陳 慶祥 院長の独自取材記事
けいしょう内科クリニック
(高槻市/高槻駅)
最終更新日:2024/06/13
JR京都線の高槻駅北口から徒歩9分、阪急京都本線の高槻市駅から徒歩11分の、緑の多い住宅街に2024年5月「けいしょう内科クリニック」が開業した。院長を務めるのは糖尿病・内分泌内科を専門とする陳慶祥(ちん・けいしょう)先生。多くの病院で糖尿病・内分泌内科の診療を経験し、直近の勤務先である高槻病院では糖尿病内分泌内科の立ち上げにも尽力した。イタリア料理店を改装したというクリニックは、白と木目、モスグリーンの配色が特徴的で、開放感がありながら落ち着きを感じさせる空間となっている。クリニック開業の経緯や設備・診療へのこだわり、今後の展望などについて、陳院長に話を聞いた。
(取材日2024年5月28日)
「人の役に立ちたい」と医師の道へ
先生が医師を志したきっかけや糖尿病・内分泌内科を選択した理由を教えてください。
幼い頃から漠然と「人の役に立てるような仕事がしたい」と思っていました。親戚に医師がいたことや、いとこが医学部で学んでいたこともあり、高校生くらいになるとはっきりと「医師になりたい」と思うようになりました。具体的な医師の仕事内容を理解していたわけではないかもしれませんが、わからないなりに「医師はやりがいのある仕事だ」と確信があったんです。専門はなかなか決められなかったのですが、生命の神秘に関心があり、ホルモンや内分泌系を興味深く学んでいました。産科も考えましたが性格的に内科かな、と思い糖尿病・内分泌内科を選択しました。特に糖尿病内科は、医師と患者さんが信頼関係を築きながらともに病気と向き合っていくというイメージを持っていたのも選んだ理由の一つかもしれません。
開業の経緯を教えていただけますか?
大学卒業後、神戸大学の医局に入り、いくつかの病院で勤務してきました。中でも2009年に配属され、丸15年間も診療を続けたのが直近の勤務先である高槻病院です。赴任してきた当時は糖尿病内科などはなく「内科」だったのですが、私の配属と時期を同じくして「糖尿病内分泌内科」として分離しました。この糖尿病内分泌内科をしっかり確立させようと15年間も尽力してきて、どこかやり切った感じもありましたし、患者さんとの信頼関係ができてくるにつれて、異動や定年のある働き方ではなく、自分のペースで長く患者さんと関わっていけたら良いな、と思うようになったのです。2年ほど前から場所探しを始め、高槻病院から目と鼻の先であるこの土地に出合い、開業の運びとなりました。
高槻市は糖尿病を専門とするドクターが少ないと伺いました。
大学病院などの総合病院には専門の医師が多数いますが、クリニックの開業医では少ないと感じます。ここ高槻市は人口35万人くらいなのですが、開業している日本糖尿病学会糖尿病専門医の資格を持つ医師は近隣の市に比べるとまだまだ少ないほうです。大きな病院は安心感はあるかもしれませんが、自分が長年勤務していて思ったのは、待ち時間が非常に長く、患者さんの負担になっているということです。当クリニックでは、待ち時間が短い、医療者と患者さんとの距離が近いというクリニックの良いところを生かしつつ、大規模病院に劣らない、専門性の高い治療を提供していると自負しています。
病院に近い設備と専門性に、クリニックの温かさを
こちらのクリニックは、具体的にどんな特徴がありますか?
例えば、血液検査が院内の機械でできますので、検査当日に結果がお伝えできます。クリニックだとどうしても「後日、結果を聞きに来てください」となってしまうことが多いのですが、当クリニックでは、最短で一般生化学検査だと30分後、甲状腺ホルモンなどの検査でも30分〜40分後には結果をお伝えできます。デバイスも充実を図っており、例えば1型糖尿病でしたら、インスリン注射ではなくインスリンポンプという選択肢があります。インスリンポンプをカニューレという細い針で刺して、持続的にインスリンを注入することができるので、一日何回も注射する必要はありません。血糖値も、センサーを装着しておけば、専用の測定器にスキャンするだけで測定できる機器がありますので、1回ごとに針を刺して血液を出す必要がありません。このように、病院に近い設備もありつつ、親身に診療できるのが強みだと思っています。
先生が、診療で大切にしていることを教えてください。
患者さんも1人の人間であり、それぞれの生活を持っているということを忘れず、同じ立場になって、同じ目線で考えるようにしています。「この薬を飲んでください」と言うことだけが治療ではありませんし、特に、糖尿病治療の食事療法や運動療法だと「このくらいまで制限しましょう」「これだけ運動してください」と言うのは簡単ですが、それが目の前の患者さんにとって現実的でなければ、継続するのは困難です。それぞれの意識や生活スタイルは異なるわけですから、患者さんに合わせて、こうしましょうか? と話し合って決めるようにしていますね。
中国語での診療にも対応していると伺いました。
私は日本生まれですが、祖父母が中国から来ていることもあり、小中学校は中国語学校に通っていました。基本的な中国語は話せますので、日本語が話せない中国の方や、話せるけれど日本語だと不安があるという患者さんには中国語で対応します。病気の診察・治療や生活指導については、しっかりと説明し、確認しなければならないことも多くありますので安心して通院していただけるかと思います。ちなみに病院のシンボルにもなっているマスコットキャラクターは、鍾馗(しょうき)という中国の神様がベースです。疫病神を追い払い、魔を除いてくれるといわれる、日本の疫病封じの妖怪である「アマビエ」のような存在です。鍾馗のイラストに私の顔が描かれています(笑)。
糖尿病は早期発見が大切。小さな異常でも早めの相談を
先生のご経験の中で、印象的なエピソードなどありましたら教えてください。
私がまだ地方の病院にいた頃、1型糖尿病の若い女性がいました。結構な高血糖でしたが将来的には妊娠・出産も希望されているとのことでした。今でしたら食事の糖質量に応じてインスリン量を決定する「カーボカウント」などさまざまなアプローチ方法があるのですが、当時は1型糖尿病治療の黎明期で、治療の選択肢も限られていた時代です。私自身も悩んでいたところ、知り合いの医師から「1型糖尿病患者さんの患者会がある」と案内をいただき、患者さんと参加してみることにしたのです。私自身「患者会」というものが初めてだったのですが、本当にたくさんのことを学ばせていただきました。当事者でないとわからないことや、当事者同士だからこそ生まれる会話ってあるんですね。治療や生活のヒントになることがたくさんあり、その患者さんの治療にも役立てることができました。
今後の展望を教えてください。
クリニックとしては、やはり病院に近い機器や設備を維持しながら、医師や看護師が患者さんに優しく寄り添うアットホームなクリニックでありたいですね。さらに今後は、骨粗しょう症や小児の糖尿病・内分泌疾患などにも力を入れていきたいと思っています。骨粗しょう症は、糖尿病などの内科疾患に併存しやすく、転倒・骨折が要介護や寝たきりとなる原因の第4位となっているという背景があります。最近は薬の選択肢もいろいろありますので、ぜひ早めにご相談いただけたらと思います。糖尿病・内分泌疾患は、小学校高学年くらいから対応するようにしています。治療は成人患者さんと大きくは変わりませんが、できる限り本人にも理解いただけるよう説明したいと思いますし、本人だけでなく保護者へのサポートも必要です。医師だけでなく看護師などとのチーム医療で、きめ細かな対応ができたらと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
糖尿病は、早期発見・早期治療が大きなポイントであるにもかかわらず、初期には症状がほとんどありません。だからこそ、健康診断で引っかかった方は「軽度異常」などでも一度、専門の医療機関に相談することをお勧めします。また、医師との信頼関係が問われる疾患でもありますので、現在すでに通院している方も、もし今の病院やクリニックでしっくり来ないと感じていたら、試しに別の医療機関で話を聞いてみるのも良いかと思います。健康診断や人間ドックで精査が必要と言われた人や、「疲れやすい」「喉が渇く」など「こんなことで受診して良いのかな」というちょっとした不調や違和感でも幅広く相談に乗りますので、お気軽にいらしていただけたらと思います。