桂 聡哉 院長の独自取材記事
かつらこどもくりにっく
(箕面市/箕面萱野駅)
最終更新日:2025/03/25

箕面市の静かな住宅街にある「かつらこどもくりにっく」は、長年小児科クリニックとして愛されてきた「つちたにこどもくりにっく」を引き継ぎ、桂聡哉院長が、2024年6月に開業した。山小屋のように木をふんだんに使った院内は広く開放的で、遊具なども充実している。大阪大学医学部附属病院などで、小児がんの診療に携わってきた桂院長は、その経験を生かし、患者や家族を第一に考えた治療を実践することに努める。「患者さんや家族と関わる機会を増やすことで、地域に根づいたかかりつけ医としての役目を果たしていきたい」と語り、地域に密着した患者や家族の支えになるようなクリニックをめざす桂院長に、同院の特徴や今後の目標などを聞いた。
(取材日2024年6月26日/情報更新日2025年3月19日)
地域医療にかける熱い想いを継承したクリニック
医師をめざしたきっかけは何だったのでしょうか?

私は低体重出生児で、NICU(新生児集中治療室)に入院しました。そこで吐血や下血をして貧血になり、輸血などの処置を受けた経験があるのです。私は子どもの頃から、両親にその時の話をよく聞かされ、将来は医師になったほうがいいといわれていたんです。ただ、血を見たり、生き物を触ったりするのが苦手だったので、無理をして医学の道に進んでしまうと、患者さんに迷惑をかけてしまうと考えました。そこで得意だった数学やコンピューターを勉強するため、東京大学工学部電子情報工学科に進んだんです。その後、東京大学大学院、大阪大学大学院でも数学の研究をしました。しかし、医師に対する憧れはずっと抱いていました。その時点で生き物に対する苦手意識はなくなっていましたので、やはり出生時の恩返しをしたいと思い、大阪大学大学院を修了後、医学部に編入しました。
その後、開業するまでの経緯を教えてください。
NICUでの感謝の気持ちが強かったので、診療科は小児科しか考えませんでした。小児科は、耳鼻科や眼科といったように臓器別ではなく全身を診る科ですが、いろいろなことをやりたい性格なので向いていると思います。医師になってからは、箕面市立病院や大阪大学医学部附属病院に勤務しました。阪大病院にいた頃、「つちたにこどもくりにっく」の土谷之紀院長から、クリニックを継承してくれないかと頼まれたんです。そこで準備期間を経て、2024年6月に開業しました。土谷先生のことは箕面市立病院時代からよく存じ上げておりました。土谷先生は紹介で入院させた患者さんの様子を見に、病院を訪ねて来るような熱心で責任感の強い先生です。その熱い想いを継承しつつ、私の経験や専門性を生かし地域の方々のために貢献したいと考えています。箕面は医師になってからずっと住んでいましたし、地域に対する愛着も強いんです。
どのようなクリニックをめざしていきたいですか?

地域に密着した、子どもだけでなく家族の支えになるようなクリニックをめざしています。具体的には、子どもの病気を治療することはもちろん、家族の負担を減らしたいと考え、診療時間を午後7時までにして共働きの家庭でも来院できるようにしたり、予約システムを充実させてクリニックでの滞在時間を減らしたりといった工夫をしています。かといって機械的になってはいけないので、丁寧に話を聞き、スムーズかつ的確な診療を心がけています。当院は、土谷先生時代から通っている地元の方が多いので、かかりつけ医として引き続き診療していくとともに、増加しているアレルギーの診療にも力を入れていきたいと考えています。しっかりと問診をして原因を探りながら、食べ物や着る物のアドバイスまでしていけたらと考えています。
小児がん診療の経験を生かし、重篤な疾患の発見を
小児がんを長く診てこられたと伺いました。

がんは早期発見・早期治療が大切ですが、症状に出にくいため発見が難しいんです。白血病も血液検査をしないとわかりません。白血病であれば発熱や体調不良が続く、固形がんであれば体の一部が膨らんでくる、便秘や下痢の症状が出るなどといったきっかけで発見されることもあります。当院では、早期にがんを見つけることができるよう、超音波検査や血液検査を院内でできるようにしています。もちろん、小児がんに長く携わってきた私の経験も、がんの発見に生かしたいと考えています。
院内の設備について教えてください。
機器は、開業にあたってすべてを新しくしました。アレルギー検査をより簡便にするための指先採血の機械も導入し、今後も増やしていく予定です。健診にも力を入れていきたいので視力検査の機械などの導入を検討しています。子どもの場合特に、疾患をできるだけ早く見つけることが大切なので、そのために必要な検査機器であれば積極的に取り入れたいですね。また、内装にはスギやヒノキを使っています。もちろん、木なので花粉の心配はありません。塗料も、日本に古来からある体に配慮したものを使用しています。院内に置いている木製の汽車は座ったり、よじ登ったりして遊べます。当院のシンボルマークは、私の名前にちなんだカツラの木なんです。カツラは葉がハート形をしていますが、これは患者さんに心を届けたいという私の思いにぴったりです。また、土谷先生がモチーフにしていたリンゴを残すことで、診療にかける情熱を継承する心構えを表しています。
こちらのスタッフや予約システムについても教えてください。

スタッフの看護師や事務の方たちは私の阪大小児科時代の仲間です。子どもたちとの関わり方も上手ですし、気心も知れている頼もしい存在です。当院は予約システムを取り入れているので、ホームページから予約することができます。それが難しい方は電話でも大丈夫です。発熱の場合、ウェブ問診でその旨を記入してもらえれば、来院した段階で動線を分けて対応します。個室待合室もあるので、感染性が高い疾患でも診察することができます。重篤な疾患が見つかった場合は、箕面市立病院や大阪大学医学部附属病院を迅速に紹介できますので、安心して来院してください。知っている医師ばかりなので、細かいことでも相談できるんです。
適切な診療とスムーズな体制で、家族全員の健康を守る
今後はどのようなことをしていきたいですか?

クリニックは病気になったときに来るところですが、病気を見つけやすくするには、子どもの普段の様子を知ることも大切です。ですから、来院するハードルをできるだけ下げるため、保育士である事務のスタッフたちとも相談し、季節ごとに楽しいイベントをしたいと考えています。ママ友が集まれるような子育てサロンや病児保育も行う予定です。私は阪大の小児科時代、重症の患者さんを数多く診てきました。中には在宅で人工呼吸器をつけるといった医療的ケアが必要な患者さんもいました。ところが、往診をしている小児科はとても少ないのです。ですので、今後は往診にも対応していきたいと思います。また、オンライン診療も検討中です。病院に連れていきたいけど、下の子が小さいからなかなか連れていけないといった方には、初期段階で気軽に診てもらえるオンライン診療が役立つと思います。
診療にあたって心がけていることはありますか?
小児科は全身を診ると言いましたが、それだけではないと思うんです。例えば発熱で来院した場合、熱を下げるための処置は当然として、それ以外に困っていることはないか聞くようにしています。親御さんには「日常生活でのことでもいいので相談してください」と伝えます。また、子育てや子どもの看病などで大人が疲弊している場合は、環境を整えるためのアドバイスをしたり、必要であれば適切な機関を紹介したりもします。先ほども申し上げたように、今後は子育てサロンで親御さんのフォローをしつつ、関係各所とも連携して家族全員の健康を守っていきたいと考えています。
読者へのメッセージをお願いします。

大学病院で小児がんの治療に携わってきたことが私の財産です。クリニックはその場で診察して後は診ないということも多いのですが、小児がんは長期間の治療になるため、子どもや家族と深く関わってきました。まるで親戚のようになって世間話や相談事を聞いている中で、家族が抱える困り事などを知ったり、子どもの変化に気づいたりするようになったんです。その経験を、当院でも生かしたいと思います。患者さんやそのご家族と関わる機会を増やすことで、地域に根づいたかかりつけ医としての役目を果たしていきたいと考えています。精いっぱい診療していきますので、どんな些細なことでも気になることがありましたら、気軽にご相談ください。