全身麻酔下歯科診療によって
歯科が怖い子や障害児の治療を可能に
あさがおこども歯科クリニック
(尾張旭市/三郷駅)
最終更新日:2024/11/05


- 保険診療
ADHD、自閉スペクトラム症などの発達障害の子どもや、歯科医院に強い恐怖心を抱く子どもたちは、歯科治療を受けること自体がとても難しいという。しかし、彼らを無理に押さえつけて治療することで新たな恐怖につながってしまう。そこで注目されているのが全身麻酔下歯科治療である。日本ではまだ浸透していないが、尾張旭市晴丘の「あさがおこども歯科クリニック」では、小児や障害児を対象に日帰り全身麻酔による歯科治療を行っている。日本専門医機構麻酔科専門医の安田吉孝先生と日本歯科麻酔学会歯科麻酔専門医の宮本泰周先生がタッグを組み、安全かつ患者に負担をかけない治療を追求しているのだ。歯科医療から恐怖を取り除くことに尽力する宮本先生と安田先生に、全身麻酔下歯科治療のメリットやデメリット、対象年齢や費用などを聞いた。
(取材日2024年10月1日)
目次
全身疾患に精通した麻酔科医師の管理のもと、安全性に十分配慮して行われる全身麻酔下の歯科治療
- Q全身麻酔下歯科治療とは、どのような治療を指しますか?
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A
▲日本専門医機構認定麻酔科専門医の安田先生
【安田先生】全身麻酔下で眠ったまま歯科治療を行えるようにするもので、一般的には抜歯など出血を伴う手術で活用されます。欧米では広く浸透した治療法なのですが、日本ではまだ少ないのが現状です。当院の全身麻酔は、大学病院で行われるものと同等で、用いる薬剤もほとんど同じです。事前の診察でしっかり検討し、診療後の様子などもヒアリングして、より合う麻酔薬を選定します。診療室は完全個室で、全身麻酔器と生体モニターは各3台ずつそろえています。さらに、すべての診療室には酸素や笑気ガスを安全に供給するための配管を設置しています。万が一急変した場合にも適切に対応できるよう、救急関連のツールもそろえています。
- Qどのような方を対象としていますか?
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A
▲全身麻酔を行うことで怖い思いをすることなく治療ができる
【宮本先生】歯科医院が怖くて治療できないお子さん、自閉スペクトラム症や発達障害のために意思疎通や診療中診療チェアに座り続けるのが難しいお子さん、嘔吐反射や過剰歯があるお子さんですね。年齢は、安全面を考慮して5歳から18歳までを対象としています。ほかのクリニックからの紹介も多く、嫌がって暴れてしまうような患者さんがいたとしても、お断りせず受け入れる体制を整えています。当院では、過剰歯抜歯にも積極的に対応しているため、その相談も多いです。過剰歯抜歯は通常、口腔外科での入院が必要になりますが、当院では日帰りで対応しています。
- Qこの治療を受けることのメリットを教えてください。
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A
▲日本歯科麻酔学会歯科麻酔専門医の宮本先生
【宮本先生】眠っている間に治療を行うことがめざせることです。また、歯科治療中の記憶が残らないため、歯科治療恐怖症のお子さんを治療することも可能です。同時に、歯科治療におけるトラウマを極力減らすことにつながります。最大のメリットは確実に歯科治療が進むということですね。歯科治療が怖いお子さんは一般的にトレーニングをして徐々に治療に慣れてもらうことが必要ですが、その間にも虫歯は進行します。全身麻酔での治療は慣れてもらう必要がありませんから、すぐに歯科治療が可能です。乳歯であればどんなに虫歯が多くても2ヵ月以内での完治をめざしています。
- Q逆に、この治療を受けることのデメリットはありますか?
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A
▲治療後の休息中も安田先生が回診を行う
【安田先生】デメリットとして、絶食・絶飲期間が必要なこと、挿管・点滴を行うこと、帰宅まで安静期間が必要なことが挙げられます。また、ごくまれに全身麻酔の合併症・偶発症が発生することがあります。とはいえ、重篤な状態に陥る確率は非常に低いとされています。当院では麻酔に関する説明は、すべて私が担当しています。初めに具体的な確率の数字を詳細に説明し、同意を取った上で治療に進みます。また、受診前にもある程度基礎知識や治療の流れを理解していただきたいと考えているため、当院のウェブサイトに、世界における全身麻酔下での歯科治療の普及に関するデータや、治療の流れの解説動画などを掲載しています。
- Qこの治療にかかる費用はどのくらいになりますか?
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A
▲気軽に相談してほしいと話す
【宮本先生】基本的に自己負担金はありません。県外からお越しの方は一部負担金が発生しますが、お住まいの役所で手続きすればすべて返金されます。当院では自由診療での全身麻酔は一切行っておらず、すべて小児患者さんの保険診療のみを取り扱っています。もちろん保険診療といっても、全身麻酔は安全面に十分配慮して行っています。特にお子さんには懸念されるような合併症がほとんど見られないとされていますから、親御さんが想像するような危険性は低いと考えて良いと思います。疑問に思うことや、不安がある方は、どんな質問にもしっかりとお答えいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。