田中 育太 院長の独自取材記事
とぎやまち内科・消化器内科
(高松市/片原町駅)
最終更新日:2024/07/24
琴電片原町駅から徒歩7分。「とぎやまち内科・消化器内科」は、高松丸亀町商店街に隣接するメディカルモールの1階で、2024年5月に開業した。分譲マンションと一体化した11階建ての建物は都会的な印象が強いが、院内はやわらかなグリーンとベージュを基調として、居心地の良い雰囲気が漂う。田中育太院長は、高松医療圏の拠点となる市立病院に12年間在籍し、科長として市民の健康維持・増進にその身を費やしてきた。新たなスタート地点でめざすのは、地域住民から信頼され、何でも相談できる「街のかかりつけ医」。ブルーライト照明を導入した内視鏡室では苦痛の少ない内視鏡検査にこだわり、女性医師による検査にも対応している。一言、一言ゆっくりと言葉を選びながら、「患者さんのお気持ちに寄り添いたい」と語る田中院長に話を聞いた。
(取材日2024年6月25日)
中核病院を経て、地域医療の最前線へ
医師をめざしたきっかけを教えてください。
幼い頃によく診てもらっていた、小児科の先生がきっかけです。その先生は責任感が強く、子ども心にも信頼できるお仕事をされる方でした。医師になれば、体の弱い自分でもそういう仕事ができるのではないか、もっと自分に自信が持てるのではないかと考えたのです。当時愛読していた、医療漫画の主人公にも憧れを抱いていました。同じ高松市出身で、北海道大学歯学部に進学した年上の友人から影響を受けて、大学は札幌医科大学へ。卒業後は同大学附属病院の第四内科(現・腫瘍内科・血液内科)に入局し、幅広く内科の研修を積む中で、消化器領域の専門性を深めていきました。私が思い描いていたのは、「街の身近なお医者さん」であり、中でも腹痛などの診療や内視鏡検査などで患者さんの健康をサポートできればという思いがありました。
その後のご経歴はいかがでしょう?
大学病院、関連施設で研修を受け、大学院で研究に携わった後、道内の総合病院に6年間勤務しました。その頃には北海道へ渡って20年がたとうとしていましたので、妻とも相談して、2011年に帰郷。県立白鳥病院を経て、2012年に高松市民病院へ入職しました。診療科を統括する立場は初めての経験でしたが、周囲の皆さんに温かく迎えられ、支えられたことで12年間も務められたと思います。高松市民病院は、2018年に約8km南の仏生山町へ移転し、高松市立みんなの病院へと生まれ変わりました。8kmは、決して短い距離ではありません。ですが、移転後も「先生に診てほしい」と通って来られる患者さんが多く、ありがたかったです。ここ、磨屋町(とぎやまち)での開業後も同様で、このエリアを生活圏とする方々とともに、県南地区の患者さんが継続して来られています。とてもありがたく、「診療を続けていてよかった」と思っているところです。
開業を決心した理由は?
12年間の在職中には、外来診療だけでなく各部署間の調整、後輩医師の指導、また所属する学術団体や委員会での活動などを経験し、多くのことを学ばせていただきました。しかしその一方で、患者さんとお話をする、患者さんを診療する時間にやりがいを見出している自分に改めて気がついたのです。また、新型コロナウイルス感染症が流行し生活様式が一変する中で、一医師として、地域医療の最前線で患者さんと接したいと考えるようになりました。このメディカルモールは、何と言っても立地の良さが魅力です。数年前からお声がけいただいていたこともあり、この場所での開業を決めました。初めての開業は苦労も多かったですが、勤務医時代には経験し得なかったことを勉強できて良かったと思っています。
市の中心部で精度の高い内視鏡検査を
開業にあたって、こだわられた部分はどこでしょう?
内視鏡検査の設備にはこだわりました。県内でも珍しい、ブルーライトの照明を取り入れた内視鏡室には驚かれる方が多いです。通常の照明下では、モニターを見やすくするために部屋を暗くしますので、手元が見えづらく、スタッフの処置や記録に影響がありました。ブルーライトによって室内の明るさとスタッフの動線を維持しつつ、モニターの視認性も向上させています。青い色には、赤い色を引き立てる補色効果があるからです。リラックス効果のある青い色は、内視鏡検査を受ける方の緊張感も和らげるといわれています。大腸内視鏡検査に欠かせない前処置室は、患者さんが落ち着いて過ごせるよう、トイレつきの個室としています。検査後は内視鏡専用の洗浄消毒器を用いて、衛生管理を徹底。診察と内視鏡検査の動線を踏まえ、院内のレイアウトにも配慮しました。
内視鏡検査で心がけていることは?
可能な限り、患者さんに苦痛を与えないことです。検査がつらかったと感じられると、その後、足が遠のくかと思いますが、その数年の間に病気が発症するかもしれません。当院では定期的に内視鏡検査を受けていただけるよう、丁寧な対応を心がけています。胃の内視鏡検査では直径5mm台の細い内視鏡を鼻から挿入しますので、口から入れるよりも苦痛の軽減が図れますし、希望者には鎮静剤も用意しています。大腸の内視鏡検査においては、鎮静・鎮痛剤を活用。内視鏡は極力、腸壁を押し伸ばさない「軸保持短縮法」で挿入し、苦痛に配慮します。小さな大腸ポリープであれば、当日の切除も可能です。また月に数回、土曜日の午後には女性医師による検査・診療を行っています。女性医師の存在は重要だと考えて、開業前の早い段階からご相談をしていました。
診療のモットーを教えてください。
患者さんが安心して診療を受けられるように、嫌な思いや不快な思いをされないように、ということは常に意識しています。中には、症状があってもなかなか診断がつかないケースもありますが、患者さんは何らかの不調と不安を抱えて、お困りになっている。だから医療機関を訪れている。それを忘れずに診療したいと思っています。そして、医療を提供するのは私一人だけではありません。ご縁があって、同じ場所で働くわけですから、スタッフにも「ここで働いて良かった」と思っていただけるような職場環境を提供したいです。スタッフ室も、一人ひとりがリラックスできるように配慮しています。お互いに楽しく仕事をすることが、質の高い医療にもつながると考えています。
何でも相談できるかかりつけ医に
ご自身の健康法はありますか?
高松市立みんなの病院では、エレベーターを利用せず階段で移動し、診療後にはリハビリテーション室の機器を借りて、トレーニングも行っていました。今の健康法はもっぱら、散歩とフィットネスクラブです。フィットネスクラブは1回1時間程度で、週に4〜5回は通っています。もともと歩くことが好きなので、秋から春にかけては屋島や峰山といった市内の山をハイキングします。昨年は、念願だった富士山登山もできました。
市立病院では、緩和ケアにも携わっていたと伺いました。
院内外の患者さんの緩和ケアや、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)に携わってきました。ACPは「人生会議」とも呼ばれ、患者さんが人生の最終段階に望む医療やケアを前もって話し合い、共有するための取り組みを指します。かかりつけ医として、患者さんの疾患や生活状況とともに、ご家族との関わり方や、ご家族の患者さんへの思いなどを日頃から理解しておくこと。入院や手術などのご紹介をさせていただく際には、病状とともにそれらの内容をきちんと総合病院の先生にお伝えすること。それができれば、患者さんとそのご家族のご希望に沿った医療が提供しやすくなると考えています。これからは開業医として、ACPを意識して患者さんとご家族に接し、「この先生なら」と安心していただけるような診療を行いたいです。
最後に、読者へのメッセージをどうぞ。
どのような症状でも、まずはご相談ください。その上で院内で対応できることを判断し、必要な場合は専門と思われる近隣のクリニックや総合病院などへご紹介します。この地区には専門性のある内科のクリニックもありますので、内視鏡検査が必要な患者さんをご紹介いただいたりと、連携を取りながら診療を行うことが現在の目標です。私が医師としてやりがいを覚えるのは、やはり患者さんとお話をして、患者さんと向き合う時間です。困っている患者さんのお気持ちに寄り添いながら、心のこもった医療をお届けし、そして信頼していただけるような地域のかかりつけ医をめざします。