石崎 嘉宏 院長の独自取材記事
前橋フォレスト内科外科クリニック
(前橋市/新前橋駅)
最終更新日:2024/07/24

「体調が良くないけれど、どこを受診すればいいかわからない」というのは、誰しも経験があるのではないだろうか。そんな困り事に寄り添う診療を実践しているのが、「前橋フォレスト内科外科クリニック」だ。新前橋駅から徒歩10分のショッピングセンター「フォレストモール新前橋」の敷地内に2024年4月に開業。内科と外科を標榜し、風邪や腹痛から、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、心臓病、花粉症、喘息、めまい、外傷まで、あらゆる疾患や不調を幅広く診療している。診療科の垣根を越えた診療が可能なのは、石崎嘉宏院長が内科、外科、救命救急と横断的にキャリアを積み重ねてきた総合診療のエキスパートだからだ。どこまでも静かで穏やかな石崎院長に、クリニックの特徴や診療にかける思いを聞いた。
(取材日2024年6月24日)
領域にとらわれず、幅広く診る地域のホームドクター
外科と内科を併設されているクリニックは珍しいと思います。コンセプトを教えていただけますか?

当院がめざしているのは、内科・外科の垣根を越えて総合的に診療する「総合クリニック」です。実は私は子どもの頃から体が弱く、長い間病院に通っていました。医療資源の少ない地域だったので、あちこち通わなくてはならず、大変だったことを覚えています。そういう経験から、1つの場所で医療が完結したほうが患者さんにとって便利ではないかと考えました。どんな症状でも幅広く診療することができる地域のホームドクターとして、総合的な医療を提供していきたいと考えています。総合病院並みの機能を持たせるために検査設備にも力を入れており、心臓・腹部の超音波検査装置や被ばく量の少ない低侵襲のCT検査装置を導入しています。また、15分おきに自動換気ができる換気システムや発熱患者さん用の隔離室を設けるなど、感染症対策も徹底していますので、安心してご来院いただければと思います。
内科も外科も先生がお一人で診ていらっしゃるんですか?
医師である妻にも手伝ってもらっていますが、基本的にはすべて私が診ています。私は埼玉医科大学医学部を卒業後、埼玉県の深谷赤十字病院の小児外科や消化器外科で、約10年間、外科医としての研鑽を積みました。その後、同病院の救命救急センターで、急病人や交通事故などあらゆる症例に携わり、何の情報もないところから瞬時に決断して適切な治療を行うことに尽力してきました。2014年からは東埼玉総合病院の救急センターの立ち上げに参画し、センター長・救急部長を務めました。内科・外科・救急を総合的に診療しながら、新型コロナウィルス感染症の流行時には感染症の集中診療にも関わっています。そのほか、形成外科や皮膚科、整形外科の経験もあるので、ほとんどの領域において、ある程度の診療ができると自負しています。
どのような患者さんがいらっしゃっていますか?

2歳くらいの小さなお子さんから90歳代のお年寄りまで、幅広い世代の方にいらしていただいています。風邪やインフルエンザ、喘息などの呼吸器疾患をはじめ、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病をお持ちの方も多いですね。腹痛や下痢などの消化器症状で受診される方もいますし、切り傷ややけど、捻挫などでいらっしゃる方もいます。簡単な処置や縫合は当院でも行えますし、必要に応じて連携の医療機関にご紹介します。また、各種の予防接種や健康診断、心身のバランスを崩された方の仕事復帰に向けてのサポートなどもさせていただいています。
押しつけではなく、患者一人ひとりに寄り添う医療を
新型コロナウイルス感染症の罹患後症状で受診される方も多いそうですね。

はい。新型コロナウイルス感染症に罹患して、その後もずっと不調が続いている人がいらっしゃいます。周囲からさぼっていると見なされたり、医師に「うちでは診られない」「気にしすぎでしょう」などと言われたりして、深い心の傷を負っている方が多いんですね。ですから、やはりじっくり話を聞いて、患者さんの状況を理解することが大事だと考えています。そして、どのような治療法があるかを提案して、まずはここからやってみましょうと、次はこれをやってみましょう、と経過を見ながらその都度対策を考え、それを繰り返しながら、少しずつ社会復帰をめざしていくというようなサポートをしています。
開業を決意したきっかけは?
自分が理想とする医療を実現しようとすると、総合病院という大きな組織の中では、やはり限界があるなと感じるようになったんです。主に入院が必要な重症患者さんの診療を担う総合病院では、病院の方針で軽症の患者さんの受け入れはお断りせざるを得ないこともあります。結局、受け入れ先が見つからず、数時間後に搬送されてきたときには、病状が悪化していたというケースもありました。自分が理想とする医療とのギャップを感じることが増えて、それならば自分でできるところまでやってみようと開業を決意しました。
先生が理想とされている医療とはどのようなものでしょうか。

患者さん一人ひとりに寄り添って、その人にとって最も良い治療法をご提案したいと考えています。主訴を聞いただけですぐに薬を処方したり、「こうしなさい」と治療法を押しつけたりするようなことはしたくないんですよ。医師は治療方針を決めることはできますが、それは患者さんにとっては嫌なことかもしれません。教科書的には正しい治療方針だとしても、患者さんにとって嫌なことであれば長続きしないでしょう。嫌なことを押しつけられたら患者さんは心を開かないばかりか、来なくなってしまって病状が悪化してしまうこともあります。それは避けたいんですね。ですから、なるべくその方のライフスタイルを崩さないよう、長く続けられるような方法をご提案して、一緒に治療の階段を上っていくという関係を築きたいと考えています。そのほうが治療の上でもプラスになるのではないかと思いますね。
小さなことも耳を傾け、躊躇せずに話せる場所に
日々の診療で大切にされていることを教えてください。

患者さん一人ひとりに寄り添うためには、まず話を聞くことを大切にしています。特に初診は時間をかけています。例えば、小さなお子さんは、そもそも言葉で自分の症状を説明するのがうまくできないので、話を引き出す難しさがあります。また、性格的な難しさもありますね。診てもらいたいけれども、初対面の医師にこんなことまで話していいんだろうかと躊躇してしまう方は、意外に多いんですよ。けれども、最初の段階で、なんでもお話ししてもらえるような信頼関係を築かないと、その後もやっぱりうまくいかないんですね。ですから、患者さんを嫌な気持ちにさせずに、いかに踏み込んで本心を聞き出すかが大事だと思っています。また、雑談の中にも診断のヒントが隠れていることもありますので、小さなことも耳を傾けるようにしています。話を聞くだけですっきりされる方もいらっしゃいますし、やはり話を聞いて初めてたどり着ける境地があると思っています。
話を聞くのはもともと得意だったのですか?
医師になったばかりの頃、精神科や心療内科で実習を受けたことで、患者さんの話を聞くというベースができたのだと思います。一刻一秒を争う救急の現場では、声の大きいアグレッシブな先生が多いのですが、私はそうではないので、救急では非常に珍しいタイプだと言われていました(笑)。ただ、若い頃は自分に余裕がなかったので周囲に対する物言いがきつくなることもあったと思います。自分自身が変わるきっかけになったのが、「怒るのと叱るのは違う」という恩師の言葉です。何かあったときに怒ったり怒鳴ったりしても、たいていの場合、元に戻るわけではないんですよね。ですから、部下の指導をするときも、怒らずに叱る、淡々と伝えることを意識していました。そのほうが、本人が「どうしてこうなったんだろう」「どうすれば良いのか」と考える時間が持てますし、その後の人間関係も良くなると思います。どうせなら皆で楽しくやれるほうがいいですから。
怒らない先生になら、安心して話せそうですね(笑)。最後に読者へのメッセージをお願いします。

患者さんがよく「こんなことで受診していいんでしょうか」とおっしゃるんですが、「こんなこと」なんて一つもないんです。どんなに小さなことでも、気になることや不安なことがあれば、迷わずにご相談ください。当院でできることは精いっぱいの努力をしますし、難しいと判断すれば適切な医療機関をご紹介しています。お気軽にいらしていただければと思います。