岩佐 健史 院長の独自取材記事
日吉いわさ内科・循環器内科
(横浜市港北区/日吉駅)
最終更新日:2024/11/29

日吉駅から徒歩圏で、綱島駅からもアクセス可能な「日吉いわさ内科・循環器内科」。院長の岩佐健史先生は、国立がん研究センター中央病院で医長を務めるなど、約20年にわたる臨床と研究の日々を経て2024年7月に独立した。患者と向き合う時間を少しでも確保し、さらに患者のストレス軽減につながるよう、診療予約や会計のDX化を進める。種類豊富な医療機器を持つことも同院の特徴だ。受診のハードルを下げて、誰もが気軽に来院してほしいと語る岩佐院長に、診療方針や、患者と向き合う時に意識していることなどを聞いた。
(取材日2024年8月15日)
一人ひとりに適した医療を一緒に考える
大学卒業後のご経歴を教えてください。

国立国際医療研究センター病院で2年間、榊原記念病院の循環器内科で2年間過ごし、その後、東京大学大学院の院生として東京大学医学部附属病院で研究にいそしみました。博士課程を終えてから、国立がん研究センター中央病院に11年間勤め、当院を開院しました。国立国際医療研究センター病院で、研修医として最初に配属されて学んだのが総合診療でした。どの診療科に行けばいいのかわからない症状の患者さんを診察する分野で、ここでの経験が開院した今の自分につながっていると感じます。榊原記念病院は心臓病専門の病院で、心臓のカテーテル治療や検査など、循環器診療の研鑽を積みました。東京大学医学部附属病院では、これまで2つの病院で経験した臨床を研究者として学び直し、国立がん研究センター中央病院では、腫瘍循環器学という学問分野の確立に努めながら臨床も担当しました。
勤務医や研究者としての日々を経て、2024年に開院した理由は何でしょうか。
卒業後の10年で内科の医師としての臨床と研究の基本的な部分を経験でき、次の10年で特殊な分野の確立に携わり、その臨床の基礎をつくる仕事ができたので、次は何をすべきかと立ち止まって考えた時、等身大で患者さんと向き合いたいと思ったんです。研修医として最初に担当した総合診療で、喉が痛いとか、胸がドキドキするとか、頭痛があるとか、異なる症状を抱えた患者さんと一対一で向き合い、解決を一緒に探った日々が充実していたことが思い起こされて。原点回帰して開院することを決めました。当院では開業にあたり、予約・問診・会計をできる限りDX化しました。それも、患者さん一人ひとりに向き合う時間を少しでも担保するためです。患者さんとお話をする時間をしっかり設けられるよう、機器はもちろん院内設備は特に意識して整えました。
診察する際の流れを教えてください。

患者さんが伝えたいことを取りこぼさないようにするため、最初に看護師がお話を伺って、次に私が診察します。診察室で症状や疑問をしっかりと伝えることはなかなか難しいものです。まずお話をお伺いすることで、患者さんが伝えたかったことや聞きたかったことを頭の中で整理してから診察室に向かえると思うんです。そして診察時には、どういう検査をして、どんな治療をしていくかを患者さんと一緒に決めていきます。今後は、個々人に適した医療を提供するテーラーメイド医療が必要になっていくと思っています。楽しいと感じること、どうしても譲れないことは、人それぞれ異なりますよね。喫煙する患者さんがいた場合、私は禁煙したほうが良いとお伝えしますが、どうしても禁煙はできないと言われれば、できる範囲での治療を一緒に考えていきたいと考えています。
患者が求めている情報を率先して伝える
院内機器にもこだわられたそうですが、それにはどういった意図があるのでしょうか。

循環器や生活習慣病の治療を行う上で、患者さんご自身が現在地を把握できるような機器をそろえました。現在地を知ることができれば、治療を始める上での動機づけができ、それが継続するモチベーションにもつながると思います。例えば当院では、動脈硬化の具合や血管年齢をチェックすることができる血圧脈波検査、肺年齢や喘息の疑いを数値で表す呼吸機能検査ができます。人生は何十年もかけて続くマラソンのようなもの。自分が今どの辺りにいるのかわからないと、どのくらい頑張って走ればいいのか見当がつきません。50代の糖尿病の患者さんがいたとして、脈波検査で算出した血管年齢が40〜50歳であれば経過観察含め治療を始めるかどうかゆっくり立ち止まって吟味することができますが、血管年齢が70〜80歳であれば急いで治療を開始する必要が生じます。このように、人によってどのくらい頑張るべきなのかの指標を提示することにつなげられます。
今現在の立ち位置が数値で示されると、自分の体に対して理解が深まりそうですね。
血液検査では、血糖値やHbA1cという項目は当院で検査当日に検査結果を出せるようにしています。これにより、糖尿病の患者さんに、今の治療の状態や、患者さんがどのくらい頑張っているのかを伝えられます。結果が出るのが1ヵ月後の次回の外来という形であれば、治したいというモチベーションもそれだけ下がってしまうと思うんです。逆に、結果をすぐフィードバックできれば患者さんが治療を頑張ろうというモチベーションになると思います。なので、患者さんの治したいという気持ちを少しでも後押しできるよう、そういう機器に関しては優先して導入をしました。
患者さんと接する時に意識していることはありますか。

患者さんを責めるような言い方をしないことです。生活習慣病を例に挙げると、同じ生活習慣であっても病気になる方とならない方がいます。なぜなら体質の影響が大きく、罹患する方全員が生活習慣が悪いわけではないからです。もう一つ意識していることは、患者さんはご自身の体調が気になって来院されるので、求めている情報を率先して提供し、治療するための方法を提示することです。選択の余地がない場合を除き、方法が複数あるなら私がどれにするかを決めるのではなく、まず患者さんにすべて提示してご希望を伺います。患者さんと医療スタッフが一緒に意思決定を行うことをShared Decision Makingといい、当院はこれを実践しています。
予防医学と病気の早期発見・早期治療を重視
クリニックではどんなことに力を入れていきたいですか。

予防医学と病気の早期発見・早期治療です。動脈硬化が進行した患者さんを診てきた中で、もっと早い段階で治療できていれば……と感じることが多々あったからです。日本の健康診断の制度は充実していますが、結果を受けてどう行動するかは個人に任されていて、何となく受診しないでいる方はかなり多いのではないでしょうか。受診したくても忙しかったりと、いろいろ理由はあると思いますが、そうこうしているうちに病気が進行してしまわないよう、まずは気軽に受診をしていただきたいです。また、すべての診療時間で発熱者専用の外来を受け入れる体制も整えています。周囲への感染を心配せず受診できるよう、通常の外来の患者さんとは入り口・診察室を分けているので、安心して来院いただきたいです。当院では、いつでも誰でも、気軽に足を運んでいただけるクリニックをめざしていきたいですね。
地域の方が気軽に足を運べるクリニックをめざしているのですね。
そうですね。健診結果を持参していただくだけでもコミュニケーションを重ねる中で何らかの検査をするきっかけが見つかるかもしれません。例えば赤血球の濃さを示すヘモグロビン値は基準値を下回っていれば健診で引っかかりますが、逆の場合、よほど数値が高くないと引っかからないんです。しかし、少し高めの場合、いびきがうるさかったり、眠ったのにすっきりしないといった症状があれば睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。当院には検査機器がありますし、睡眠時無呼吸症候群は高血圧症や糖尿病と並んで動脈硬化や心臓病のリスクになることがわかっているので、それらの予防につなげていきたいと考えています。また、医療が日々変わる中で私も医療知識をアップデートしていくので、患者さんと長いお付き合いができればそれだけ貢献できることは増えるのかなと思っています。地域のかかりつけとして多くの患者さんに頼っていただけるクリニックをめざします。
では最後に読者へのメッセージをお願いします。

港北区には大きな病院やクリニックがたくさんあります。そうしたエリアにあって、当院では患者さんが嫌な思いをすることがないよう、できる限りいろいろな相談に応じられるよう努めています。受診するほどではないかな、と思うレベルのことでもまずはお気軽にご相談ください。