窪田 幸介 院長の独自取材記事
北里大学前ライフクリニック
(相模原市南区/古淵駅)
最終更新日:2025/04/15

相模原市南区麻溝台に2024年10月に開業した在宅医療専門の「北里大学前ライフクリニック」。院長の窪田幸介先生は、北里大学病院消化器内科に所属しており、肝臓疾患、がんの診断・治療や緩和療法等、幅広い分野において研鑽を積んできた。そして外来での経験を通じて個々の患者とじっくり向き合い、専門分野だけでなくもっと広い視点で患者を診ていきたいと考えるようになり、在宅医療に転じたという。現在はスタッフとともに患者の自宅を訪問し、家族も含めて患者を全人的に捉える診療を行っている。スポーツや趣味も多く、誰とでも打ち解けられる気さくな人柄、ざっくばらんな語り口も印象的だ。大学時代から人生の半分以上を過ごした相模原市で地域貢献に取り組みたいという窪田院長に、同院の特徴や、在宅医療への思いを聞いた。
(取材日2025年3月4日)
充実した在宅医療で、長年暮らした地域を支えたい
在宅医療専門のクリニックなんですね。

そうです。在宅医療クリニックを展開している法人グループの一院として、2024年10月に開業しました。相模原市を中心にその近隣を訪問エリアとして、患者さんができる限り住み慣れたご自宅で安心して生活が継続できるよう、24時間365日の訪問体制を整えています。定期訪問は私がスタッフとともにお伺いしますが、法人グループには整形外科、皮膚科や眼科の医師も在籍していますので、外傷や床ずれなど必要に応じて専門の医師が訪問することもできます。できるだけ地域、そしてご家族にも密着した対応を心がけ、訪問看護師さんやケアマネジャーさんとも直接やりとりしながら、スムーズに連携するようにしています。
具体的にはどのような診療を行っているのですか。
基本的には月に2回定期訪問を行い、何か症状があったり急変したりした時には緊急に診察に行きます。体調の悪い方の場合、定期訪問の回数を増やすこともできます。私は北里大学病院の消化器内科出身で、同病院との医療連携はもちろん、近隣の市中病院にも知り合いの先生方が多く、さまざまな病院や施設と連携が取れています。私自身は消化器内科に従事しており、肝臓を専門として、内視鏡治療やがんのラジオ波焼灼療法、カテーテル治療なども経験し、関連病院の伊勢原協同病院などでも診療に携わっていました。さまざまな疾患や、多臓器がんの診断や治療を行っていた経験がありますので、患者さんの心の悩みや体の悩み、痛みの管理においてもお力になれるのではないかと思っています。
医師を志されたきっかけを教えてください。

私が医師をめざすきっかけは、家族の影響が大きかったですね。実家では母が小児科医を、父は都内で勤務医をしており、実家の隣では祖父もまた内科医としてクリニックを運営していました。両親は朝から晩まで仕事に出ていることが多かったので、祖父とよく一緒に過ごしたこともあり、かなりのおじいちゃん子でしたね。祖父が患者さんと向き合う姿に憧れ、自然と医師という仕事に興味を持ちました。その後北里大学医学部に進学し、最終的には消化器内科に進みました。「おなかの調子が悪い」と悩む方が多いので、消化器内科とりわけ内視鏡治療に精通することで、多くの方を救うことができると感じたからです。患者さんに寄り添った医療ができるよう、この道を選びました。
患者や家族に寄り添い、広い視野での診療を心がける
在宅医療に取り組むようになったきっかけを教えてください。

研修医時代には、患者さんが話しやすいことはもちろん、しっかりとした診断力と技術力のある医師になりたいと思い励んでいました。消化器内科での診療は多忙でしたがとてもやりがいがありましたね。そんなあるとき、恩師に「専門性を深めることも大切だが、医師として広い視野を持つことも大切だ」と言われたことがあり、専門の道を進むだけで良いのかと悩むようになりました。そうした時に非常勤医として週に1回程度、在宅医療に携わる機会をいただいたのですが、そのときに「在宅医療は自分に向いている」と感じたんです。
どのような点が向いていると感じたのですか。
大学病院では急性期治療や専門的な治療が中心となり、最終的には患者さんを紹介元に戻さなければならないことが多く、転院・退院した後の患者さんのその後が気になっていました。また、外来診療では、患者さんを待たせないように時間を気にしながら進める必要がありながら、説明が長くなることもしばしば。「もっと詳しく説明すれば、患者さんはもっと理解できるのではないか」と思いながらも、時間に追われてしまい、じっくり話すことができませんでした。その点在宅医療では、患者さんに長く寄り添い、急かされることなくじっくりとお話ができる環境があります。患者さん一人ひとりに時間をかけて向き合える点が、私にはとても魅力的に感じました。
個々の患者さんとじっくり向き合えるところが魅力なんですね。

そうですね。今まで、詳しいことが聞けなかったり、理解できなかったりした患者さんが多いのではないかと思います。そういった方々に、少しでも心置きなく話していただける場所を提供したいです。しっかりと話をすることで納得してもらい、心のもやもやを取り除いてあげられることが一番うれしいです。自分の状態を正しく理解し、ポジティブに治療に向き合える環境を整えることが、医師としての役目だと思っています。私たちの理想は、患者さんが何でも相談できる関係を築くことです。今は在宅で多様な診療が受けられますので、ご家族が抱える介護の悩みにも向き合えるかかりつけ医として頼っていただければと思います。
診療する際、大切にされているのはどのようなことですか。
患者さんの話をよく聞いて、ちょっとした言葉やサインを見落とさないようにすること、主訴にとらわれすぎず、小さな可能性も考えながら診察をすることですね。そして小さなことも見逃さず的確な診断に努め、その上でご家族も含めて親身な診療を実践したいと思います。医療的な問題だけでなく、心理面、社会面、経済面の悩みも含めて、すべてを聞くことができるような医師になりたいですね。誰でもしっかり診るというスタンスを大切にしています。スタッフに対しても、患者さんを囲んで診ていく仲間として、フラットな関係性で一人ひとりの意見を大切にしたいと思っています。スタッフは救命救急士や看護師、栄養士、臨床検査技師など、さまざまな強みをもったメンバーがそろっているのですが、そうした多職種が密着してサポートできるチームワークの良さも、私たちの強みですね。
在宅医療により、本人も家族も安心して暮らせる日々を
休日はどのように過ごしていますか?

基本的にスポーツが好きで、子どもの頃からサッカーやフットサルをしていました。医師になってからはテニス、バドミントンやゴルフも楽しんでいます。人と話すことも大好きなので、スポーツスクールの友人や法人内外の医者仲間と過ごす時間がとても楽しいですね。
今後の展望について聞かせてください。
まずは、在宅医療について多くの方に知っていただきたいですね。通院に苦労されている患者さんやご家族、住み慣れたわが家で安心して過ごしたいという方にぜひ知って利用していただきたい。診療体制も整ってきましたし、私自身、体力に余裕もありますし(笑)、どんどん患者さんを診たいと思っています。大学病院で会得してきた専門的な医療技術も生かして、在宅医療の技術面にもさらに力を入れていきたいですね。新しい処置を含めて在宅でできることは積極的に実践して、できるだけ在宅で完結するようにしたいと考えています。自宅で医療を簡潔させて、患者さんや家族への通院負担を軽減させたいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

できるだけ幅広く診ることのできる医師となれるように努め、在宅医療でできることを増やして、在宅で完結できるような医療をめざしたいです。一方で、ご家族が介護に疲れたり負担が増えたりした場合などには、レスパイト入院やホスピスケア(緩和ケア)が可能な施設などにしっかりつなぐことも心がけています。住み慣れたご自宅で暮らすことを応援しつつ、困った時の受け入れ先もご案内して、患者さん本人もご家族も安心していただけるようにと考えています。私は横浜市出身ですが、学生時代から人生の半分以上をこの相模原市で過ごし、第二の故郷だと思っています。私自身も住み慣れたこの地で、地域の皆さんのお役に立ちたいと願っています。在宅医療に興味のある方はぜひ当院に相談ください。