小川 光平 院長の独自取材記事
おがわ内科・消化器内科クリニック
(新潟市東区/新潟駅)
最終更新日:2025/05/02

新潟市東区山木戸の山木戸交差点からおよそ300m、たくさんの住宅が立ち並ぶ街中に「おがわ内科・消化器内科クリニック」が2024年5月、開業した。院長を務めるのは、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医の小川光平(おがわ・こうへい)先生。新潟県内の総合病院や大学病院で、消化器内科の診療に10年余り携わってきた。院内の色調を淡く優しいグリーンを中心にまとめたり、診療時のコミュニケーションを親身に取ったりと、患者の緊張を和らげるための配慮も欠かさない。クリニックが一丸となって患者の不安な気持ちに寄り添う診療スタンスの根幹となる医療への想いについて、小川院長に話を聞いた。
(取材日2025年4月7日)
勤務医時代に学んだ、患者に寄り添う大切さ
先生が医師を志したきっかけと、内科・消化器内科を選択した理由を教えてください。

1歳上の兄の影響が大きかったですね。幼い頃から医師を志す兄の姿を見て、自然とその背中を追いました。人に感謝される尊い仕事というイメージがあったことも理由の一つです。進学先に新潟大学を選んだのは、父の実家が新潟にあり、幼い頃から親しみを感じていた土地だったためです。大学卒業後は整形外科を志していましたが、「骨だけでなく、全身を診る医師をめざしてはどうか」という指導医師の助言をきっかけに、内科へ進路を変更。中でも消化器内科は扱う臓器の範囲が広く、多くの患者さんと関わることができる点に魅力を感じ、自分の望む方向性だと確信しました。以後約10年にわたり、新潟県内の大学病院や総合病院で診療経験を積んできました。
勤務医時代はどのような経験を積まれましたか? また、開業までの経緯を教えてください。
大学病院では主に悪性腫瘍、特にがん患者さんを担当していました。命に関わる現場で常に感じていたのは、患者さんご本人だけでなく、ご家族の真摯な姿勢です。そのため私は、病状の説明などの際に、ご家族への配慮も大切にしてきました。そうした経験から、ご家族の幸せも追求したいという想いが強まったのかもしれません。患者さんの治療を第一に考えつつ、その受診がご家族の健康意識にもつなげたいと思っています。そして周囲の方々にも広がり、地域全体の健康寿命を延ばす一助となれればと、クリニックを開業しました。
開業にあたりこの新潟市東区を選んだ理由は?

東区・山木戸を開業の地に選んだのは、消化器内科や内視鏡検査を専門的に行う医師が少なく、検査までに時間がかかるという地域の現状があったからです。若い世代の医師として、新たな患者さんを積極的に受け入れ、地域の医療に貢献したいという想いがありました。病院勤務時代には多くの進行がん患者さんを診る中で、「もっと早く見つけられたら」と悔しさを感じる場面も多くありました。だからこそ、気軽に内視鏡検査を受けられる体制を整え、病気の早期発見・早期治療につなげるクリニックをめざしています。
検査のハードルを下げ、地域全体の健康を向上させたい
どのような患者さんや主訴が多いのでしょう。

比較的若い世代、特に20~30代の患者さんが多く来院されています。会社の健康診断で便潜血やバリウム検査に引っかかり、精密検査のために受診される方も多く、大腸内視鏡検査を若い世代にもしっかり受けていただける機会が増えています。検査では「思ったよりつらくなかった」と言っていただけるよう、苦痛の少ない検査にこだわっています。思ったより楽だと感じてもらえれば、その患者さんのご家族やご両親の来院につながる可能性だって十分あります。実際、「息子が通っていたので来ました」という方もいて、理想とする“気軽に検査が受けられる地域のクリニック”に近づけているという手応えを感じました。新潟市では40歳を節目に胃がん・大腸がん検診が推奨されていますが、結果次第では早めに精密検査を受けることが大切です。患者さんの不安な気持ちに寄り添い、身近な医療機関としての役割を果たしていければうれしいですね。
こちらのクリニックの診療や検査の特徴について伺います。
内視鏡検査は胃・大腸がんの確定診断に大きな役割を果たしますが、初めての検査でつらい経験をすると、その後の受診が遠のいてしまうことも。そこで当院では、2回目以降の検査や経過観察につなげるため、苦痛の少ない内視鏡検査を心がけています。胃の内視鏡検査は経口よりも負担の少ない経鼻内視鏡も選べるほか、大腸内視鏡はスコープ部分にやわらかい素材を使っているタイプを採用し、挿入時の痛み軽減を図っています。ご希望があれば、不安や苦痛を和らげるために鎮静剤を使用することも可能です。また、ポリープの切除や内視鏡手術も日帰りで行っており、患者さんの負担を少なくしながら早期治療をめざしています。大きなポリープは、必要に応じて連携病院をご紹介しています。私は消化器の専門家として肝臓についても熟知しており、腹部エコーや血液検査を通じて肝臓疾患の早期発見・診断にも注力しています。肝臓に不安のある方もぜひご相談ください。
先生が診療で大切にしていることは何ですか?

患者さんがリラックスして診療を受けられる環境を第一にしていますね。少しでも緊張を和らげられるよう、クリニックの内装には、淡い緑色を基調としたやわらかな色合いを採用しました。また、患者さんが症状を伝えやすくするために、積極的なコミュニケーションを心がけています。特に、話しづらい方には、こちらから声をかけて症状を聞き出すよう努めています。時には、患者さんが無意識に話す細かい症状の中に、病気を発見するためのキーワードが隠れていることもありますので、一つ一つの言葉に耳を傾けています。スタッフ間でも密なコミュニケーションを欠かせません。朝礼を通じて、私からの連絡事項やスタッフからの意見を共有し、診療中の患者さんからのお問い合わせにも柔軟に対応できるよう、連携を強化しています。そのように、一つのチームとして診療に向き合っています。
気軽に相談できる、地域医療の窓口に
これまでのご経験で、特に印象的なエピソードがありましたら教えてください。

これまで多くのがん患者さんと関わってきましたが、特に忘れられないのが、大学病院勤務の時に担当した、40代の女性患者さんです。膵臓がんの末期で大学病院に転院されましたが、すでにほかの臓器に転移しており、残念ながら治療は難しく、わずか1ヵ月ほどでお亡くなりになりました。がん患者さんは何十人、何百人と診てきましたが、ここまで若い方は初めてで、自分と年齢が近かったこともあり、「10年後の自分だってどうなるかわからない」と気づかされました。日々の時間を無駄にせず、一人ひとりの訴えを丁寧に拾い、早期に病気を発見し、最善の治療につなげる医療を実現したいという考えが芽生えた出来事です。その気持ちが次第に大きくなり、「人生、いつ何が起きるかわからない」と覚悟を決めて、教授にも直談判し、まだ40歳前という異例のタイミングではありますが、理想とする医療を実現するため、開業への道を踏み出したのです。
今後の展望について伺います。
開業して1年が経過し、「内視鏡検査ができるクリニック」として地域の皆さんに少しずつ認知されてきたことをうれしく思います。ほかの医療機関の先生方から、検査の患者さんをご紹介いただける機会も増え、地域の医療の一端を担えているという実感があります。今後は、気になることがあれば気負わずお越しいただける“身近な医療窓口”をめざしていきます。当院は消化器内科に限らず、内科も標榜しており、高血圧症や糖尿病、高脂血症といった生活習慣病、さらには風邪や体調不良などの一般内科も幅広く対応しています。患者さんの不安に耳を傾け、必要があれば速やかに検査・治療につなげる姿勢で、体力が続く限り、一人でも多くの方に対応していきたいと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

体調のちょっとした変化や違和感が、実は病気のサインであることも少なくありません。「こんなことで病院に行くのは大げさかな」と思わず、ほんの些細なことでも構いませんので、お気軽にご相談いただければと思います。それが町のクリニックの意義であり、そのために立ち寄りやすく、安心して話ができる場所でありたいと考えています。また、検査に対し不安や抵抗を感じる方も多いと思いますが、私は初めて検査を受けた方にも「思ったより楽だった」「また来年もお願いしたい」と言っていただける苦痛の少ない検査を追究しています。今後も丁寧な診療を続けていきたいです。