起立性調節障害は体の病気
正しい知識で不登校から子どもを守る
なかさここども成長クリニック
(神戸市灘区/六甲道駅)
最終更新日:2024/05/28


- 保険診療
起立性調節障害(OD)という耳慣れない名前の病気が、近年になって小中学生に増えているという。朝になっても子どもがなかなか起きてこない、学校に行こうとしないといった兆候があれば、それは単なる不登校ではなく、この病気が潜んでいるかもしれない。体の病気と認識されないまま「怠けている」「仮病を使っている」と誤解され、メンタル的にも追い込まれてしまう起立性調節障害。今回はそうした子どもや親のサポートに注力するという「なかさここども成長クリニック」の中迫正祥院長の解説で、体に起こる症状や要因となるメカニズム、検査・治療のアプローチから留意すべきポイントまで詳しく追ってみた。
(取材日2024年4月17日)
目次
まずは親子で病気と認識し、改善へ向けて地道に取り組んでいくことが大切
- Q朝起きられず、学校に行けない子どもが増えているそうですね。
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A
▲子どもや親のサポートに注力する中迫院長
小学校中学年から高学年くらいにかけて、平日の朝、登校時刻を過ぎてもベッドに寝たまま起きられず、そのまま学校を休んでしまう子どもが増えています。やっと起きても頭がぼーっとしていたり、体のだるさや倦怠感を訴えたり。「調子が悪いのかな?」と親御さんが心配していると、午後には元気になって外へ遊びに行こうとします。単に怠けたいだけの甘えではないか、仮病ではないかと叱っても、また同じことを繰り返すわけですね。中にはこうした繰り返しから学校やクラスメイトと疎遠になり、本格的な不登校になってしまう子もいます。そのような兆候が見られる場合は、起立性調節障害(OD)という疾患を一度疑ってみる必要があるでしょう。
- Q起立性調節障害とは、どのような病気でしょうか?
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A
▲体の悲鳴に気づき、病気として認識することが大切
自律神経の不安定さがさまざまな症状を引き起こす、簡単にいえば、横になったり座っている状態から起立した時に体の調節がうまくできない病気。それが起立性調節障害です。子どもは思春期の直前くらいから体が急激に変化していきます。その体の成長に、自律神経が追いつけない状態と考えればわかりやすいでしょう。朝起きられない以外にも頭痛や体のだるさ、腹痛などの不定愁訴のほか、めまいやふらつき、貧血や失神といった明らかに病気とわかる症状もあります。起立性調節障害は低学年から発症したり、うつ病や不登校に発展するケースもあるため、まずはお子さんの体の悲鳴に気づいてあげて、病気としてしっかりと認識することが大切です。
- Qなぜそうなってしまうのか、原因やメカニズムを教えてください。
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A
▲起立性調節障害について周知に努める同院
人は寝た状態から起床する際に頭に血液を流そうとしますが、自律神経に不調があると脳や体にまで血流が行き渡らず、数時間かけないとまともに起きることができません。「早く起きて学校に行きなさい!」と叱っても血流が足りず頭が働かないので、親の言葉を無視、あるいは反抗しているように見えてしまうわけですね。この病気の大きな背景として考えられるのは、体内の水分不足や夜ふかしです。今の子どもは水分の蓄積が足りず、常に脱水の一歩手前。睡眠中は水分が取れませんから朝には脱水状態となり、そこに自律神経の不調が重なると体のコントロールが効かなくなり、朝が遅いせいで夜ふかし生活となって悪循環に陥ってしまうわけです。
- Qどのように診療を進めていくのでしょうか?
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A
▲専用の自動血圧計を用いて測定し、診断を行う
まずは甲状腺ホルモンや脳、心臓の異常、内臓疾患など、他の原因を一つ一つ外していくことから始めます。起立性調節障害が疑われる場合は、専用の自動血圧計を用い、寝ている時と起立した時の血圧や脈拍の1分ごとの変化を測定します。治療が必要という判断になれば薬による血圧調整などもありますが、やはりベースとなるのは生活習慣の改善。水分をしっかり取るだけでも楽になる可能性はありますし、それがないまま薬を飲み続けても十分な効果は期待できません。大切なのは、お子さん本人もご家族も、どのような病気であるかを理解しながら改善に向けた生活を送ることです。深刻な問題に発展してしまう前に、ぜひ専門の小児科にご相談ください。
- Q日々の生活の中で、親として注意すべきことはありますか?
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A
▲子どもに寄り添い、病気への理解と改善に向けて尽力する
繰り返しになりますが、起立性調節障害は体のメカニズムによるれっきとした病気です。気合いでなんとかなるものではありませんから「しっかりしなさい」と言うだけでは到底治すことはできません。ただしメンタル面の影響も強い病気なので、改善が見られれば褒めてあげるなど、プラスの表現で接してあげることも重要です。親であればこそ、いつもお子さんの味方でいてあげてください。起立性調節障害にはまだ解明されていない部分もあり、自律神経の不安定さを解消するにはどうすれば良いか、しっかりと考えながら地道にアプローチしていくしかありません。少し根気のいる作業になりますが、私たちと一緒に大切なお子さんを見守っていきましょう。