糖尿病や生活習慣病、甲状腺疾患とも合併する
睡眠時無呼吸症候群
新高島金沢内科クリニック
(横浜市西区/新高島駅)
最終更新日:2024/07/05


- 保険診療
眠っている間の呼吸が浅くなったり、止まったりする睡眠時無呼吸症候群。日中の眠気により交通事故につながる恐れがあったり、パフォーマンス低下が見られたりするとして、企業単位で検査・治療に取り組むケースも増えているという。「新高島金沢内科クリニック」を運営する「医療法人みなとみらい」の田中俊一理事長は糖尿病と睡眠時無呼吸症候群の関連性に早くから着目し、法人全体で生活習慣病の進展抑制や合併症予防に努めている。そんな同院でも、糖尿病や生活習慣病、甲状腺疾患と並び、睡眠時無呼吸症候群を診療の柱の一つとしている。「睡眠の質を改善することが、生活習慣病の進行抑制や合併症予防につながります」と話す伊東智浩院長に、詳しい解説を聞いた。
(取材日2024年6月21日)
目次
糖尿病、高血圧を進行させ、心疾患や脳梗塞リスクも高める恐れのある睡眠時無呼吸症候群
- Q生活習慣病と睡眠時無呼吸症候群の関係を教えてください。
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A
▲診察では、患者の生活スタイルを丁寧にヒアリングする
睡眠中の呼吸が弱まったり止まったりすると、血中酸素が低下します。寝ている間でも人体は活動を続けており、活動に必要な酸素が不足することで、なんとかして酸素を取り入れようとするのです。交感神経が優位となり、心臓の働きが促進されて、血圧や脈拍が上がります。すると、心臓や血管に大きな負担がかかり、動脈硬化が促進。心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすい状態になっていきます。また、自律神経リズムが崩れることにより、夜間のインスリン分泌が低下し、血糖値が上昇して糖尿病を進行させてしまう恐れも。バセドウ病、橋本病などがよく知られる甲状腺疾患も関連があり、甲状腺機能低下が睡眠時無呼吸症候群につながるケースもあります。
- Q睡眠時無呼吸症候群が合併症を引き起こすリスクとは?
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A
▲睡眠時無呼吸症候群がさまざまな合併症を引き起こす原因にも
睡眠時無呼吸症候群では呼吸と睡眠が妨げられます。そのため、さまざまな合併症を引き起こすリスクが高まります。呼吸の低下による合併症では、高血圧がよく知られており、これは先述の通り、酸素不足を補おうと心臓の働きが促されるため。インスリン低下による糖尿病もこれにあたります。睡眠時の脈拍が安定せず、不整脈を起こしたり、心臓や血管に負担がかかることから心筋梗塞や心不全を起こす恐れもあります。ダメージを受けた血管は詰まったり破れたりしやすくなり、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などのリスクも高まるでしょう。睡眠不足による合併症では、夜間に体や脳が十分休まらないため、うつ病などの精神疾患を起こすこともあります。
- Q睡眠時無呼吸症候群ではどのような検査を行いますか?
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A
▲精密な検査が行るような体制を整えている
まずはスクリーニングとして、睡眠中にパルスオキシメータで血中酸素濃度を測定する簡易検査を行います。酸素飽和度と脈拍を測定し、記録できる装置をレンタルし、自宅での睡眠時に装着していただく検査です。装置は指先に装着するもので、扱いも容易なので比較的気軽に受けていただけます。簡易検査によりリスクが高いと判断されれば、精密検査をお勧めします。脳波、呼吸、心電図、いびき、血液中の酸素飽和濃度などを一晩を通して連続的に記録する終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査です。グループ内の「みなとみらいクリニック」にて、一泊で検査を受けていただけます。夕方ご来院いただき、夜間の検査を経て、翌朝には日常復帰が可能です。
- Q治療法についても教えてください。
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A
▲治療法は患者によってさまざま
1時間あたりの無呼吸をカウントする無呼吸低呼吸指数(AHI)が40以上の重症になると、CPAP(持続陽圧呼吸)療法が保険適用となります。また、20〜39の方は、治療後に改善が見られるかどうかを検査で再確認することを条件に、保険によるCPAP療法を受けられます。CPAPは、鼻に装着したマスクから圧力をかけた空気を送り込み、空気圧で気道を広げることをめざす対症療法。効果が期待できる方法ではありますが、近眼に対する眼鏡のようなもので、状態の改善をめざせるものではありません。AHI5からの軽症者にはマウスピース療法、CPAPの継続が難しい閉塞性睡眠時無呼吸症候群には舌下神経電気刺激療法もあります。