松尾 愛理 院長、松尾 浩司 副院長の独自取材記事
ならまち内科あいりレディースクリニック
(奈良市/近鉄奈良駅)
最終更新日:2024/11/07

古民家カフェや雑貨店、小さなホテルなどが立ち並ぶ「ならまち」エリア。その一角にたたずむ「ならまち内科あいりレディースクリニック」は、2024年9月2日に開院したばかりの新しいクリニックだ。「当院は婦人科と内科からのアプローチで、老若男女問わずに対応していきます」と話すのは、院長の松尾愛理先生。夫である副院長の松尾浩司先生とともに、患者一人ひとりに合ったオーダーメイドの治療を行っていくことが目標だそう。あらゆる世代に寄り添う「かかりつけ医」をめざしている。今回、開院までの経緯や診療で大切にしていることなど、豊富な話題で語ってもらった。
(取材日2024年9月11日)
思春期から更年期まで「かかりつけ医」になれるように
新しくて温かみのある院内がすてきですね。

【愛理院長】ありがとうございます。当院は婦人科と内科を掲げ、2024年9月2日に開院しました。入り口と総合受付は同じですが、婦人科と内科の待合室と診察室は分かれています。婦人科は日本産科婦人科学会産婦人科専門医である私、内科は日本内科学会総合内科専門医と日本糖尿病学会糖尿病専門医の浩司先生が担当しています。
【浩司副院長】レディースクリニックというと女性だけを診ているようですが、内科は老若男女問わず対応しています。例えば、不妊治療はパートナーの方と来ていただきたいですし、婦人科には入りづらいという男性であれば、内科の診察室で診ることも可能です。お一人はもちろん、パートナーやご家族とも気軽に通えるようなクリニックをめざしたいですね。
開院して間もないですが、患者層の傾向などはありますか?
【愛理院長】若い女性ほど「婦人科は怖い」と思っている方は珍しくありません。そのため、当院は若い世代でも通いやすいクリニックでありたいと考えていましたが、既にたくさんの10代から20代の患者さんにお越しいただいています。更年期の悩みで来院される患者さんもたくさんいますね。女性医師によるレディースクリニックを探していて、当院の開院を機に相談を決めた患者さんも多いようです。また、当院は婦人科受診へのハードルを下げるために、小学校高学年から専門学生・大学生までを対象にした相談室である「ユースクリニック」を設けました。極端なことかもしれませんが、生理が始まったら一度は産婦人科に来ていただきたいなと。つらいときに来ると怖くなってしまうので、そうなる前に産婦人科に慣れておくことも大切だと思うんです。そして「つらいことがあれば、いつでも来てね」と関係性を築いておくことが理想だなと考えています。
そもそも開院のきっかけは何でしょう?

【愛理院長】これまで勤務した病院は、それぞれ特徴がありました。高度医療を行う基幹病院や不妊治療に特化したクリニック、患者さんとの距離が近く、専門的な治療も行う市立病院などです。そして、さまざまな経験を重ねるにつれて、次第に患者さんと近い立場で寄り添えるような医師でありたいなと思うようになりました。また、私は4児の母でもありますが、ずっと仕事と子育ての両立にも悩み続けてきました。開業すれば、理想の働き方ができると感じたのも、きっかけの一つです。
【浩司副院長】妻と私は同じ仕事をしているので、仕事と家庭の両立の大変さは理解しています。彼女が仕事で十分に力を発揮できるのならば、私は一歩引いたところから彼女の仕事をサポートしたいなと。患者さんだけでなく、われわれ含めたスタッフ全員が満足できる場所をつくりたいと思っています。
患者に寄り添いながら、一緒に治療方針を決定
診療で大切にしていることを教えてください。

【愛理院長】婦人科の診察は不安に感じる方が多く、医師である私でさえも、患者さんの立場になると少し緊張します。そのため、当院では患者さんへの声かけや説明をしっかり行うようにしています。例えば「痛かったら言ってください」「無理なら言ってください。ほかに調べる方法はあります」など、できる限り患者さんの不安をなくすように心がけています。また、生理痛などの痛みは「痛み止めを飲んで、我慢すればいい」と思っている方も少なくありません。治療があることが知られていないんですね。そのため、患者さんには治療の選択肢を丁寧に提示しますし、「こういう理由があるから、この薬をお勧めします」などの説明も欠かさず行うようにしています。
浩司副院長は大切にしていることはありますか?
【浩司副院長】経験のある医師になればなるほど、患者さんに対して上から目線になるケースもありますが、私はこのような決めつけ的な対応はしないように心がけています。患者さんの声を聞かずに治療法を決めたり、詳細を説明せずに治療を開始したりするようなことはせず、患者さんと対等な関係を築きながら、患者さんとともに治療法を決めていきたいなと。というのも、糖尿病の治療では、ガイドラインには「この治療薬から始めるように」といったようなことは書いていないんです。たくさんの選択肢から患者さんの症状や年齢、性別、ライフスタイルなどに合った薬を選んでいく必要があります。そして、治療は中断すると症状が悪化してしまいますし、患者さんが納得して続けていくことが重要です。そのためにも、患者さんとともに治療を選んでいきたいですね。
先生方が婦人科と内科を専門に選んだ理由は?

【愛理院長】もともと産婦人科と小児外科に興味がありましたが、学生の時にお世話になった産婦人科の先生が「入院してきた患者さんに『おめでとう』を言えるのが産婦人科」とおっしゃっていたのが志したきっかけです。実際に働いてみると楽しくて、産婦人科を専門に決めました。
【浩司副院長】スピーディーに診察を進める救急科などよりも、じっくり考えて患者さんにベストな治療を提供する内科のほうが私の性格に合っていたからです。思考のプロセスを患者さんに伝えることができますし、私の強みが生かせると考えました。
老若男女問わず、地域に愛されるクリニックへ
ところで、先生方が医師を志した理由は何でしょう?

【愛理院長】子どもの頃は宇宙飛行士になりたくて、ある日本人女性の宇宙飛行士に憧れていました。その方は医学博士でもありますし、そこで医師という選択肢を考えるようになりましたね。
【浩司副院長】私はもともと何かを考えて行動したり、調べたりすることがすごく好きな子どもでした。誰かの役に立つような仕事がしたいと思ったときに、自分の強みが生かせるのは医師かなと。逆説的に医師を志すようになりました。
これまで影響を受けた先輩や同僚とのエピソードをお聞かせください。
【愛理院長】私は一緒に働いた先生方にとても恵まれてきたと感じています。患者さん思いの熱い先生が多く、患者さんへの向き合い方やチームワークの大切さなどを学びました。また、子育てとの両立に悩んでいた私に男女を問わず、お世話になった先生方からお声がけいただいたのは、「自分ができるときに、患者さんや後輩に還元してあげれば良いから」ということ。女性で医師と子育てを両立されている先生も多く、その生き方に影響も受けています。
【浩司副院長】私が一番尊敬しているのは、研修医のときに出会った糖尿病内科の先生です。ご自身の知識や経験を出し惜しみせずに、真摯に患者さんに向き合う姿に影響を受けました。働き始めて15年以上が経過しますが、医師であり続ける限りは忘れてはいけない姿勢だと考えています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

【愛理院長】女性は年代ごとに悩みが変わりますし、生理やホルモンの影響で体調にも大きな変化があります。どんな小さなことでも構いませんので、とにかく気軽に相談してください。当院を「かかりつけ医」として、気軽に頼っていただけるとうれしいです。
【浩司副院長】あらゆる世代の「かかりつけ医」となるように、内科と婦人科で患者さんの健康に向き合っていきたいと思います。老若男女問わず、地域に愛されるようなクリニックをめざしていきたいですね。気になる症状などがありましたら、ぜひ当院にお任せください。