症状の根源にアプローチ
漢方医学で心身の不調の改善をめざす
あまいろクリニック 飯塚
(飯塚市/新飯塚駅)
最終更新日:2024/11/15


- 保険診療
漢方内科とは、主に漢方薬を用いて、さまざまな症状や病気の改善をめざす診療科だ。「あまいろクリニック飯塚」の後藤雄輔院長は、内科分野に加え、東洋医学の研鑽も積んだ日本東洋医学会漢方専門医。心と体は互いに影響を受けやすく、身体的な疾患が精神的苦痛となる一方で、精神的なストレスや強い不安が原因で不眠、肩凝り、頭痛、消化器疾患など、多種多様な不調につながることが少なくない。そんな慢性化しやすい数々の不調を未然に防ぐ予防医学の側面も持つ漢方治療。内科、皮膚科、小児科、婦人科など、診療科問わず幅広い症状に適用できるとして注目されているが、近年は誤った認識も増えているという。そこで今回、正しい情報を発信すべく、漢方の専門家である後藤院長に話を聞いた。
(取材日2024年5月1日)
目次
さまざまな心身の不調に働きかける漢方薬。市販薬に頼ったり自己判断したりせずに、まずは専門家に相談を
- Qまずは、漢方の特徴について教えてください。
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A
▲漢方薬はさまざまな効果が期待できる
漢方の特徴として「体に優しい薬」というイメージをお持ちの方が多くいらっしゃいますが、実は誤解であることをまずお伝えしたいですね。漢方はあくまでも薬であって、副作用もあります。そのため、安易に服用すると有害作用も起こり得ることを認識した上で使用することが大切です。単に症状に対して処方するという考えだと副作用を起こしかねませんので、その方の体質、体の状態、疾患等を把握した上で処方することが大前提です。また、漢方は緩やかに作用する印象を持たれがちですが、即効性が見込めるものもたくさんあります。例えば、風邪、腹痛、嘔吐下痢症などに対しては、即効性を期待して使用します。
- Qメリットとデメリットについてもお聞かせいただけますか?
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A
▲メリットもあるが、副作用の可能性も。その人に適した処方を選ぶ
メリットは、診療科問わず、赤ちゃんから高齢者まで服用できること。1つの成分が一気に入るのではなく、複合成分が少しずつ体に入ってくるため、お子さんに使いやすいのもメリットです。現代医学では、複数の自覚症状や疾患があると、それぞれに対する薬を処方することが多いですが、漢方医学では、多種ある症状や疾患の根っことなる原因にアプローチしますので、薬の量を減らせると考えています。一方、デメリットは、お薬ですから副作用の可能性があること。重篤なものでは低カリウム血症と、そこに高血圧とむくみが加わる偽アルドステロン症が挙げられますが、当院では血液検査で肝機能や電解質を確認しながら適した薬を処方しています。
- Q市販薬にも漢方がありますが、どのような違いがあるのでしょう。
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A
▲症状、体質に合わせて細かく調整することも
使用する薬は同じであってもその内容量が異なってきます。例えば、同じように1日3回で設定されているケースでも、市販薬と医療機関で処方される場合では、患者さんによって内容量に違いがあります。一般的には7.5gが多いのですが、市販薬では3.75gに設定されていることが多々あります。さらに医療機関では、実際に診察をした上で適した薬が処方されますし、市販薬よりも多い量で保険適用となれば経済的にもメリットがあるといえるでしょう。同じ年齢であっても、患者さんによって体格も違いますし、症状の要因も異なりますから、受診した上でご自身に適したお薬を処方してもらうことをお勧めいたします。
- Q不妊症の治療にも多く用いられていると伺いました。
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A
▲女性特有の症状の改善や、不妊治療にも
はい。まず、なぜ不妊であるかを体質的に見極めていきます。例えば、月経困難や月経不順が起こっていたら、なぜそのようなことが起きているか原因を探っていき、根本的な問題にアプローチしていくことで、卵巣や子宮を健やかな状態に整えることをめざします。健やかな状態は妊娠しやすい体づくりにつながるほか、月経困難症などの改善も見込めるなど、複数の症状へ同時にアプローチできるのは漢方の面白いところです。不妊治療は、よく畑に例えられることがありますよね。種の生育を改良するのが現代医学とするならば、土壌の改良をするのが漢方の役割。体外受精などによる妊娠継続をサポートできるのも漢方の得意分野だと思います。
- Qバリエーションの幅広さも漢方の大きな特徴なのですね。
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A
▲漢方薬が適する範囲は幅広い
一般的に知られているメーカーの漢方薬だけでも100種類を超えていますし、たしかにバリエーションは豊富です。しかし、頭痛にしても風邪によるもの、それとも天気なのかでも違ってきますし、さらに風邪のひき始めであるか、あるいは長引いている風邪なのかでも処方する漢方薬は異なります。このように、同じ症状であっても突き詰めていくと、選択肢を3~4種類くらいまで絞れるので、身体所見でどれが一番適しているのか見極めていきます。患者さんの症状、その背景にある要因を突き詰めていけば、おのずと適した薬が見えてくるため、漢方薬のバリエーションは豊富であっても、専門の医師であれば組み合わせで悩むことはほぼありません。