數藤 久美子 院長の独自取材記事
とみおかハートクリニック
(阿南市/阿南駅)
最終更新日:2025/10/07
地域のかかりつけ医として、小児科の風邪から大人の一般内科、循環器内科と心臓をはじめとするリハビリテーションといった専門的な診療まで幅広く行う「とみおかハートクリニック」。日本循環器学会循環器専門医、日本内科学会総合内科専門医である院長の數藤久美子(すとう・くみこ)先生が、これまでの経験を生かし「循環器や心臓リハビリをもっと身近に受診できる地域のクリニックをつくりたい」という思いを胸に、2024年に開業した。「診てもらって安心したと言っていただけたらうれしいです」と優しい笑顔で語る數藤院長。プライベートでは3児の母で、子どもたちを寝かしつけた後に、さらなる知識の研鑽のため机に向かうのだとか。母として、医師として、日々全力投球で過ごす數藤院長に、診療ポリシーや今後の展望など話を聞いた。
(取材日2025年9月24日)
うどん店の面影が残る、地域に根差したかかりつけ医
開業のきっかけや、この場所に開業した理由を伺います。

ここはもともと、親戚が経営していたうどん屋さんだったんです。親戚はかつて慢性的な疾患を患い、近所の病院に通っていましたが、やがて重い脳や心臓の病気を発症してしまって。術後もどんどん弱っていく姿を見て「必要な医療をもっと身近で提供できていたら、予後が変わっていたかもしれない」と思ったんです。特に、私の専門の一つである心臓リハビリテーションを行っているクリニックはこの近辺では限られます。だからこそここで、経験を生かして循環器や心臓リハビリに特化したクリニックをつくりたいと考え、築120年ほどの建物をリフォームして2024年に開業しました。幸い、過去に勤務していた阿南医療センターに近いため、必要に応じて緊密に連携を図っています。
すてきな院内ですね。こちらのコンセプトをお聞かせください。
待合室の天井の木材や梁といった一部の建材はそのままに、お子さんも怖がらずに受診できるよう、和風のカフェのような温かみのある空間に仕上げました。また「クリニックである程度のことができる」をコンセプトにしていますので、設備は病院に引けを取らないくらいのものをそろえた自信があります。一例として、超音波検査装置は心臓専門の、AI技術が搭載された先進のタイプを導入しています。あとは何より、徳島県南部では多くはない心臓リハビリのための施設が整っている点が特徴ではないでしょうか。
どのような患者さんが来院されていますか?

開業から1年がたちましたが、お子さんからご高齢の方まで、幅広い年代の方にご来院いただいています。お子さんの場合は感染症の受診が最も多く、親御さんも体調が優れないときには一緒に診察ができるので、喜ばれているかと思います。大人の方については、一般内科の診療から、循環器内科や心臓リハビリといった専門分野まで幅広く対応しています。循環器内科では、健康診断で心電図異常を指摘された方や、胸の痛み・動悸といった症状で受診されています。さらに、循環器内科で最も多いのは生活習慣病ですが、治療で大切なのは「継続」です。患者さんのお話を聞き、数値をもとに一緒に考え、主に運動や食事指導を通して日常生活をサポートするよう心がけています。また当院では、運動器・呼吸器・脳疾患に対するリハビリも充実しています。診察とリハビリを通じて健康維持や増進のためにできる限りのサポートをしたいと考えています。
一人ひとりにとって最良の医療の実現をめざして
特に注力されている治療は何でしょう。

最近、特に注力している治療が3つあります。まず、近年「新たな生活習慣病」として注目される睡眠時無呼吸症候群です。高血圧症や心疾患、脳卒中などの合併症リスクが高く、当院では検査から治療まで一貫して対応しています。次にアレルギー治療で、指先からの少量採血で41項目を調べられる移動式免疫発光測定装置を新たに導入し、花粉症やハウスダストの診断から舌下免疫療法まで行っています。さらに感染症では、1回の検査で15種類のウイルスや細菌を特定できるPCR検査機器を導入し、迅速で的確な治療につなげています。加えて、糖尿病などで重要となる眼底検査も院内で実施可能とし、必要に応じて専門機関と連携できる体制を整えました。良いものは積極的に取り入れ、都心と地方の医療格差をできる限りなくすことで、地域の皆さまに「ここに来れば安心」と思っていただけるように努めています。
先生は総合内科専門医の資格もお持ちなのですね。
はい。私はもともと心臓循環器内科の医師としてキャリアをスタートし、それに加えて感染症やその他の内科的な疾患も幅広く診療してきました。特に循環器疾患と密接な関係がある生活習慣病では、複合的にさまざまな症状が現れることが多いため、内科全般の知識を持ち、総合的に判断する力が必要になります。そういった意味でも、総合内科専門医という資格は非常に重要だと感じています。また今後は、感染症やアレルギーといった専門領域に加え、漢方などの知識もさらに深めていきたいと考えています。地域のかかりつけ医として、診療の範囲は「広く、そして深く」。どこへ相談したら良いかわからない些細なお悩みも気軽にお聞きできるように、日々勉強を重ねながら、より一層診療の幅を広げていきたいと思っています。
診療において大切にしている考え方などはありますか?

「病気を診るのではなく患者さんを診る。ベターではなく『ベスト』を」という考え方を診療の理念・指針にしています。ですので、診療では病気の診断はもちろん発症原因やその方の生活背景の理解にも努めていて、コミュニケーションを大切にしています。医療機関へ行くと緊張し、話したいことを十分に話せない方も少なくありませんので、病気と関係のない話も気兼ねなくできるよう、なるべくフレンドリーな雰囲気づくりを心がけています。加えて、病気の状態を見極めてこそ適切な選択ができ、患者さんの命を救うことにつながるかもしれない。そこがベターとベストの違いと捉え、一人ひとりにとって最良の医療の実現をめざしています。
時代や地域ニーズに応じて、アップデートし続けたい
医師を志したきっかけをお聞かせください。

小さい頃はよくケガをする子で頻繁にクリニックに行っていたこともあり、医療の仕事には興味がありました。最初は外科に憧れて医学部に入学したのですが、最終的に循環器内科を専門に選んだのは、心筋梗塞などで苦しんでいる患者さんがカテーテル治療を受ける前後の様子目の当たりにし、感動したからです。まさに幼少期にすごいと思っていた「病気を治療する」素晴らしい診療科だと思いましたね。循環器内科の現場は緊急対応も多く大変な場面もありましたが、やはり患者さんの治療後の笑顔を見るのはうれしく、やりがいを感じました。複数の病院での経験は、すべて現在の診療につながっています。
大学では留学もご経験されたのですね。
大学在学中にテキサス大学に留学しました。そこで日本とアメリカの違いを知り、衝撃を受けましたね。治療に対する考え方が違うだけでなく、コミュニケーションに関しても、アメリカでは教授クラスの先生ともフランクに議論するのが当たり前。専門家の意見をたくさん聞ける環境はとても刺激的でした。大学を卒業後は徳島県や香川県にある複数の病院で研鑽し、最後は母校の徳島大学に戻って臨床や研究に従事することに。心臓リハビリも大学の上司から学び、長年お世話になりました。開業医となった現在は医院経営などタスクが多くせわしない毎日ですが、自分の思い描く医療を実現できる喜びも感じながら診療にあたっています。
今後の展望をお聞かせください。

現在、敷地内にリハビリ施設の増築を計画しており、より多くの患者さんに安心して治療を受けていただける環境を整えたいと考えています。現在のリハビリ室は感染症対応に活用する予定です。これまで発熱時などは診察まで車で待機していただいていましたが、感染症対応のスペースを広げることで、落ち着いて過ごしてもらえる待機場所を確保したいと考えています。今後も地域のかかりつけ医として、感染症やリハビリといった身近なお悩みから、心臓リハビリや循環器内科といった専門的な診療まで幅広くサポートできればと思います。また、時代や地域のニーズに合わせて設備を充実させ、検診にも力を入れつつ、私自身も研鑽を重ね、日々アップデートしていければと考えています。今後も来院された方に「ここに来て良かった」と感じていただけるよう努めてまいります。

