坂東 勝美 院長の独自取材記事
今里ばんどう眼科
(大阪市東成区/今里駅)
最終更新日:2024/07/22
今里駅より徒歩2分の医療モールにある「今里ばんどう眼科」。白にブルーのアクセントカラーが美しく、洗練された雰囲気のクリニックは2024年5月に開院したばかりだ。明るい笑顔が印象的な坂東勝美院長は、難症例の集まる総合病院で長年手腕を振るってきた経験を持つ。診療ではそれぞれの患者に合わせた納得感を得られる説明を心がけ、「眼科疾患は自覚症状がないことが多く、治療の必要性を感じにくいのですが、丁寧な説明で目を守る意識を育むことで、手遅れになることを避けたいです」と、熱意を見せる。治療では日帰りの白内障手術に対応する他、小児眼科にも注力。乳幼児期からの視力発達にも意識を高く持ち、保護者と二人三脚で子どもの目を守る。患者一人ひとりの歩幅に寄り添う坂東院長に、地域医療にかける思いを聞いた。
(取材日2024年6月21日)
病院でのさまざまな経験を生かし、地元で開業
眼科の医師になったきっかけを教えてください。
幼少期から自立心が強く「手に職をつけたい」と思っており、小学校の時の文集にはすでに「小児科の医師になりたい」と書いてありました。心の底では人の役に立つ医師の姿に憧れを抱いていたのかもしれませんね。その中で眼科を選んだのは、医学生時代にさまざまな診療科を回る中で一番魅力を感じたからです。眼科は小さな診療科ですが、それゆえに一人の医師が診断から手術までこなすことが多く、最初から最後まで患者さんに携われるのがいいなと思いました。また、目という器官はすごく奥が深いと感じました。眼底は、人体で唯一、血管の状態を直接肉眼で観察できます。眼底の血管に異常が起きていれば、眼底以外の血管も同じように異常が起きている可能性が高いのです。つまり、全身の血管の状態が、眼底に反映されるということです。目と高血圧症など全身疾患との間には、深い関連があり、眼底の変化を観察することでそれら疾患の予防に役立ちます。
勤務医時代にさまざまなご経験をされたのですね。
はい。勤務医時代に違和感を覚え来院された方に、網膜の周辺部に多数の出血があり、首の超音波検査をしたら頸動脈狭窄だったケースもあります。ご高齢の方に限らず、見え方に異変を感じたらすぐに受診いただきたいですね。
院長は総合病院での勤務経験も豊富ですが、今里で開院しようと思ったきっかけはあるのでしょうか?
開院前は20年以上、総合病院で勤務をしており、その中の18年ほど大阪けいさつ病院で勤務医をし、先進の医療や難症例などさまざまな知見を深めることができ感謝しています。ただ、総合病院はその性質上、重篤な症状が出た患者さんが来る「最後の砦」的な場所。逆にいえば、もっと早くから治療をしていれば視力を欠うことはなかったのにと感じる患者さんもいました。目の病気は症状を自分で感じづらいこともあり、健診などで異常を指摘されてもピンと来ない方が少なくありません。難しい説明で、深刻さを理解できなかったという方もいます。それがとても残念で、私にできることはないか思案した結果、一次医療にフィールドを変えることを決意しました。開院するなら地元である今里でと思ったので、実現できてうれしいですね。近所には幼少期に通った図書館もあり、思い出の詰まったこの地域で恩返しをできたらと思っています。
丁寧な説明で疑問・不安を解消し、治療を後押し
患者さんの年齢層を教えてください。
乳幼児から90歳以上のご高齢の方まで、幅広く来院していただいています。一般的に眼科は比較的高齢の患者さんが多い診療科なのですが、当院の場合は比較的若い方の比率が高いのが特徴だと思います。おそらく私が女性医師であることが関係しているのか、男性に人見知りしてしまうような小さなお子さんなども多くいらっしゃいます。私も小児眼科に力を入れたいと思っているのでうれしく感じています。もちろんニーズの高いご高齢の患者さんについても、日帰り手術の実施や、患者さんのスピードに合わせて検査できる視野検査機器を導入するなど、どの世代の悩みもカバーする体制を整えています。
小児眼科では、どんなことに注意するべきでしょうか?
子どもの視覚障害は気づかれにくいのが一番の怖さだと思っています。子ども自身が目や見え方に異常を感じてもそれをうまく伝えられなかったり、見えないことに慣れていてそもそも違和感を訴えなかったり、気づかれずに医療につながれないケースは少なくありません。小児眼科での疾患の多くは早期に発見し、治療開始が早いほど良いと考えられますから、まずは保護者の方に知っていただくことが大切です。ただ伝えるだけでなく、患者さんが「わかる」状態になるまで言葉を尽くすのが私にできることなのかなと思います。例えば、近年は近視の低年齢化が話題ですが、ご相談を伺い患者さんに合わせたアドバイスを行っています。
患者さんと接する上で心がけていることがあれば教えてください。
私は早くから治療をしていれば視力を失わない将来も見込めた患者さんを幾人も見てきました。そのような患者さんを減らすためには、ご自身の目を守るという自覚を持ってもらうことが不可欠です。ですから、医師が一方的に話を進めるのではなく、患者さんが納得して治療・診療を受けてもらうことが大切だと思いますね。説明の際は、患者さんがしっかり理解できているかを特に意識しています。例えば、白内障手術では濁って見えづらくなった水晶体を取り除き、眼内レンズを入れることで改善へ導きますが、レンズによって期待できる見え方が異なります。患者さんの「小さな文字が見えるようになりたい」というざっくりした要望をなんとなく受け入れるのではなく、「新聞は隅々まで読みますか」「スーパーで賞味期限はチェックしますか」など、日常生活に照らし合わせて伺うようにしています。患者さんと医師の感覚を合わせることがいい治療の鍵だと思います。
早期治療が明暗を分ける眼科疾患。患者の意識改革が鍵
眼科での仕事でやりがいを感じる瞬間を教えてください。
やりがいを感じる瞬間は、白内障手術後の患者さんの反応を見た時ですね。勤務医時代に白内障で見えづらい状態に慣れてしまい、手術に対し後ろ向きな患者さんがいました。ただ、手術をすれば格段に改善が望めるのになと思っていました。そこで、無理強いは決してしませんが、来院されるたびに丁寧に白内障治療について説明を行い、信頼関係を構築したところ「先生が言うなら受けてみます」と、同意いただいたんです。手術後、暮らし向きが明るくなったと輝いた表情を見せてくれた時は、医師をやっていて良かったと思いました。
反対に、眼科の医師として難しさを感じる瞬間はありますか?
眼科疾患は自覚してもらいにくい病が多いことですね。緑内障や糖尿病網膜症など失明率上位の疾患でも、目は右目と左目で視力や視野を補い合う性質があるため、見えなくなっていることになかなか気づけないんです。この時に病の状況や深刻さを理解してもらえないと、患者さんとしては治療の必要性を感じられず放置することになります。定期的な検診、早期治療が必要だと患者さんの意識を改革していくことが課題であり、私たちの務めだと思いますね。行きつくところは患者さんとの信頼関係なのかなと思います。
受診の目安や、私たちが目の健康を守るためにできることがあれば教えてください。
眼科は早期発見で治療ができる疾患が多いです。ただ、両目で見ていると見え方の異常には気づきにくいので、たまにで良いので片目ずつ見え方を確認してみることをお勧めしていますね。また、進行がゆっくりな緑内障の定期検査の目安は年に1回程度なので、忘れてしまわないよう誕生日の度に検査するなどと覚えていただくといいかもしれません。再三になりますが眼科疾患は早期発見・治療が肝なので、通い続ける意識づけが大切ですね。視力は生活の質に大きく影響を及ぼしますので、違和感を感じたらすぐに来てください。早い判断が20年30年先の楽しみを守ると思って、メンテナンス感覚で治療に取り組んでもらえたら幸いです。