腎不全による人工透析では
シャント手術とメンテナンスが重要
みんなの血管外科池袋
(豊島区/池袋駅)
最終更新日:2024/05/14


- 保険診療
腎不全により人工透析を受けている患者は2022年末現在、約35万人にも上ったという。年間およそ4万人の新規導入患者もいるなど、決して珍しい疾患とはいえない状況である。もし人工透析が必要になったなら、ダイアライザー(人工腎臓)とつなぐためのシャントという特殊な血管の手術が必要になるそうだ。これまで数多くのシャント手術を手がけてきた「みんなの血管外科池袋」の服部努院長は「人工透析ではシャントのクオリティーが非常に重要です。また、基本的には年間約300ヵ所も針を刺すわけですから、いかに問題を見逃さずメンテナンスしていくかも問われます」と力を込める。そもそも腎不全とはどのような疾患なのかや、その治療法について服部院長に詳しく聞いた。
(取材日2024年4月15日)
目次
腎不全から人工透析のためのシャントが必要になったら、手術からメンテナンスまでしっかり行うクリニックへ
- Q腎不全とはどんな疾患なのでしょうか?
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A
▲血管外科のエキスパートである服部院長
腎臓には体内の老廃物を血液からろ過して尿として外に出す働きがあります。この機能が破綻して老廃物を十分に排出できない状態が腎不全です。移植のために提供するなど、腎臓が1つの状態でも健康に過ごしている方もいるので、2つそろっているにもかかわらず健康診断などで腎機能低下を指摘されるというのは放置できない状況だと考えられます。自覚症状はほとんどないのに加えて、新型コロナウイルス感染症や胃腸炎などへの感染が引き金となって一気に悪化する例も少なくありません。慢性腎不全から腎機能が回復する見込みはかなり低いので、腎臓のろ過率がガイドラインで定められた数値を下回ったら、人工透析の準備の開始が推奨されています。
- Q次に透析について教えてください。
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A
▲少しでも安心してもらえるように丁寧に説明する
透析とは24時間365日休まずに腎臓がやっている仕事を、ダイアライザー(人工腎臓)という医療機器で代替する治療になります。本当は1日10時間くらい行ったほうがしっかりとした老廃物の排出が期待できるのですが、生活との兼ね合いもありますし、週に3日、4時間かけて行うというペースが一般的です。透析では、すべての血液を体外に出して、ダイアライザーでろ過し再び体内に戻していきます。1分間で200~300ccの血液をダイアライザーに流し込む必要があり、それには静脈レベルの勢いでは足りません。そこで、シャントという特殊な血管の手術が必要となるのです。
- Qシャントとはどのようなものですか?
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A
▲一人ひとり異なるシャントを形成するため、繊細な手術が行われる
シャントとは脈を取る時に使う動脈を静脈とつなげて、静脈であるにもかかわらず動脈レベルの血流を確保した血管のことです。ここに人工透析の入り口用と出口用に2本の針を刺していきます。まれに点滴などを繰り返していて腕の静脈が廃絶している方もいるので、人工血管を使うこともあります。いずれにせよ、手術前にしっかりと血管の細さや血流を検査した上で、一人ひとりに適切なシャントを形成していく非常に繊細な手術です。さらに、正しいシャントを作ればそれでおしまいではなく、問題なく機能するようにしっかりとメンテナンスをしていくことも欠かせません。
- Qシャントはメンテナンスがなぜ必要なのでしょうか?
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A
▲清潔感のある手術室
人工透析に使う針は献血で使用するような太いタイプで、これが基本的に週に6ヵ所、年間300ヵ所ほど刺さるシャントには大きな負担がかかっています。平均して3年で7割、人工血管に至っては1年で約半数の方に、詰まりなどの何らかのトラブルが起きるといわれています。だからこそ定期的なメンテナンスが重要なのです。具体的には超音波検査でシャントの細さを見たり、しかるべき血流量をキープできているかを調べたりします。シャントが少し細くなってきたかなという段階で介入できれば大事にはならず、患者さんの負担も軽減できるでしょう。シャントを形成して1ヵ月過ぎたところで検査をして、問題がなければ半年ごとに確認していきます。
- Qシャントのメンテナンスではどんなことをしますか?
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A
▲治療後も定期的に通院を推奨する
超音波検査でシャントが細くなっている部分を早くに見つけられれば、バルーンカテーテルで拡張することも望めます。バルーンはさまざまなサイズがあり、内部にカッターが埋め込んであってシャントに亀裂を入れられるものや、小さな血の塊をところてんのように押し出すことができるものなどがあります。ただ、ひどくなるまで放置しているとシャントの作り直しということにもなりかねないので、必ず定期的にクリニックでチェックするようにしてください。