鈴木 大次郎 院長の独自取材記事
Dsこどもとみんなのクリニック
(愛知郡東郷町/日進駅)
最終更新日:2025/08/12

2024年11月にオープンした大型商業施設に程近いのどかな住宅地の中に、「Dsこどもとみんなのクリニック」がある。院内にはトンネルや遊具のようなソファー、大きな動物のデコレーションなど、子どもが楽しくなる工夫がいっぱいだ。鈴木大次郎院長は回り道をして医師になった。「育ててもらった地域に貢献したいという強い思いから、地域を盛り上げていける医師になりたいと思っていました」と語るように、当初から地元でのクリニック開業をめざしその思いを形にした。子育て世代を全力サポートできる場所にしたいと意気込む院長は、日曜日の診療やオンライン診療、2025年4月からは皮膚科診療も開始し、発達検査を自院で行える体制にするなど患者のニーズにも幅広く応えている。
(取材日2024年11月26日/情報更新日2025年8月6日)
地域の人たちの力になりたいという思いで医師の道へ
医師をめざす前は、音楽スタッフの道を歩んでいたとお聞きしました。

もともと目立ちたがりでやんちゃな子どもで、高校生の頃は好きな音楽に関わる仕事がしたいと考え、音楽系のスタッフを養成する専門学校に入りました。卒業後は東京でアルバイトを重ねながら就職し、3年ほど音楽の仕事をしていたんです。そんな中、親しい友人が突然亡くなったり、開業医だった祖母が入院したり、時を同じくして父も入院したりしたことが重なって起きました。そのあたりから「自分が大切な人を助けられたら良いのに」という思いが生まれ、東京で入院する祖母に相談をしたところ背中を押してもらい、人生を大きく方向転換することに決めました。過去に祖母のクリニックで手伝いをしたこともあり、「地域の患者さんから信頼される存在になりたい」という考えも当時から持っていました。
医師だった祖母の影響が大きいのですね。
祖母は名古屋市内で開業していたのですが、本当に地域で慕われていました。昔ながらのスタイルのクリニックで、毎朝オープン前には患者さんの行列ができていたほどです。日々の診療で、患者さんに優しく声をかけていた姿が忘れられません。結局祖母は私が医師になる前に亡くなってしまったのですが、クリニックを閉めた後も祖母を慕って訪ねる人がいて、わざわざ弔いのためにバイオリンの演奏をしたいと足を運んでくれた患者さんもいらっしゃいました。自分も地域の人たちの力になりたいという思いがあり、最初から地域で開業したいという思いを持って医学部受験に向けて歩み始めました。
医学部受験やその後の勉強は大変だったのではないでしょうか?

趣味やスポーツに明け暮れ勉強をしてこなかったので、1年間は独学で頑張ったのですが、これではらちが明かないと気づき、予備校に入って勉強しました。足かけ2年でなんとか医学部に合格しました。医学部の6年次にはアフリカのザンビアという国へ行って、とにかく医療設備がない環境下でへき地医療を学びました。ザンビアは貧しい国ではありますが、子どもたちはエネルギッシュで、キラキラとしていてまぶしいほどでした。日本の子どももこんなふうに元気で明るくあってほしいと強く思い、日本を元気にしていくために私には何ができるのか、医師となったら何かできることはないか、と考え小児科の道を進むことにしたのです。
診療プラス子育てをサポートできる場所に
クリニックを開業された思いをお聞かせください。

東郷・日進・長久手は自分の故郷なので、子育て世代を全力サポートしたいと思いました。必要とされる医療を提供するのはもちろん、子育てに困ったらなんでも相談に来れる場所でありたいです。子どもにとってクリニックは積極的に行きたい場所ではないと思うので、せめて怖い場所ではないと思ってほしい。付き添いの保護者もできるだけリラックスできる医院づくりを心がけました。熱帯魚の水槽を中からのぞけるようにしたり、診察室のドアに動物を大きくあしらったり、高さが選べてやわらかい椅子を置いたり。私の子どもたちも、当院を見に来た時には喜んで走り回っていました。また、院内にはポストを設けていて、子どもたちからのお手紙や患者さんからご意見をいただけるようになっています。患者さんの意見を参考にして、一緒にすてきなクリニックを作り上げていくのが理想です。ぜひご意見を書いてポストに投函していただきたいと思っています。
どんな診療に力を入れられていますか。
小児科診療について全般的に相談はお受けしていますが、特に便秘診療や皮膚のお悩みには積極的にアドバイスをしていけたらと考えています。勉強会などへは積極的に参加することを心がけており、今後も正しい知識に基づく情報をアップデートしながら一人ひとりに合わせたオーダーメイドの診療を提供していきたいです。また近年では、児童精神科を受診しようとしても、数ヵ月待ちになることもあるような状況ですから、診断や治療、サポートを受けたいと願ってかなわない親子も多いでしょう。そんな親子の力になれるように、まずはお話をお聞きして、必要に応じて当院にて心理士によるケアと助言、さらに専門の医療機関への紹介も行っています。それから、子育て世代の親は、自分のことは後回しになってしまいがちですよね。当院では付き添い家族の診療も行っています。お子さんの診療のついでに、ご自身のお体のこともご相談ください。
設備面も充実していますね。

血液検査は指先からの採血で完了しますし、エックス線検査装置も導入しています。長引く咳や呼吸器感染症などはエックス線検査が有用ですし、便秘の場合にもエックス線検査を活用できます。明らかに病気だという症状がなくても、心配な様子であれば、遠慮なく受診してほしいですね。他にも鼻汁吸引をする機械も導入しており、鼻水が出て大変な患者さんの処置も可能です。最近では、お子さんの認知能力や得意不得意を把握するためのWISC(ウィスク)検査を導入しました。主に5〜16歳までのお子さんを対象にした検査となります。その他、院内には発熱や下痢嘔吐の患者さん専用の受診動線を設けたり、感染症対策や横になってお待ちいただけるように発熱の待合スペースには専用のベッドも設置するなどご家族にも安心して受診いただけるよう工夫しています。
地元住民がつながって、暮らしやすい地域をつくりたい
地域の医療機関、行政との連携も深めていくそうですね。

私の母校である藤田医科大学病院はもちろん、近隣の医療機関も含めて、ともに地域を支えていければと思っています。今後は療育施設とも一緒に何かできないかと構想しています。さらに行政とも連携が深められれば、このエリアがもっと子育てしやすい地域になっていくと思います。患者さんを医療だけの「点」で見るのではなく、行政・福祉と連携して「面」で支えていくことが必要だと考えています。東郷・日進・長久手のエリアは、名古屋市にも豊田市にも近く、ベッドタウンとして近年ますます開発が進んでいくと思います。医療や子育て支援といったソフトの面で、ファミリー層の住みやすさに貢献できたらうれしいですね。
スタッフさんはどんな方が多いですか。
新規開業にあたり、人材確保の難しさを覚悟していましたが、SNSなどを通じて当院の理念に共感し、志を分かち合える素晴らしいスタッフが集まってくれたことをとても誇りに思っています。「医療機関」という枠を超え、子育ての困り事を気軽に相談できる「地域の子育て相談所」のような存在になりたいという私の思いを、スタッフ一人ひとりが理解し、日々の診療の中で丁寧に、形にしてくれています。当院のスタッフは、どんな時もご家族に寄り添った対応を心がけ、丁寧でわかりやすい説明を大切にしています。ちょっとした疑問や不安、子育ての悩み、時には愚痴でも構いません。どうぞお気軽にお声かけください。患者さんやご家族の声を真摯に受け止め、できる限り迅速に対応し、クリニックの環境や仕組みも常により良くしていけるよう、スタッフ一丸となって取り組んでいます。
地元で愛され、頼られるクリニックになりそうですね。

内覧会には想像以上の方が来院してくれました。地域の人に期待していただけているのであれば、これ以上うれしいことはありません。自分の知人や友人などともつながりつつ、生まれ育った地域がますます暮らしやすい場所になるように、できることを精一杯やっていきたいです。回り道をして医師になったので、その分懐は広くありたいと思っています。いろいろな立場の方に、わかりやすく、寄り添って、医療を提供していきたいです。ぜひ小さなことでも構わないので、ご相談にいらしてください。