三村 将文 院長の独自取材記事
市が尾歯科・歯科口腔外科クリニック
(横浜市青葉区/市が尾駅)
最終更新日:2021/10/12
「市が尾歯科・歯科口腔外科クリニック」の三村将文院長は、東京医科歯科大学の顎顔面外科分野で研鑽を積んだ歯科口腔外科のエキスパート。「歯を残す・保存するための口腔外科」をめざし、虫歯や歯周病の予防・治療にも熱心だ。予防の要は適切なブラッシングと口腔内の環境を整えること。そのため同院では、スタッフが一丸となって仕事環境やメンタル面を含めた全人的な視点で患者と関わり、一人ひとりに合ったアドバイスをしながら、予知性の高い治療を提供している。「患者さんが気軽に通える存在でありながら、長期的視野に立った専門性の高い治療を提供できるクリニックをつくりたかったんです」と語る院長に、クリニックの方向性や患者への思いについて話を聞いた。
(取材日2017年6月22日)
口腔外科の専門家だからこそ予防に注力し口腔内を守る
クリニック名に「歯科口腔外科」とあるように、口腔外科がご専門なのですね。
私自身外科的な分野が向いていると感じていたので、東京医科歯科大学の顎顔面外科分野で学びを深めてきました。ここでは難易度の高い抜歯をはじめ、口腔がんや先天奇形の手術、顎補綴というがんで顎を全部取ってしまった人の顎を再建し、その上に入れ歯を作るといった治療などを行っていました。こうしたケースでは、全身状態を把握した上で治療を行うことが不可欠です。また、歯を1本1本診るのではなく、粘膜や歯茎の様子を含めた口腔全体を「一単位」として診ることで、口腔内の異常をいち早く察知していました。そういった意味で、「診る目」を養うのには最高の環境でしたね。そのおかげで、まずは自分の手に負える疾患かどうかを見極め、早急に専門病院に紹介するべきか、自分で治療できるかどうかの診断能力が身に付いたと思います。
大学で先進技術を学ぶ中で、なぜ開業しようと思われたのですか?
体全体を診てその人に合った口腔環境を整えられる専門性を生かし、身近な歯科口腔外科をつくりたかったからです。大学病院だと待ち時間が長くなってしまいがちなので、「もう少し気軽に専門家に診てもらいたい」という要望に応えられるクリニックを開きたいと考えました。開院してもうすぐ6年ですが、これまでに顎を骨折した方、歯茎に細菌が入って頬が腫れ上がった方、舌や頬粘膜の悪性腫瘍など、さまざまな患者さんを診てきました。一方で、当院は予防を重視していますので、虫歯や歯周病の予防や治療といった歯科口腔外科分野以外の患者さんも多く来られます。世代も0歳から99歳までと幅広く、近隣だけでなく八王子や埼玉からもいらっしゃいますね。大学病院との連携も取っていますので、さらに高度な医療が必要な場合は、病状に合った病院を紹介しています。
歯を抜くイメージのある歯科口腔外科で「予防」というのは、意外な感じがします。
私がめざしてきたのは「歯を残す・保存するための歯科口腔外科」。そのためにはできるだけ歯を残せる技術が必要です。だからこそ、予防に力を入れているのです。その上で、虫歯や歯を失う最大の原因である歯周病の治療をきちんとして、それでもダメなら抜きましょうということです。とはいえ、ただ残せばいいかというと、そうではありません。無理をして残しても数年後に抜かないといけなくなってしまったら意味がないですよね。そうならないようにするには、的確な検査・診断に基づき、10年、20年たっても良好な口腔内を維持できるよう、予知性の高い治療を行うことが不可欠なんです。そのためには、全身状態を含めさまざまな角度から患者さんを「診る目」が求められますから、これまでの経験が役に立っていると感じます。
生活背景にも踏み込んだ「患者参加型」の医療を実践
予知性の高い治療を行うために、どんな工夫をされていますか?
まずは、歯科用CTなどの先進機器を使った精密な検査を行うこと。そしてもう一つ、歯が悪くなってしまった原因を突き止めることを重視しています。その場限りの治療ではなく、なぜ悪くなったのかを踏まえ、今後そうならないように予防することが何より大切だからです。例えば、仕事で夜遅くまで忙しい方は丁寧なブラッシングが難しかったり、間食が増えたりすることがあります。そういった患者さんの生活背景を踏まえ、その方に合った生活や食事のアドバイスをするようにしています。幸いなことに私はケアマネジャーや労働衛生コンサルタントの資格を持っており、高齢者やその家族、またビジネスパーソンの現状をある程度理解した対応ができるので、それは強みかもしれませんね。
なるほど。それ以外にも治療にあたって心がけていることはありますか?
目先の治療で終わらせず良い状態を維持するためには、患者さんに納得してもらい、信頼関係を築いた上で治療をすることが大切になります。そこで当院がモットーに掲げているのが、「患者参加型」の診療。口腔内のリスクを含めて現状をきちんと伝えた上で、治療の選択肢をいくつか提示し、最終的に患者さん自身に判断してもらうようにしています。ですから、同じ疾患であっても年齢や生活背景によって治療の仕方は当然異なりますし、そうやって一緒に進めていかないと患者さんのモチベーションを維持するのは難しいと思います。
患者の意識を高めながら、一人ひとりに合ったオーダーメイド治療を提供されているのですね。
はい。もちろんそれを実践するには私1人の力ではなく、スタッフたちの協力も必要です。当院には歯科衛生士が7人もいて、しっかりとしたプロフェッショナルケアとセルフケア指導を行っています。特に歯周病の患者さんの場合、ブラッシングが難しいので、自宅でも継続できるように一人ひとりに合ったケア方法をお伝えしています。その際、模型や口腔内カメラで撮影した写真をテレビモニターで見せて、わかりやすくご説明するようにしているんです。口の中の状態を伝えることで患者さんは安心できますし、モチベーションにも影響します。なお、当院は患者担当制にはしていません。そのほうが多角的な視点で診ることができ、歯石などの取り残しも防止できるのではないかと思います。
90歳になっても安心できる口腔内を維持するために
現在、力を入れていることはありますか?
歯科用マイクロスコープを用いた精密治療です。特にマイクロスコープは、より精度の高い治療をめざして導入しました。例えば、根管治療においては歯の根っこの部分までよく見えるので、細菌を取り残さずに必要な部分だけを除去することができるようになりました。結果的に抜歯だと思っていたものが、抜かずに済んだというケースもありますし、患者さんの負担が減り、選択肢の幅もより広がりました。また、歯のかぶせ物や詰め物の治療に活用することで、審美面の要望にも応えることができます。そうして今まで以上に満足いただける良い治療を提供すれば、患者さんの意識がさらに高まり、再発を防ぐことにもつながるのではないかと考えています。
お忙しい毎日だと思いますが、オフタイムはどう過ごしていますか?
休診日には研修会や学会に参加していることが多いですが、何もない日は、ランニングなどをして体を動かすようにしています。長年、スキーとスキューバダイビングをやっていて、今でも家族とはスキー旅行に行っていますし、最近は毎年ハーフマラソンに参加していますね。歯科医師は体力勝負のところがあって、筋力をある程度鍛えていないと長く続けられないんです。子どもの頃から外遊びが大好きで、田んぼや池でザリガニやドジョウを獲ったり、市ヶ尾や横浜方面に自転車で遠出したりしていたので、アウトドア好きは、その頃の影響かもしれませんね。
最後に患者さんへのメッセージをお願いします。
私はこれまで口腔外科の専門家として、多くの症例を診てきました。その経験から、悪くなる前に予防・介入し、できるだけ歯を残したいと考えています。そのためには、患者さんと協力して治療を進めることが不可欠。治療後は、半年から1年の間隔でメンテナンスに来ていただけるといいですね。歯科検診も年に1回は受診し、口腔内のリスクが高い人は、半年かそれ以上の頻度で受診しましょう。あわせて、ご自宅では、個々に合った生活習慣とブラッシングを継続してください。もちろん私自身も、患者さんが90歳になっても安心できる、その方にとって最適な口腔内を維持できるよう、日々研鑽を積んでいきたいと思います。そうして知識と技術を患者さんに還元しながら、人間的にも信頼される歯科医師をめざしていきたいですね。