病気であるがゆえに治療も可能
片頭痛の治療は頭痛専門の外来で
草津たにもと脳神経外科クリニック
(栗東市/草津駅)
最終更新日:2024/10/08


- 保険診療
一説には日本人の3〜4人に1人が頭痛を感じているといわれ、中でも年間有病率8.4%ほど、患者数は実に約840万人とも推定されているのが片頭痛。女性ホルモンの関与も誘因の一つということから、20〜40代の女性に特に多いというデータも報告されている。深刻なのは、頭痛を感じていても医療機関を受診している人が少ないということ。片頭痛患者の約7割は未受診ともいわれるから、それだけ社会に与える影響も大きいと考えるべきだろう。こうした状況を憂慮し、MRIを導入して専門性の高い頭痛診療を展開しているのが「草津たにもと脳神経外科クリニック」の谷本匡浩院長。検査から診断・治療の流れを中心に、気になる片頭痛対策について日本脳神経外科学会脳神経外科専門医である谷本院長に詳しく聞いてみた。
(取材日2024年9月18日)
目次
MRI検査で頭痛の種類や重症度を診断し、適切な予防・治療を行うことが重要
- Q片頭痛とは、どのような病気でしょうか?
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A
▲頭痛に関する悩みがあれば気軽に相談してほしいと話す院長
片頭痛は頭痛の中でも中等度から重度の痛みを伴い、ズキズキと拍動する痛みがある、日常的な動作でひどくなる、吐き気を伴う、光や音に過敏になるなど、いくつかの項目に該当するようであれば片頭痛が疑われます。片頭痛にはストレスや月経、生活環境や生活習慣などが影響していると考えられますが、はっきりとした原因はわかっていません。体質だから仕方がないと諦め、頭痛が起こるたびに痛み止めを飲んで勤め先や学校へ向かう。そうした生活を数年、数十年も続けている人がおられます。しかし、片頭痛はれっきとした病気です。病気であるからこそ、「正しい治療を受ければ改善が望める」ということをぜひ知っていただければと思います。
- Q頭痛専門の外来での診察の流れを教えてください。
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A
▲時には模型を用いるなど、わかりやすい説明を心がけている
当クリニックでは、専用の頭痛問診票を用意しています。それをもとに、診察室にて担当医師が問診を行います。また、スコアリングと呼ばれる点数化のツールを用い、頭痛の重症度も評価しながら精密に診断をつけていきます。もう一つ重要なのが、実際の日常生活においてどれほどの支障が出ているかを調べること。症状が出ていない日であっても、いつどこで頭痛が起こるかと心配して会社を休んだり、人との面会を断ったりすると、そこには確実に損失が生じています。こうした目に見えない部分についてもしっかりと把握し、支障の及ぶ範囲を抑えていこうという考え方が、近年では学会などでも主流になりつつあります。
- Q診断には、どのような検査が必要ですか?
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A
▲スタッフが声かけを行うなど、不安に配慮した検査を行う
正確な診断には精密な検査が重要で、MRI検査を行うことで脳や脳血管の様子から頭痛の種類や重症度を詳細に評価することができます。特に、これまで検査を受けたことがない方、頭痛が悪化している方、これまでとは違う頭痛を感じる方には、くも膜下出血や脳腫瘍といった他の病気がないことを確認するためにもMRI検査をお勧めします。近年のMRI検査は大げさに身構える必要はなく、大きな病院とは違って当クリニックでは受診いただいたその場でMRI検査が可能です。脳疾患は時として命に関わることもあるため、確実な診断をつけるためにもぜひMRI検査を受けてみてください。
- Q片頭痛には、どのような治療法がありますか?
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A
▲予防療法を行い、頭痛発作の起こりにくい体づくりをめざしていく
年に数回だけ頭痛があるような場合は鎮痛薬の服用で済むかもしれませんが、しょっちゅう片頭痛に悩まされているような方が鎮痛薬を飲み続けるのは良くありません。こうした患者さんには予防薬による予防療法を行い、頭痛の発作頻度自体を減らし、それによって鎮痛薬の服用頻度も減らし、頭痛発作の起こりにくい、鎮痛薬に頼らない体づくりをめざすことが重要といえるでしょう。また、頭痛治療は一度受診すれば終了というものではなく、経過観察をしながら薬の服用量や頻度、タイミングなどの調整をしていくことが大切です。治療では、頭痛発生のきっかけとなっている生活習慣の改善指導なども同時に行っていきます。
- Q保険適用の新しい皮下注射についても教えてください。
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A
▲自己注射の方法に関してもしっかりと説明。安心して使用ができる
片頭痛の原因として現在重要視されているのが、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経伝達物質によって引き起こされる血管の炎症です。そこで登場したのがCGRPの作用のブロックを図る製剤で、欧米などでは片頭痛の第一選択薬。国内では、従来の予防内服薬で効果が不十分な場合に限って皮下注射薬として使用できます。原則としてオートインジェクターによる在宅自己注射となりますが、1ヵ月または4週間に1回の頻度で注射することで痛みの改善が期待できます。ただし処方には片頭痛に対する相応の知見が必要ですので、その意味でも頭痛を専門としている医療機関を受診することが頭痛治療の最大のポイントといえるでしょう。