藤本 佳史 院長の独自取材記事
言の葉こころクリニック
(さいたま市浦和区/北浦和駅)
最終更新日:2026/07/17
2024年、北浦和駅西口前に開業した「言の葉こころクリニック」。「言葉は不完全であるがゆえに人を傷つけてしまうこともありますが、心の痛みや悩みを和らげる力も秘めています」。そう静かに話す院長の藤本佳史先生の姿には、言葉の重みを深く知る者ならではの温かさがにじむ。母が心の病を患っていたことをきっかけに精神科医を志し、病院勤務で子どもから高齢者まで幅広い年齢層を診療しながら研鑽を重ねてきた。妻に背中を押され、「地域でより多くの方を支えたい」と開業を決意。患者の半数は小中高生。地域の子どもたちを支える役割を担いつつ、幅広い世代に寄り添う藤本院長にその歩みと、診療にかける思いを聞いた。
(取材日2026年6月18日)
子どもを中心に、多世代のメンタルケアを担う
医師を志されたきっかけと開業への思いをお聞かせください。

19歳の時、母親がうつ病で自死したことが、医師をめざすきっかけでした。今でも診療中、患者さんやご家族が苦しんだり悩まれたりしている姿にふれると、自分の家族のことが頭の中で重なってしまい、言葉に詰まってしまうことが時々あります。それでも、自分の経験が診療の中で生かされている部分があれば良いなと思っています。私は精神科病院で長年勤務し、たくさんの患者さんと向き合ってまいりました。「地域の皆さまのために何かお役に立てないか」と考えていたところ、妻が「この地域で命を救うお手伝いをしてみたら」と提案し背中を押してくれました。さいたま市で育ち、北浦和の高校に通っていたということもあり、この地元で開業しております。妻も現在、ご家族・お子さまたちを中心に不登校などにお悩みの方々のご相談業務・カウンセリング業務・事務長業務を行っております。
開業されるまでのキャリアについてより詳しく伺えますか?
まずは埼玉県内の精神科単科病院で幅広い年代の精神科医療に携わりました。次第に小中学生にもきちんと向き合えるようになりたいという思いが募り、群馬県内の病院に移って児童精神科医療を学びました。実際のところ、小中学生を診る精神科のクリニックは非常に少なく、当院もさいたま市でそうした診療を担うクリニックの一つになっているように思います。だからこそ地域で求められている役割は大きいと感じていますし、勤務医時代よりも多くの方と向き合えることに、開業医としてのやりがいを実感しています。
どのような方が来院されていますか? 受診の目安も併せて教えてください。

現在、当院に通われている患者さんの半数が小中高生で、大人の方も働き盛りの世代からご年配の方まで幅広い年代の方がいらっしゃいます。ありがたいことに埼玉県外から足を運んでくださる方も増えました。受診のタイミングについてですが、精神科領域は体温や血糖値のように数値化しにくく、どこまでが日常の悩みでどこからが受診レベルなのか判断が難しい分野です。ですので、「実際のところ自分は精神科治療の対象なのだろうか」という疑問も含めて、まずは専門家に投げかけていただけたらと考えています。結果として診断名がつかないケースもまれにございますが、正確な情報を専門家から得られること自体に大きな意味があると思っています。今はインターネットで気軽に情報を得ることができますが、そこには正確ではない内容も数多く含まれています。不安を払拭するためにも、最初に専門機関につながることが何より大事なんです。
言葉の力を信じて信頼関係を築き、心に届く診療を
クリニック名に込められた思いを伺えますか?

「言の葉こころクリニック」という名前のアイデアは家族がくれました。言葉というのは不完全であるがゆえに人を傷つけてしまうこともありますが、一方で心の痛みや悩みを和らげる力も秘めていると私は思っています。一人の人間としても、心の専門家としても、その力を信じて診療にあたりたいという思いがクリニック名に込められています。院内ではプライバシーに配慮し、お名前ではなく番号札でお呼びする仕組みを取り入れました。お手洗いも広めに設計し、お子さん連れの方や閉鎖的な空間が苦手な方にも安心してお使いいただけるようにしています。温かみのあるクリニックづくりを大切にしています。
児童精神科を専門とする医師として、保護者の方に伝えたいことはありますか?
発達の特性について、インターネットや周囲の言葉に影響されて不安を抱え込んでしまう親御さんがとても多いと感じています。確かに日本の学校教育にはまだ画一的な面が残っていて、特性のあるお子さんが肩身の狭い思いをすることもあるかもしれません。ただ、その特性ゆえに好きなことに熱中し、秀でた才能を開花させるお子さんも多く、将来はまるものが見つかれば、その特性がむしろ強みになる可能性は十分にあります。不登校についても、それ自体は病気ではありませんが、背景に不安やうつの症状が隠れている場合もあり、精神科として寄り添えることは少なくありません。一人ひとりに丁寧に向き合う診療を十分に確保したいという思いを胸に診療に向き合っております。それゆえに初診のご予約にお時間を頂くこともございますが、ネットの情報だけで判断せず、まずは専門家にご相談いただければと思います。
先生ご自身にも、誰かの言葉に支えられた経験がおありなのですか?

20代の頃、私自身がとても苦しい時期を過ごしていた時に、恩師からかけていただいた言葉があります。「今はつらさの波に揺られて、プカプカ浮いていてつらいかもしれないけれど、その波がいずれ岸に君を連れていってくれる。状況は必ず変わるものだ」と。信頼できるその方が言うのだから、単なる例え話ではなくて、きっとそうなのだろうと思えたのです。言葉が届くかどうかは、そこに信頼関係があるかどうかにかかっているのだと、あの時学びました。精神科医になってからも、家族や仲間の何げない一言に助けられたことが何度もあります。あの恩師のように、長い信頼関係の中で患者さんの心に届く言葉を大切にしたいと思っています。
「来てよかった」と思える場所をめざして
患者さんやご家族と向き合う上で、大切にされていることをお聞かせください。

なるべく穏やかで温かみのある雰囲気や言葉遣いで診療することを心がけています。限られた時間でもポイントを押さえ、精神症状を見落とさないよう注意を払い、「ここに来てよかった、何とかなりそうだ」と感じていただけることが目標です。お薬は症状に応じてご提案しますが、処方せずに経過を見ていくケースもございます。初診で一番大事なことが語られないことも珍しくなく、無意識にふたをしていることもあるため、信頼関係を築きながら機が熟すタイミングを待つことも大切にしています。お子さんの場合は、親御さんとお子さん双方の思いを中立の立場で受け止めるよう意識しています。親御さんへのサポートが、お子さんの環境改善につながることも少なくありません。
カウンセリングと診察の違いについてもお聞かせいただけますか?
診察で医師にしかできないのは、最終的な診断をつけることと、必要に応じてお薬の処方箋を発行することです。お薬に対して不安を感じる方もいらっしゃいますが、適切に使用できるようしっかりとご説明を行いますので、気になることは遠慮なくご相談ください。カウンセリングは公認心理師や臨床心理士が一回50分の枠でじっくりお話を伺う自由診療の対応です。診察だけでは整理しきれない課題がある場合に、私からご提案することもあれば、患者さんご自身が希望されることもあります。当院の特色として小中高生のカウンセリングにも対応しています。
最後に、読者の方へメッセージと今後の展望をお願いいたします。

地域に根差した温かみのあるクリニックをつくりたいという思いは、私たち夫婦に共通するものです。今後も患者さんの声を大切にし、謙虚な気持ちで地域への貢献を続けてまいります。クリニックスタッフにたいへん恵まれており、日々感謝しております。「チーム言の葉」で一丸となり、「来てよかった」と感じていただける場所をめざしていきます。
自由診療費用の目安
自由診療とはカウンセリング/5500円

