子どもの低身長は個性か病気か?
専門家の診断で健やかな成長を
なかさここども成長クリニック
(神戸市灘区/六甲道駅)
最終更新日:2024/05/21


- 保険診療
標準的な身長に比べて小柄というだけで、わが子の成長や発育、将来の人生をつい心配してしまうのは親として当然のこと。今のうちに何かしなければと小児科を受診したものの、はっきりとした答えが得られないまま不安を抱えている人も多いことだろう。「低身長は必ずしも病気やハンディではなく、むやみに悩む必要はありません」と呼びかけるのは、「なかさここども成長クリニック」の中迫正祥院長。気になる場合は、なるべく早期のうちに専門家の診断を仰ぐことが大切だという。そんな低身長の子を持つ親が知っておくべきポイントを、小児内分泌のエキスパートの立場から詳しく解説してもらった。
(取材日2024年4月17日)
目次
病気の見極めは一般小児科では困難なことも。経験ある専門家の意見を参考に
- Q子どもの成長が遅い気がして心配なのですが。
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A
▲子どもの身長で気になることや不安は、専門家への相談を
周囲の子と比べても身長の伸びが悪く、小柄で背が低いことを本人も気にしているなど、心配になって小児科を訪れる親子は案外多いものです。「病気でしょうか?」と質問されることもありますが、いわゆる低身長といわれるのは基準となる標準偏差が-2SDという、かなり小柄な例に限定されます。中には成長ホルモン分泌不全性低身長症という内分泌の病気や腎臓病に関連する低身長症も存在しますが、特に病気でない限り、小柄なこともその子の個性の一つだといえます。小さい小さいと言い続けても背が伸びるわけではありませんから、特に問題ではないことをお子さんに伝え、不要なコンプレックスにつながらないよう注意してあげてください。
- Q小児科で様子を見ましょうと言われましたが、大丈夫でしょうか?
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A
▲小児内分疾患に造詣が深い中迫院長
お子さんの身長が心配であれば、まずは低身長について知識や経験が豊富な小児内分泌の専門家に相談することが大切です。一般の小児科では専門的な判断が難しいため、相談しても「そのうち伸びるでしょう」と告げられることが多いようです。しかし中には早めのアプローチが必要なケースや治療にタイムリミットがあるケースもあるため、対処をするにしても様子を見るにしても、初動は早ければ早いほうが安心です。成長曲線の見極めは専門家でも難しいものですが、骨年齢を調べてみると2歳ほど幼く、まだ伸びしろが残されていると安心していただける場合もあります。こうしたアドバイスが得られるのも、専門家による診療ならではといえるでしょう。
- Q低身長を調べるには、どのような検査が必要ですか?
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A
▲過去の身長・体重の記録が診断の参考となるで、忘れず持参を
1歳半や3歳の乳幼児健診を過ぎると、多くの場合は小学校に上がるまで健康診断を受ける機会がありません。適切な身長や成長の流れもつかみにくくなるため、幼稚園の年中さんくらいのうちに小児科で精密検査を受けると良いかもしれません。低身長の場合はまず、成長ホルモン分泌刺激試験でホルモンの分泌が正常に行われているかどうかをチェックします。検査当日の朝、糖分を取らない状態でホルモンの分泌を促すための薬を投与。間隔を開けて4回ほど採血を行い、数値によって状態を評価します。その際には母子手帳や過去の身長・体重測定の記録なども適切な診断の参考になります。出生時のデータは特に重要ですので、忘れずにお持ちください。
- Q低身長だった場合の治療法を教えてください。
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A
▲低身長症と診断されれば、成長ホルモンを毎日の注射で投与する
成長ホルモンの分泌不全による低身長症の場合、成長ホルモンを直接投与することで子どもの成長を促していきます。こちらは注射が基本で、チクッとする程度の皮下注射を毎日ご自宅で行ってもらいます。毎晩寝る前に、歯磨きしてから注射という日々のルーティンにしてもらえれば、さほど大変なものではありません。また、同時に栄養や運動、睡眠といったベースとなる生活を見直すことも大切です。運動でおなかを空かせれば十分な食事が取れますし、適度な疲れによってぐっすりと眠れます。ただし、過度な運動をすると成長に必要なカロリーが奪われかねませんので注意してください。このような指導も治療とあわせてじっくりと行っていきます。
- Q親として大切にすべき心構えは何でしょうか?
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A
▲「心配や悩みがあれば気軽に相談してほしい」と話す中迫院長
小柄であることが人生においてハンディキャップであるとは私は思いません。お子さんが伸び伸びと成長できるように、一つの個性として周囲も受け止める必要があるでしょう。ただし、中には思わぬ病気が影響している可能性もありますから、病気かどうかを心配してあれこれ悩むよりは、やはり子どもの低身長に精通した小児科を受診し、必要であればしっかりと治療を受けることをお勧めします。専門的な見地から検査や治療を先送りにすることもありますが、それはその子にとって最適な結果を得るためのテクニックの一つです。やることさえやっておけば後から悔やむことはないと思いますので、安心して専門の医師のアドバイスに従ってください。