佐賀 信之 院長の独自取材記事
太子堂診療所
(世田谷区/三軒茶屋駅)
最終更新日:2026/06/11
2024年8月、三軒茶屋駅から茶沢通り沿いを3分ほど歩いた所に開業した「太子堂診療所」。入り口は、路地に面していながら人目を気にせず足を運べる造りに設計。院内はホワイトを基調に淡いグリーンの椅子がアクセントとなり、訪れる人の心をホッと和ませる。診療科目は心療内科および精神科。2026年4月に院長に就任した佐賀信之先生は、IT企業での社会人経験を経て医師へと転身し、昭和医科大学の医局で研鑽を積んだ日本精神神経学会精神科専門医だ。また、同院の大きな特色は、大人の発達障害に専門性を有する医師が数多く在籍すること。「困ったときにふと思い出してもらえる、町のクリニックになることができれば」と穏やかな口調で語る佐賀院長に、患者との向き合い方や診療への思いを聞いた。
(取材日2026年5月14日)
社会人から精神科医へ、めざすは「町のクリニック」
まずは、医師の道を志したきっかけを教えてください。

私は、もともとIT企業で約10年働いていました。社会で懸命に働く人たちが病気で人生の基盤を崩してしまう姿を目にするたびに、とても悔しい思いを抱いていたのです。医学への関心はありましたが、知識だけでは社会の役に立たない。それなら医学部に入ろうと、再受験を決めました。精神科を選んだのは、初期研修の頃です。救命救急の現場で、心が深く追い詰められて搬送された患者さんのそばで話を聞いていたところ、上級医に「精神科に向いてるかもしれないね」と声をかけていただいたのです。以来「昭和医科大学烏山病院」を中心にさまざまな病院やクリニックで経験を積み、精神科医として現在は13年目になります。「この方が幸せになったら良いな」と思いながら、日々、患者さんと向き合っています。
どのようなクリニックをめざしていますか?
地元にずっと定着する「町のクリニック」をめざしています。目立たなくても構わないのですが、仕事や人間関係がつらいなと感じたときに「そういえば近くにクリニックがあったな」と思い出していただけたらと。当院には、気持ちの落ち込みや仕事に行けないという悩み、発達障害ではないかというご相談など、さまざまな方がいらっしゃいます。精神科は治療が長くなることが多く、軽いうつでも2~3ヵ月、発達障害では数年かかることも。だからこそ、身近で長くお付き合いできる関係をつくれるようにと心がけています。現在は、中学生から60代まで幅広い年齢の方が通われていますね。土日診療も行っていますので、平日お忙しい方にも通いやすい環境です。
こちらの診療体制の強みについて教えてください。

当院の医師は全員、昭和医科大学の精神医学講座に属した経歴を持ち、日本精神神経学会精神科専門医などの資格を保有しています。大きな特徴は、すべての医師が大人の発達障害をしっかり診療できること。大人の発達障害診療の黎明期からの歴史をつづる昭和医科大学鳥山病院の専門の外来の現場などで、全員が長年にわたり発達障害診療を重ねてきた実績があります。現在も、当院の複数の医師が同大学病院で外来を担当しており、先進の医療技術や情報を取り入れることができています。また、うつ病や統合失調症など重い疾患にも対応できる技量を全員が有しています。女性医師も在籍しているので、異性の医師には話しづらいという方にも安心していただけるでしょう。
丁寧な対話から始める、大人の発達障害の診療
大人の発達障害の治療は、どのように進めていくのですか?

発達障害のある方は、小学校のクラスに数人はいるといわれています。ご自身がそうではないかと来院される方は多いですね。しかし、必ずしも当てはまるとは限りません。例えば、幼い頃につらい体験を重ねた方は、発達障害に似たぎくしゃくした振る舞いをするような場合もあり、丁寧な鑑別が大切なのです。そのため、まず困り事を伺いながら特徴の有無を確認し、心理検査で能力の特性も調べていきます。例えば仕事でミスが多いなら、その原因はうっかりなのか、不器用さなのかを一緒に考え、具体的な対策を探ります。ADHDの診断がついた場合は薬も選択肢になりますが、抵抗のある方には無理に勧めることはありません。投薬して終わりではなく、一緒に考える仲間のようなスタンスです。必要に応じて、同じ悩みを持つ方向士のグループ療法が奏功しそうな場合には、昭和医科大学のデイケアをご紹介することもあります。
患者さんとお話しされる際に、心がけていることはありますか?
大切にしているのは、その方が話したいこと、話せることに耳を傾ける姿勢です。言いたくない話を無理に聞き出すと、その方を傷つけてしまいかねません。逆に「聞いてもらって良かったな」と感じていただければ長く通いやすくなり、私も少しずつ患者さんの思いを知っていくことができます。また、対応は患者さんのキャラクターに合わせて変えています。たくさんお話しされる方にはじっくり耳を傾けますし、ご自分からは話し出しにくい方には「よく来てくださいましたね。来てくださったからには何か伝えたいことがあると思います。今一番思い浮かぶことを、教えてもらえませんか」と、やわらかくお声がけしています。
患者さんを支えるご家族に対しては、どのように接していますか?

ご家族から「うちの家族が具合が悪いのだけど、どうしたら良いだろう」と、ご相談をいただくこともあります。家族相談は一般の受診と同様に、お電話やウェブ予約ページなどでお問い合わせいただければ対応可能です。まずお話を伺った上で、医師の介入が必要な状態なのか、焦らず見守って良い段階なのかを判断し、アドバイスをさせていただきます。ご本人の受診が必要な場合には、受診の方法をご説明するほか、受診のハードルを下げられるようなご提案もします。受診後もご家族とお話しする機会は大切にし、ご家族が患者さんと上手な接し方をできるように、そしてご家族自身の心が折れてしまわないように心がけています。自宅ではドクターが介入できない場合が多いので、そうした家族への働きかけが、結局は患者さんご本人のためにもなるのです。
困ったときに、ふと思い出してもらえる場所をめざして
受診を迷っている方へ、アドバイスをお願いしてもよろしいですか?

以前と比べると精神科を受診するハードルは低くなってきていますが、まだ抵抗を感じる方も少なくありません。受診の目安としてお伝えしているのは、学校や仕事に行こうと思っているのに行けないという状態や、ご家族や友人、上司から受診を勧められたような場合です。そういったときは、ぜひ一度いらしてください。発達障害の検査を希望される方には、可能であれば小学校の通知表をお持ちいただくようお願いしていますが、それ以外の方は特に準備は必要ありません。つらい状態のときに何かを整えてから来るのは大変ですから、まずはそのまま足を運んでいただければ十分です。当院のスタッフは優しく控えめで、受付も女性が対応していますので、初めての方にも安心していただける雰囲気だと思います。
今後、力を入れていきたいことをお聞かせください。
先ほどお話しした内容とも重なりますが、一番大事にしていきたいのは、地元の方にとってハードルが低くて来やすい、困ったなと思ったときにふと足を向けていただけるクリニックを実現することです。そのために、通院されている患者さんの声をしっかりフィードバックしながら、受診しやすい仕組みや居心地の良い環境を整えていきたいと考えています。待合室で、ただ待っているだけでも安心できる、そういう空間をめざしたいですね。患者さんにとって、ここが身近で心地良い場所であることが、日々の治療にも良い影響を与えると信じています。焦らず地道に、この三軒茶屋の地で患者さんと一緒に歩んでいけるクリニックでありたいと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

医療機関にかかるというのは、とても勇気がいることだと思います。特に精神科となると、なおさらかもしれません。けれど、お医者さんと会うというのは一つの新しい出会いであり、そこから始まる前向きなストーリーがきっとあるはずです。当院では無理に何かを聞き出すようなことはいたしません。来てくださったこと自体がとても大切な一歩です。私たちは患者さんの人生が良い方向に向かうお手伝いをするため、長く寄り添っていきたいと考えています。三軒茶屋駅から徒歩3分、入り口は路地に面していますが、人目を気にせず入れる場所にあります。何か気になることがあれば、ちょっとだけ勇気を出して足を運んでみてください。

