古川 皓一 院長の独自取材記事
山の手内科クリニック
(神戸市中央区/大倉山駅)
最終更新日:2024/09/25
2024年5月に開業した「山の手内科クリニック」。大倉山駅の東側に位置する同院は、近くに小川や公園がある自然豊かなエリアにありながらも、ドラッグストアが隣接する地域住民の生活の中心となる場だ。「あそこなら何でも診てもらえると、このエリアで頼りにされるクリニックになりたい」と話すのは、院長を務める古川皓一先生。優しい笑顔が印象的な古川院長だが、これまで救急医療や呼吸器疾患を専門として厳しい現場で数多くの研鑽を積んできた。その経験から「最初から適切な診断をつける」ことの重要性を痛感し、CTが設置されているのが特徴だ。「病気の早期発見をめざし、地域の健康寿命延伸に寄与していきたい」と話す古川院長にクリニックのこだわりや診療時の心がけなど、たっぷりと話を聞いた。
(取材日2024年5月30日/情報更新日2024年9月19日)
総合的に診断・治療する内科診療を提供
2024年5月に新しくオープンしたそうですね。クリニックの特徴を教えてください。
当院は総合内科を軸に、呼吸器内科、アレルギー科を標榜し、地域のかかりつけ医として幅広い診療を行っています。「総合内科」とは病気を一つ一つ捉えるのではなく、患者さん一人ひとりを診ようという考えに基づいた診療分野です。超高齢社会では複数疾患を持った人は大勢いますし、また症状が同じでも原因まで同じとは限りません。総合的に診て適切な治療に結びつけることはもちろん、長年にわたり経過をフォローしたり、他の病気の予防や早期発見に努めたりするのも、私たちの重要な役割です。呼吸器疾患に関しては慢性疾患や術後フォロー、経過観察など専門的な治療にも対応しています。近隣には小児科が少ないことから、咳や痰、喘鳴など呼吸器症状のある2歳以上のお子さんの診療も行っており、必要時はレントゲンやCT撮影、ネブライザーも実施できます。
CT検査が受けられる内科クリニックは珍しいのではないでしょうか。
私はこれまで内科救急や呼吸器内科を診療してきました。そういった現場ではいち早く原因を見つけることや見落としなく慎重に原因追究することが求められます。患者さんが本当の意味で安心できる医療を提供するには、それ相当の検査設備が必要だと考え、開業時からのCT設置は譲れないと思っていました。特に私が専門とする呼吸器疾患では、肺を画像で診断する際にCT撮影は欠かせません。エックス線撮影だけでは肺の裏側まで映らず、病変が潜んでいることも少なくないからです。またCTは大腸がん、胃がん、心疾患、脂肪肝など、さまざまな病変発見に役立ちます。画像は神戸大学医学部附属病院の放射線部の医師とダブルチェックを行って、見落としを防いでいます。総合病院まで通わなくても、近くにCT検査ができる施設があることは、地域の人にとっても大きな安心材料だと思います。
他に、院内のこだわりを教えてください。
CT検査だけでなく、心電図検査や動脈硬化検査、超音波検査、肺機能検査など、検査には注力しています。また発熱した患者さんを診察するための外来専用の部屋を設けました。一般の患者さんとは動線や入り口も別なので、その部屋の中で検査から診察、会計まで完結できます。院内はバリアフリー設計で、車いすやベビ―カーのままでもスムーズに移動ができ、予約は事前予約も当日順番予約もできるシステムを導入しています。何より患者さんがリラックスして通院できるよう院内はカフェのような雰囲気にし、受診しやすい環境を整えました。
患者の治療を二人三脚でサポートしていく
これまでのご経歴についてもお聞かせください。
神戸大学を卒業後は、淀川キリスト教病院の救急科や呼吸器内科、神戸大学医学部附属病院の総合内科・呼吸器内科で臨床経験を積んできました。内科救急には複数疾患があったり、いくつもの病院に通院していて主治医がわからなかったりと、状況や情報が混乱した患者さんが昼夜を問わず数多く搬送されてきました。また呼吸器内科では、そもそも呼吸器を専門とするクリニックが少ないこともあって、十分な診療がなされていないケースもたびたび見受けられました。中には肺がんが進行し、苦しそうにされる中で手を施せなかった患者さんも少なくありませんでした。こういった患者さんを見るたびに、長く患者さんに寄り添うかかりつけ医の存在の必要性や、一定の水準までしっかりと診られるクリニックが町になくてはならないと強く感じていました。
開業のきっかけを伺えますか?
そういった数々の経験を通して、開業するタイミングになったと思ったからです。もともと私の夢は「町の内科クリニックの先生」でした。初めに救急医療に進んだのも、「何でも診療できるようになって、いつか自分のクリニックを持ちたい」と考えていたからです。子どもの頃に出会った、聴診器一つで幅広く診られる内科の先生は「かっこいい」存在でした。今の私は聴診器一つで何でも、とまではいえませんが、地域医療の中で患者さん一人ひとりをしっかり診ていきたい。そして「この先生にずっと診てもらいたい」と思っていただける医師になっていきたいですね。
診療する上で大切にしていることを教えてください。
治療では、患者さんと二人三脚で一緒に取り組んでいくことを大切にしています。病気には一時的なものもありますが、糖尿病や高血圧症、肺の結節影が見られる場合など、状態をコントロールするものや見守っていくような治療もあります。またこういった治療は、「なぜこの治療が必要なのか」「どうしてお薬を飲んでいるのか」をしっかりと理解してもらっていないと、状態が改善したら通院を止めたり、薬を飲まなくなったりして、以前より悪化してしまうこともあります。「状態が良くなっているのに、まだお薬を飲む必要があるの?」と疑問に思う患者さんの気持ちもわかります。そういった時には否定するのではなく、患者さんの心情に寄り添い、互いに譲れるところは譲り合って治療計画を立てていきます。そして小さな疑問も気軽に質問できる、そんな関係づくりも大切にしています。
信頼関係を築き、その人のかかりつけ医をめざす
患者さんと信頼関係を築く上で、工夫していることはありますか?
はい。例えば、カルテには患者さんが好きなものや最近始めた趣味なども書き込んでいるんですよ。日頃から医療とは関係のない話をするなど、患者さんとのコミュニケーションを意識しています。些細な会話から治療へのヒントや病気の芽を見つけることもありますから、対話は重要です。また検査結果や治療のパンフレットなどがあればお渡ししてます。重要なところには丸印をつけたり、コメントを書き込んだりすることも多いですね。ご自宅に帰ってからご家族ともう一度振り返ってもらえれば、さらに治療への理解も深まると考えています。院内にデジタルサイネージで健康に関する情報や検診のお知らせを流しているのも、治療への理解を深めてもらいたいから。ちょっとした気づきがその人の健康につながっていけばうれしいですね。
さまざまな取り組みで、予防や早期発見に力を入れていらっしゃるのですね。
「健康」は生活の一番根底にあって一番大事なところです。健康だから仕事ができるし、遊びや趣味も楽しめる。ですが、健康は見えないし形もないので、ついつい軽視されがちです。失って初めてその重要性に気づくのですが、そうならないためにも、皆さんにはかかりつけ医を持っていてほしいですね。治療や検診はもちろん、ちょっとした健康のアドバイスをもらったり、今後に必要となる治療の相談もできたりと、自分以外に自分の健康をサポートしてくれる人がかかりつけ医です。そして同時に、もっと自分の健康に目を向けてあげてほしいと思います。患者さんの健康寿命を一緒になって延ばしていければと思います。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
当院は体のことだけでなく、その人の心や大事にしている生活まで考慮して、病気やお体のことを一緒に考えていくパートナーでありたいと思っています。どんな些細なことでもご相談いただければ、私にできることは責任を持って治療します。また当院でできない治療の場合にも、連携する病院を紹介するなど、最後まで寄り添って、かかりつけ医として道を示したいと思っています。クリニック名を自分の名前ではなく、この周辺の地域の名称から取ったのも、地域に根差していきたいという思いから。たくさんの人が「あそこに診てもらえば大丈夫」と安心して通えるクリニックをめざしますので、気がかりなことがあれば、いつでも相談にお越しください。