食物アレルギーは専門とするクリニックで
治療だけではなく予防も
仙川すずのねクリニック
(調布市/仙川駅)
最終更新日:2024/04/12


- 保険診療
食物アレルギーの子どもが増えている。アレルギーを専門とする「仙川すずのねクリニック」の田知本寛(たちもと・ひろし)院長によれば「東京都が1999年から5年ごとに実施している3歳児健康診査での調査でも、この20年間で約2倍に増加しています」とのことだ。とはいえ、どのクリニックに相談すればいいか迷っている人も多いのではないだろうか。最近では食物経口負荷試験ができるクリニックも珍しくないが「細心の注意が必要です」と田知本院長は警鐘を鳴らす。近年は研究も進み、予防方法についても解明されつつある。医師向けの食物アレルギー診療のガイドラインの製作にも携わってきたこの分野の専門家である田知本院長に、食物アレルギーについて詳しく聞いた。
(取材日2024年3月27日)
目次
食物アレルギーは専門とする医師のもとで適切な治療を受けるのが大事。先進の研究では乳幼児期の予防方法も
- Q食物アレルギーを引き起こすと、どのような症状が現れますか?
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A
▲アレルギー症状の疑いある場合は、すぐに相談を
食物アレルギーの症状で最も多い症状はじんましんですが、複数の臓器にまたがって症状が出るアナフィラキシーを引き起こすことがあります。咳やゼイゼイする喘鳴(ぜんめい)、嘔吐や下痢などのおなかの症状が現れ、さらに血圧低下や意識障害を伴い死の危険もあるアナフィラキシーショックに至る可能性も1割ほどあるので注意が必要です。原因となる食物は卵、牛乳、小麦の順に多いのですが、最近はクルミなどのナッツ類が増えています。ナッツアレルギー増加の原因究明は、今後の研究課題になっていくのではないでしょうか。
- Q子どもの食物アレルギーはいつ頃から発症するものですか?
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A
▲食物除去の量や種類は正しく診断する必要がある
乳児期早期からという例も決して少なくありません。私の経験では生後1週間で発症したお子さんもいます。生後1ヵ月頃から乳児湿疹といわれていたのが実はアトピー性皮膚炎で、食物アレルギーが関与していたというパターンが一番多いですね。人工ミルクや離乳食で原因物質を口にして症状が出るお子さんよりもたくさんいます。かゆみの他に体重増加などの症状が続くなら、アレルギーを専門とする小児科を訪ねてみてはいかがでしょうか。皮膚の治療だけしてもうまくいかないことも多々ありますし、原因を見つけることを得意としている医師に相談してください。症状が軽いうちほど治療の負担も少ないので早期発見が重要です。
- Q原因食物はどのような検査でわかるのでしょうか。
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A
▲試験後アレルギー症状があれば院内で速やかに処置及び治療をする
例えば、血液検査なども行いますが、検査の数値よりも「実際にどのような症状が出ているか」を見ていかなくてはいけません。数値が低くても激しい症状が出ている場合や、またその逆もあるからです。また最近、食物経口負荷試験を実施しているクリニックも増えており当院でも行っていますが、非常に慎重に実施する必要のある検査なんです。私自身、大学病院で数多くの食物経口負荷試験を実施してきましたが、ショック症状に至る例も経験しました。ですから、ナッツ類など重症化の可能性があると判断される場合は、必ず入院施設がある大学病院などを紹介しています。
- Q食物アレルギーを予防するための方法はあるのでしょうか。
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A
▲東京慈恵会医科大学で研鑽を積んだ田知本院長
これまでも、日本では生後6ヵ月、海外では生後3ヵ月からできる予防方法が報告されています。しかし、その頃には既に発症している例もあります。そこで、東京慈恵会医科大学の私たちの研究グループでは「生まれた直後からの予防が必要」という発想で研究を進めてきました。現在は、生後3日間は母乳を中心とし、不足分は通常の人工ミルクではなくアミノ酸乳で補うことで、一定の予防効果が期待できることがわかっています。ただ、一度でも人工ミルクを症状なく飲めて、母乳が十分に分泌されるようになったからといってやめるとかえってアレルギーの原因となることもあります。症状がなければ少しずつでも人工ミルクを続けるようにしてください。
- Q食物アレルギーで受診する際、どんな点に注意すべきですか?
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A
▲かわいらしいパンフレットや練習用トレーナーも配布
食物アレルギーの診断と治療には専門的な知識が必要なので、アレルギーを専門としている医師がいるクリニックを受診するようにしてください。私は患者さんとクリニックをつなげるための東京都の有識者会議に参加していたこともあるので、お悩みのご家族が多いことも実感しています。また、受診前に親御さんはこれまでのエピソードを書き出すなど、頭の中を整理しておくと良いでしょう。いつ、何をどれくらい食べたら、どんな反応が出たのか、すべてを診察室で思い出すのは難しいと思いますので、事前に準備をしておいてはいかがでしょうか。