大西 剛史 院長の独自取材記事
春日部大西毎日腎クリニック
(春日部市/一ノ割駅)
最終更新日:2026/05/14
一ノ割駅を出て、国道4号線から緑小学校に向かって16分ほど歩くと、「364」の数字をモチーフにしたロゴマークが目に入る。2026年4月に開業した「春日部大西毎日腎クリニック」だ。院長の大西剛史先生は日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本内科学会総合内科専門医の資格を持つ腎臓疾患のスペシャリスト。秀和総合病院や春日部中央総合病院で腎臓内科を軸に幅広く研鑽を積み、もっと患者のためにできることがあるという思いから2024年に休日対応の診療所を開設。その経験を糧に現在地へ移転し、透析を含む専門医療と地域のかかりつけ診療を364日届ける体制を築いた。「患者さんが本音で話せるような信頼関係を大切にしています」と気さくに語る大西先生に、開業の歩みや診療への思いを聞いた。
(取材日2026年4月7日)
休日診療所での経験を糧に、理想の医療を形に
まずは、こちらのクリニックが生まれた経緯をお聞かせください。

総合病院で勤務医をしていた頃、患者さんともっと向き合って話す時間を取りたい、栄養面の指導や情報提供をもっと充実させたいという思いが常にありました。ただ、大きな組織では新しい仕組みやITツールを導入するにも制約があり、もどかしさを感じる場面が少なくなかったんです。そこでまず2024年に、春日部中央総合病院に勤務しながら「一ノ割駅前休日診療所」を開きました。春日部市には休日に気軽に受診できる場所が限られていたこともあり、週末の急患を中心に多くの方にご利用いただきましたが、スペースや検査設備にはどうしても限界がありました。その経験と反省を糧に、2026年4月に現在の場所へ移転して院名も改め、設備やシステムを大幅に見直して再出発しました。
先生はなぜ腎臓内科を専門に選ばれたのですか?
学生の頃はもともと形成外科の道をめざしていました。目に見える変化を自分の手で生み出せる可能性に魅力を感じていたんです。ところが初期研修の2年間で内科治療の面白さにも気づき、手術もできる内科として腎臓内科の道を選びました。学生時代に腎臓内科の研究室に所属していたご縁も後押しになっています。卒業後は秀和総合病院や春日部中央総合病院などで、腎臓内科を軸に総合診療、皮膚科、泌尿器科と幅広い領域で研鑽を積みました。腎臓の悪い方は重い合併症を抱えやすく、他の科では受け入れが難しい症例も多かったですね。診療科の枠を越えてさまざまな経験ができました。外科志望だった頃に培った処置や手術の技術は、今の現場でもしっかり生きています。
こちらのクリニックならではの特徴を教えてください。

透析は祝日も含めて週3日決まった曜日に行いますし、休日にしか来られない方もいます。足し算をしていくと自然に元日以外の364日、ほぼ毎日の体制になりました。建物は2階建てで、1階が外来と各種検査、2階が血液透析のフロア。入り口や動線を分けて設計しているので、それぞれの患者さんが安心して過ごせる環境です。診察中はスタッフにカルテ入力を担ってもらい、私は患者さんとの対話に集中できる仕組みにしました。一般的な診療所では対応が難しい検査や処置もできる一方で、入院するほどではないけれど不安があるという方の受け皿にもなれる。病院と小さな診療所の間を埋める存在でありたいと考えています。
見えにくい腎臓疾患だからこそ、対話で信頼関係を築く
腎臓疾患には、他の病気とは異なる特徴があるのでしょうか。

腎臓の病気は自覚症状がほとんどないのが特徴です。心臓なら胸の痛み、呼吸器なら咳と気づくきっかけがありますが、腎臓にはそれが乏しい。どんなときに専門の医師を受診すればいいのかが伝わりにくいのは、この領域ならではの難しさですね。さらに腎臓だけが悪い方は実は少なく、糖尿病や高血圧、心臓の病気を併せ持つ方が多いため、総合的に管理していく力が求められます。だからこそ、当院には20台以上のベッドを備えた透析室を設けただけでなく、エコーや血液分析などその場で結果がわかるよう検査機器も導入しました。自宅で行う腹膜透析の導入準備も進めており、選択肢を広くご提示できる体制をめざしています。
腎臓以外の診療についてもお聞かせいただけますか。
腎臓が悪い方は皮膚の乾燥やかゆみが出やすく、骨粗しょう症にもなりやすいなど、一見関係なさそうな症状を抱えることがあります。ですから皮膚科の診療もあわせて行い、骨密度検査の準備も進めているところです。そのほか高血圧や糖尿病、むくみ、軽い心不全など一般的な内科疾患にも幅広く対応しています。またこの地域には休日にお子さんを診られる医療機関が少なく、「一ノ割駅前休日診療所」ではお子さんの急な発熱やケガも診ていましたから、当院でも小児科を設けました。お子さんは小児科、親御さんは内科や皮膚科と、年代や症状によって複数の診療科を回るのは大変かと思います。「家族全員の相談を受けられるクリニック」として、幅広くお困り事に応えていきたいですね。また、発熱のある方は一般外来と動線を分けるなど、誰もが安心して通るような環境を整えています。
患者さんと接する際に心がけていることはありますか?

患者さんと安心してお話しできる関係を何より大切にしています。診察では、指導する側として一方的に話すのではなく、患者さんがご自身の状況を素直に話しやすい雰囲気づくりを心がけています。たとえば食事についてお伺いする際は、「どんな時に食べ過ぎてしまいますか?」や、「夜に多くなりやすいですか、それとも昼でしょうか?」といったように、患者さんが答えやすく、ご自身の生活を振り返りやすい質問をするようにしています。お薬の服用についても同様で、「きちんと飲めていますか」と確認するよりも、「余っているお薬はありませんか?」というように、お話ししやすくなる言葉を選んでいます。治療やお薬のデメリット、注意点がある場合は、私からきちんと包み隠さずお伝えします。だからこそ、患者さんにも「難しいこと」や「不安なこと」があれば、遠慮なく話していただきたいと思っています。一緒に無理のない解決策を見つけていきたいです。
感謝・貢献・挑戦。チームで支える春日部の医療
クリニックの理念やチームについてお聞かせください。

私と同じく腎臓を専門とする坂口祐希先生が副院長を引き受けてくれたおかげで、元日以外は毎日、透析にも外来にも対応できる体制が整いました。そのほか、看護師、臨床工学技士、検査技師、事務スタッフ、送迎ドライバーなど、それぞれの力があって当院の診療は成り立っているんです。“開業”という冒険に一緒に乗り出してくれたメンバーには心から感謝しています。理念には「感謝・貢献・挑戦」の3つを掲げました。スタッフ間では「すみません」を禁止にしていて、お互いに「ありがとう」と伝え合う文化を大切にしています。うまくいかなかったとしても、それはやろうとした挑戦の結果です。そして、目の前の困っている人に対して自分ができることを一つずつ積み重ねていく。その姿勢が良い医療につながると信じています。
今後、力を入れていきたいことはありますか?
例えば外来で処方箋をお出ししても、ご自宅で薬をきちんと飲めない方もいらっしゃいます。外来の診療だけで患者さんの暮らし全体を支えきるのは、正直なところ難しい場面もあるんです。今後の大きな課題は、通院が大変になってきた高齢の方をどうサポートしていくかということ。その答えの一つとして、訪問看護ステーションとの連携を考えています。診察の中で「この方はご自宅での生活が少し心配だな」と感じたときに、訪問看護につないで支えていく仕組みをつくりたい。病院で行われる医療とご自宅での介護や看護を、もっと強く結びつけていきたいのです。まずは日々の診療がスムーズに回るよう設備と体制をさらに固めて、その上で在宅支援にも力を入れていきたいと考えています。
最後に、地域の皆さんへメッセージをお願いします。

医師をめざした頃から、いずれは地元の春日部で開業して地域の医療に貢献したいという思いがありました。同じ志を持つ坂口先生や頼もしいスタッフたちに恵まれて、こうして理想の医療に一歩近づけたことを心からありがたく感じています。地域医療においては、病院とクリニックにそれぞれの役割があります。患者さんに頼っていただくと同時に、病院の先生方が「あそこなら任せられる」と安心して送り出せるクリニックへと成長していきたい。さらにスタッフが明るく働ける職場であることが、街の元気にもつながれば何よりですね。

