佐々 達郎 院長の独自取材記事
前野町つばめクリニック
(板橋区/本蓮沼駅)
最終更新日:2024/12/05

都営三田線本蓮沼駅と東武東上線ときわ台駅からそれぞれ徒歩12~13分の住宅街にある「前野町つばめクリニック」。循環器疾患の救急医療の現場などで経験を積んだ佐々達郎(さっさ・たつろう)院長が、地域で頼られるクリニックをめざし、2024年7月に開業した。内科・循環器科・呼吸器科に加え、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病にも対応し、幅広い診療を提供する同クリニックのモットーは、「不安をくみ取り、癒やし、生活に寄り添う」だ。地域における医療の入り口として、「なるべくハードルを低くして、気軽に受診してもらえるようにしたいです」と、誠実に熱意を込めて話す佐々院長に、診療方針や予防医学の重要性について聞いた。
(取材日2024年7月31日)
地域に根差し、予防医療の充実をめざす
地域密着型のクリニックをめざして開業されたと伺いました。

地域のかかりつけ医として、内科の幅広い診療内容に対応し、患者さんの生活に寄り添うクリニックをめざしています。専門的なことは、大学病院などの高次医療機関にお願いすることになるので、そちらへの橋渡しができる、一般の人にとっての医療の入り口になれたらと考えています。そして、病気を防ぐ観点からは、町のクリニックには、新しく適切な医療情報を発信していく大きな役割があるとも考えています。板橋区には縁があって移り住み、地域の中で子育てをしてきましたが、暮らしやすい場所だと感じています。若い方からご年配の方まで、幅広い世代と関われますし、町内会やお祭りなど、地域のつながりがあるのもいいですね。私自身もこの街が気に入っているので、クリニックの診療を通じて、地域に貢献したいと考えています。
開業前は、循環器内科の先端医療も経験されたそうですね。
千葉大学医学部を2012年に卒業し、東京歯科大学市川総合病院で2年間、初期研修をしました。街の中核病院のような位置づけで、ローテーションでさまざまな診療科を回りましたが、患者さんがどんなきっかけで病院を受診し、どのような経過をたどるかを、多くの症例を通じて知ることができ、良い経験になりました。その後、2014年からは東京都立墨東病院の循環器の救命救急センターで、4年ほど勤務しました。そこでは日々、心筋梗塞や不整脈など、命の瀬戸際で闘う患者さんの救急診療を中心に対応し、急性期医療の先端を経験しました。その中で、急性の疾患や発作を防ぐには、普段からの生活習慣が大切だと確信する部分があり、2018年からは東京大学医学部附属病院で診療しながら、東大の大学院に4年間通って遺伝医学・予防医学を研究し、博士号も取得しています。
医師を志したきっかけと、内科を選ばれた理由もお聞かせください。

医師の家系ではなかったですが、少年時代から漫画の影響で医師に憧れていました。そして、医師として活躍されている高校の先輩のお話を聞き、改めて「人の役に立つ立派な仕事だ」と感じ、医学部に入りました。初期研修が終わる頃まで悩みましたが、循環器内科を選んだのは、心臓が命に直結する臓器ということと、刻一刻と患者さんの状態が変わる中で、素早く適切な対応をしている循環器内科の医師の姿が、医療の最前線であると実感したからです。患者さんが、緊急手術や緊急カテーテル治療を受けられる様子を見て、やりがいがあるとも感じました。それで、心臓をメインに診療を始め、徐々に内科の領域を広げていきました。その中で生活習慣病を防ぐことが非常に大事だとわかり、現在の予防医学への関心につながったのです。
診察の前後で、ポジティブな気持ちの変化を起こしたい
診療方針について教えてください。

気になる症状があった時に来院するということは、大きな意味がありますが、とても勇気のいることです。その一歩を踏み出してくれた患者さんは、その時点で頑張ってくれていますので、「よく来てくれました」という気持ちで迎えています。そして来院された患者さんに、「来て良かった」と思ってもらえることが大事であると考えています。人により体の状態は千差万別ですが、当クリニックに来たことで、何かしらのポジティブな気持ちの変化を感じてもらうことを目標にしています。治療には薬を使うことも、生活指導のみのこともありますが、患者さんが納得した上で進めることを大切にしています。そのためにはその治療を選択する理由やメリット、先の見込める状況などをわかりやすくお伝えすることが必要ですし、現実的提案をすることを心がけています。
診察の際に気をつけているポイントはありますか?
若い方とお年を召した方、急病の方と生活習慣病の方では違いがあると考えます。例えば、これまで医療機関に縁がなかった方、40代や50代で初めて健康診断で指摘を受けて来院されたような方は、患者さんの立場でいうと、人生の悩ましい転機を迎えるわけです。その中で重大な病気を見落とさないことはもちろん大切ですが、患者さんの不安を受け止めながら、生活習慣を変える方向に動いてもらえるように心がけています。高血圧と健康診断で指摘を受けた場合、「運動しましょう」「タバコをやめましょう」と医師から言うのは簡単ですが、実際の生活習慣を変えるのはストレスにもなり得ます。患者さんの普段の様子を把握しながら、治療へのモチベーションが上がるように向き合いたいと考えています。
ご高齢の方や慢性的な疾患を抱えている患者さんには、どのように向き合いますか?

ご高齢の方や慢性疾患のある方は、ご自宅から近いからという理由で来院されることが多いです。医師としては、何十年間も向き合い続ける覚悟が必要です。それも漫然と同じ薬を出すだけではなく、時間の経過の中で体の変化に気づくことがかかりつけ医の役割だと考えます。そのためには患者さんの検査データや生活背景、人生の歩み、家族構成などを深く知ることが大事です。普段から足しげく通っていただくことが、そうした変化に気づくための方法でもあるし、町のクリニックの大事な役割だと考えています。また、仮に大きな病院に入院した後、自宅に帰って今までどおりの暮らしができるかどうかは、患者さんにとって重要です。そのため、病気になる前の基礎体力などが重要です。フレイルをはじめとして、筋肉量などの運動機能は普段から大事にしておくべきポイントなので、そのあたりも気にかけています。
患者の気持ちと生活に寄り添い、頼れる存在をめざす
「不安をくみ取り、癒やし、生活に寄り添う」のモットーに込めた思いは、どのようなものですか?

来院された患者さんが、不安なお気持ちを話し、診察を受けることでほっと安心するためには、医師の話し方はもちろん、スタッフの対応や建物の雰囲気なども重要だと考えています。患者さんご自身が、しっかりと自分の症状や状況を伝えることができる場合ばかりではありません。「つらい」の一言にもいろいろな背景が隠れていると思います。「つらい」状況が、何か一つの病気に落とし込めるわけではなく、症状も暮らしの状況も人それぞれなので、その中にある患者さんの思いを受け止めたいと思っています。診療の際も、その気持ちを出してもらいやすい接し方をするように心がけています。
体組成計を置かれている狙いは何でしょうか?
医療機器で特別なものは入れていませんが、体組成計は筋力低下を原因とすることが多いフレイル予防などのために置いています。体重・脂肪量・水分量・筋肉量が測れますが、ご自分でそれらのデータをすべて把握している方は少ないでしょう。来院された際に時々測っていただいて、患者さんが自分の体について考えるきっかけにしてほしいという狙いがあります。例えば、心不全の方は、水分管理についてどの医療機関でも口酸っぱく言われていると思います。気にしなければならない生活習慣などを、医師からアドバイスされるだけでなく、ご自分が努力して達成した数字として見ることができると、治療を継続する意欲につながると思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

何かご心配なことや症状があったら、気軽に来院していただきたいですね。当クリニックのロゴマークは、板橋区の花であるニリンソウをツバメが運んでいる様子を表しています。クリニックも同じで、ごく当たり前の野草のようだけれど、あって良かったと思われる存在になりたいという願いを込めました。このように、地域に溶け込んだクリニックをめざしていますので、「何かちょっと気になる症状がある」「病院にかかりたいが、どこに行ったら良いかわからない」という時は、ぜひお話をしに来てください。