に来れる場所でありたいです。子どもにとってクリニックは積極的に行きたい場所ではないと思いますが、せめて怖い場所ではないと思ってほしい。付き添いの保護者も滞在中はできるだけリラックスできる雰囲気の医院を心がけました。熱帯魚の水槽を中からのぞけるようにしたり、診察室のドアに動物を大きくあしらったり、高さが選べてやわらかい椅子を置いたり。私の子どもたちも、当院を見に来た時には喜んで走り回っていました。また、院内にはポストを設けていて、子どもたちからのお手紙や患者さんからご意見をいただけるようになっています。患者さんの意見を参考にして、一緒にすてきなクリニックを作り上げていくのが理想です。ぜひご意見を書いてポストに投函していただきたいと思っています。
どんな診療に力を入れられていますか。
小児科診療について全般的に相談はお受けしていますが、特に便秘診療や皮膚のお悩みには積極的にアドバイスをしていけたらと考えています。勉強会などへは積極的に参加することを心がけており、今後も正しい知識に基づく情報をアップデートしながら一人ひとりに合わせたオーダーメイドの診療を提供していきたいです。また近年では、児童精神科を受診しようとしても、数ヵ月待ちになることもあるような状況ですから、診断や治療、サポートを受けたいと願ってかなわない親子も多いでしょう。そんな親子の力になれるように、まずはお話をお聞きして、必要に応じて当院にて心理士によるケアと助言、さらに専門の医療機関への紹介も行っています。それから、子育て世代の親は、自分のことは後回しになってしまいがちですよね。当院では付き添い家族の診療も行っています。お子さんの診療のついでに、ご自身のお体のこともご相談ください。
設備の充実にも力を入れられていますね。

血液検査は指先からの採血で完了しますし、エックス線検査装置も導入しています。長引く咳や呼吸器感染症などはエックス線検査が有用ですし、便秘の場合にもエックス線検査を活用できることもあるんですよ。明らかに病気だという症状がなくても、なんとなく心配な様子であれば、遠慮なく受診してほしいですね。他にも鼻汁吸引をする機械も導入しており、鼻水が出て大変な患者さんの処置も可能です。また、院内には発熱や下痢嘔吐の患者さん専用の受診導線を設けています。発熱のあるお子さんは座って待つのも大変なケースがあると思うので、横になってお待ちいただけるよう、発熱の待合スペースには専用のベッドも設置しています。感染症状の患者さんと動線を分けることで、予防接種や定期診察で受診した方も安心して受診することができます。お子さんはもちろん、ご家族にも安心して受診いただけると思っています。
地元住民がつながって、暮らしやすい地域をつくりたい
地域の医療機関、行政との連携も深めていくそうですね。

私の母校である藤田医科大学病院はもちろん、近隣の医療機関も含めて、ともに地域を支えていければと思っています。今後は療育施設とも一緒に何かできないかと構想しています。さらに行政とも連携が深められれば、このエリアがもっと子育てしやすい地域になっていくと思います。患者さんを医療だけの「点」で見るのではなく、行政・福祉と連携して「面」で支えていくことが必要だと考えています。東郷・日進・長久手のエリアは、名古屋市にも豊田市にも近く、ベッドタウンとして近年ますます開発が進んでいくと思います。医療や子育て支援といったソフトの面で、ファミリー層の住みやすさに貢献できたらうれしいですね。
スタッフさんはどんな方が多いですか。
新規開業なので人材を集めるのは難しいと思っていたのですが、SNSなどを見て、志を分かち合える素晴らしいスタッフが集まってくれたと自負しています。医療機関という枠を超えて、困った時の子育ての相談所になれるような場所にしたいという私の思いを理解し、日々の仕事の中で形にしてくれていて助かりますね。だからいらっしゃる患者さんやご家族は、当院のスタッフに気軽に話しかけてもらって構いません。ちょっとした困り事、悩み、愚痴など、子育てのさまざまな場面で生まれる感情をぜひシェアしてほしいです。スタッフ一丸となって患者さんのファミリーを丸ごと支える準備は万端です。
地元で愛され、頼られるクリニックになりそうですね。

内覧会には想像以上の方が来院してくれました。地域の人に期待していただけているのであれば、これ以上うれしいことはありません。自分の知人や友人などともつながりつつ、生まれ育った地域がますます暮らしやすい場所になるように、できることを精一杯やっていきたいです。回り道をして医師になったので、その分懐は広くありたいと思っています。いろいろな立場の方に、わかりやすく、寄り添って、医療を提供していきたいです。ぜひ小さなことでも構わないので、ご相談にいらしてください。