高原 太郎 院長の独自取材記事
高原クリニック イノベーティブスキャン
(世田谷区/経堂駅)
最終更新日:2025/04/01

2025年4月、世田谷区経堂に誕生した「高原クリニック イノベーティブスキャン」。森の中の別荘のようなたたずまいに誘われ扉を開けると、待合室の大型モニターには印象派の名画が静かに動く。DWIBS法の考案者・高原太郎先生が細部まで配慮して創り上げられたその空間は、まさに“革新的=イノベーティブ”な診療の舞台だ。目標は「従来の画像診断の枠を超える、これまでにないクリニック」。効率的な検査設計を中心にしているため、高い精度を保ちながらも待ち時間が少なく、多忙な人でも受けやすい。検査後は広々とした2階のカフェで日本茶を飲みながら、感想を伝えられる双方向性も備え、院内のどこからでも進行中の画像を院長がチェックする体制で、深みのある診断をめざしている。そんなオーダーメイドの診療の全貌を高原院長に聞いた。
(取材日2025年3月12日/更新日2025年4月1日)
DWIBS法考案者が提供する次世代の全身画像診断
クリニックの特徴を聞かせてください。

当院は、オーダーメイド検診と画像診断に特化したクリニックです。私が2004年に考案した、MRIで全身のがんやその他の疾患を検査できるDWIBS法を導入。あらかじめ決まった流れで静止画を評価するのに対し、当院では撮影中に異常の兆候があればその場で画像を追加し、診断の精度を高めています。また乳がん検診では、乳房を挟まず、着衣のまま受けられるのも特長。基本的に注射や前処置を必要としないため、待ち時間が少なく忙しい方でも受診しやすい設計です。その他に超・低被ばくの肺がん検診と、液体下剤を飲まなくて良い、大腸CT検診を導入しています。「これまでにない」の体現として、下肢のむくみに悩んでいる方のMRI診断と外来なども行います。
なぜそのようなオーダーメイド検診が実現するのでしょう。
これには検診を行う医師が撮影と診断、両方の技術と経験を有しているからです。私は医師になって最初の3年間、朝から晩までMRIの撮影に携わっていました。撮像は技師、診断は医師というように担当が分かれるのですが、当時はMRIの黎明期であり、医師も技師も区別なく撮影を勉強できた時代でした。そんな環境のおかげで、私は撮影と診断の両方に精通することができたのです。当院ではMRIで撮影中の画像をリアルタイムで別の部屋のディスプレーに表示できる仕組みを整備。例えば、読影室で私が全国の約80の施設から送られてくる画像の遠隔診断をしている際も、技師に指示を出し、必要があれば撮影に直接加わることも。リアルタイム対応ができることは、このような深みを画像診断に与えますので、結果的に高精度で、かつがん以外の病気の深堀りなど「親切」な検査ににつながります。
どのような人にDWIBS法で検診を受けてほしいとお考えですか?

定期的に検診を受けている方だけでなく、ずっと検診を受けていなかったけれど「何か異常を感じた」方が駆け込める場所にしたいと思っています。全身のMRIがん検診は約40分、乳がん検診は15分ほどで終了します。事前問診が終わっていれば、到着後すぐ検査ができ、安静不要、注射不要の検査ですから、忙しい方にも受けていただきやすいと思います。基本的にはがんの発見を目的としていますが、MRIによって副鼻腔炎やヘルニアなど、がん以外の病気が見つかることも。MRIではむくみの状態もわかりますので、圧迫やマッサージなどを行う「むくみ」に特化した外来も開設予定です。がん検診を中心に行いますが、がん以外の健康管理にも貢献できる体制を整えています。
外来経験で培った「伝える力」で患者をサポート
高精度な検査に加え、結果の伝え方にもこだわりがあるそうですね。

検査結果レポートを作成し、丁寧にお伝えする方針としています。AやBといった記号などの端的な判定だけではなく「具体的にどんな意味があるのか、これからどうすべきか」を伝えることに意味があると考えています。医療機関を受診したほうがいいのか、このまま様子見でいいのか、ご本人が判断するのは難しいでしょうからできるだけ指針を示すようにしています。例えば「しこり」を感じる方には、「しこりの場所をよく見ましたが特に何も見つかりません」といった、症状に答えるスタイルです。こうした対応には、2年間小児科外来で診療した経験が生かされているかもしれません。保護者の方は、自分のこと以上にお子さんを心配して悩んでいらっしゃいますから、どうしたら安心していただけるか心を砕いてきました。これは画像診断だけでなく、外来も経験した自分の強みだと思っています。
先生のこれまでのキャリアを教えてください。
医学部を卒業後、大学病院の小児科で働いていました。小児科での診療はやりがいがあり「天職かもしれない」と思ったこともあります。けれどある日、ふと手に取った英語のMRI教科書の表紙にあった脳の縦切り画像を見て、大きな衝撃を受けました。工学にも興味があった私は「どうしてもMRIに関わりたい」と思うようになり、栃木県の大学病院で放射線科へ進むことを決意。通常、MRIの担当は数ヵ月ごとの交代制ですが、熱心に学ぶ私の姿を見て、特別に研修医の段階からMRIを任せてもらえることになりました。MRI装置は原理が非常に難解ですが、ここでMRIを深く理解できたおかげで、DWIBS法を考案する土台になったと思います。
DWIBS法を考案した後、すぐに検診に取り入れたわけではなかったそうですね。

まず通常の保険診療でのみ用い、検診に取り入れることには慎重でした。しかし2012年に私の母が病気で亡くなり、その通夜の席で父が「自分も最近体調が悪く体重が減っている」と話し始めたのです。早速翌日に検査したところ、進行した大腸がんが見つかり、父親も約1年後に亡くなってしまいました。もっと早くDWIBS法を使っていたらと強く後悔し、それを機にDWIBS法を検診に採用することを考えるようになりました。ちょうどその頃、乳がんの患者さんが増えているという情報を目にして、乳房領域において診断機能を高めたMRI乳がん検診も考案しました。
心配事があれば、いつでも相談できる場所に
今後の展望についてお聞かせください。

検査とともに内科などさまざまな分野に精通した先生方との連携によって、早期治療にも力を入れていく予定です。また、日本人の死亡原因で常に上位にランクインしている大腸がんへの対応として大腸CT検査を行っていきます。治療が必要な6mm以上のポリープは内視鏡と同レベルで診断できることが報告されています。この方法が有用な点は、検査当日の大量の下剤を飲むのが不要であること。下剤を飲む時間が不要なため「タイムパフォーマンスが良い」という特長もあるわけです。検査の後に利用できる広々としたカフェスペースも2階につくりました。コンシェルジュも配置して、患者さんが気軽に健康意識を高め、楽しんでいただける空間にしていきたいです。また、下肢のむくみや便秘などの外来などを通して、日頃気になっていることを「見える化して治療につなげる」ことを行っていきます。
お忙しい毎日ですがリフレッシュ法はありますか?
中国の伝統的な弦楽器、二胡を弾くことや天体観測でしょうか。子どもの頃から天文好きで、今も星とともに生きています。「この時刻なら火星はあの方向に昇り、双子座の辺りにあるな」と、診察室に座っているときでも知覚できるんです。頭に方位磁石がついているようなものなので、私と一緒なら森でも迷わないと思います(笑)。二胡を知ったのは、プラネタリウムのイベントでした。初めて聞く音色に心打たれ、休憩時間にすぐ弟子入りして、今もレッスンを続けています。カフェスペースは30人くらい入れるので、いつかコンサートなども開催したいですね。
読者へのメッセージをお願いします。

DWIBS法の考案者が手がけるクリニックだからこそ、検査画像のクオリティー一つとってもご満足いただけると自負しています。外観は森の中の別荘のようなたたずまいですが、実は技術を集結した木造耐震構造。特殊モジュールを使って不可能とされてきた太陽光発電でのMRI検査にも取り組んでいます。クリニックとは思えない空間で快適に検査を受けていただくだけではなく、帰りはカフェスペースでゆったりと過ごす……。そんな、訪れるのが楽しみになるような場所になることが願いです。愛着のある地元で、地域の皆さまの健康を守りたいとも思っています。胸にしこりがある、下痢や便秘が続いている、咳が止まらないなど何か心配事があればいつでもお立ち寄りください。
自由診療費用の目安
自由診療とはDWIBS法による全身がんMRI精密検査/8万3000円~