丸山 俊一郎 院長の独自取材記事
まるやま脳神経内科・糖尿病クリニック
(久留米市/久留米駅)
最終更新日:2024/07/22
約40年にわたって地域医療を支えてきた丸山クリニックを継承し、2024年2月に新規開業した「まるやま脳神経内科・糖尿病クリニック」。久留米駅から車で数分の場所にある同院は、一般内科に加えて、脳神経内科と糖尿病に特化した診療を行っている。院長の丸山俊一郎先生は、村上華林堂病院で神経難病の診療に従事する傍ら、糖尿病治療の必要性を感じて、日本糖尿病学会糖尿病専門医の資格を取得。2つの専門性を生かした診療ができることが強みだ。ピアニスト、指揮者としての顔も持つ丸山院長は、音楽を用いたケアにも取り組んでいる。待合室では静かなクラシックが流れ、白いピアノも置かれており、音楽に対するひたむきな情熱が伺える。そんな丸山院長に、開業までの経緯や診療にかける思いを聞いた。
(取材日2024年4月20日)
2つの専門性を生かした診療で、地域医療に貢献
クリニックの歴史を教えてください。
当院の始まりは、1982年に父が開業した丸山クリニックです。約40年にわたって地域に根差した医療を続けてきましたが、その父も一昨年病気で亡くなりまして、1年間の休院期間を経て、今年の2月に新規開業という形で新たなスタートを切りました。父の代では一般内科を中心に診療していましたが、私が引き継いでからは風邪や発熱など一般内科と健診や予防接種に加えて、脳神経内科と糖尿病治療を打ち出しています。久留米市内や筑後エリアに脳神経内科を標榜しているクリニックは少なく、大学病院や中核病院に入院した後、患者さんの受け皿となる医療機関が地域に不足していることが課題でした。遠くにある病院にわざわざ通うのは、患者さんやご家族にとって大きな負担です。当院が開業したことで、そうした方々の助けになればと思っています。
これまでのご経歴を伺えますか。
大学を卒業後、九州大学医学部の脳神経内科に入局し、神経内科診療のトレーニングを受けました。開業前に勤めていた村上華林堂病院では、パーキンソン病やALSなどの神経疾患の診療に取り組む一方で、糖尿病の領域にも興味を持ち、日本神経学会神経内科専門医ならびに日本内科学会総合内科専門医に加えて、日本糖尿病学会糖尿病専門医の資格まで取得しました。そして多くの症例を経験し、専門性を磨いてきました。医師として勤務する傍ら、音楽家としても活動しています。2005年にはドイツに渡り、ベルリン・コーミッシェ・オーパー歌劇場で研鑽を積みました。現在も音楽活動をライフワークとし、ピアノ演奏や東欧でのオーケストラの客演指揮、他にも音楽を用いたケアに取り組んでいます。
脳神経内科と糖尿病を専門分野に選ばれた理由は?
脳神経内科領域はいわゆる難病と呼ばれる疾患が多く、徐々に症状が進行して、寝たきりになることもあります。長年病気と向き合っていかなくてはならない患者さんの大変さを目の当たりにして、力になりたいと思い、脳神経内科の道に進みました。私が医師になりたての頃は治療法が限られていましたが、ここ30年ほどで飛躍的に進歩し、QOL(生活の質)の向上も見込めるようになってきたので、やりがいを感じています。一方、糖尿病はさまざまな病気を引き起こす原因となる代表的な生活習慣病です。国内の糖尿病患者は1000万人に上るともされ、その対策は急務となっています。もともと食習慣や生活習慣改善への関心が高かったこともあり、専門的に学びたいと考えました。
早期発見に努め、早期治療につなげる
脳神経内科では具体的にどのような診療を行うのですか。
脳神経外科との違いをよく聞かれますが(笑)、脳神経内科は、脳や神経や筋に由来する病気を、外科的手術ではなく薬などで内科的に治療する診療科です。具体的には、頭痛やめまい、物忘れ、手足の振え、ふらつきなどを訴える患者さんが対象です。頭痛やめまいがあって「重大な脳の病気ではないか」と不安になっても、いきなり大きな病院に行くのは躊躇してしまうものです。当院ではMRIを備えており、受診したその日に検査をして当日中に検査結果をお伝えし、治療を始めることができます。普段から大学病院や総合病院との連携体制を整えていますので、手術や入院が必要な場合は適切な病院・診療科に紹介するのでご安心ください。また、片頭痛については治療の進化が目覚ましく、画期的な新薬も登場しました。つらい症状でお悩みの方はぜひ受診していただきたいと思います。
糖尿病の診療についても教えてください。
食事療法、運動療法に加え、内服薬やインスリン注射などによる薬物療法を行っています。私自身、健全な食習慣や生活習慣を実践するために、試行錯誤しながら取り組んできました。その経験を患者さんに還元していけたらと考えています。近年、糖尿病の治療薬も次々と開発され、選択肢が広がってきました。お一人お一人の状態に応じて、その方に合ったものを提案しています。糖尿病で怖いのは合併症です。心臓や脳の血管がつまったり、失明や透析に至ることもあるため、自覚症状がない初期の段階で見つけて、合併症が重症にならないようにコントロールする必要があります。当院では、血糖値を針で刺すことなく24時間持続して測定できるタイプの測定器や、採血後5分程度でHbA1cの値を測定できる機器を導入しています。早期発見・早期治療に努め、合併症がある場合も、眼科や腎臓内科の先生とも連携しながら対応しています。
早期発見・早期治療が大切なのですね。
先ほど糖尿病の患者数は1000万人に達するとお話ししましたが、その予備軍も同じ数だけ存在するといわれています。そのまま放っておくといずれは糖尿病に移行してしまうため、境界型の段階で発症を食い止めることも大切です。早期に診断し、治療を開始すれば、より多くの改善が見込めます。脳神経内科の分野もしかりです。例えば認知症は身近な病気ですが、その予備軍である軽度認知障害(MCI)の時から介入すれば、発症と進行を遅らせることが期待できます。気になることがあれば、早めにご相談いただくことをお勧めします。
自らが診察室を移動し、待ち時間の短縮を図る
診療で大切にしていることを教えてください。
ゆっくり丁寧に説明することですね。当院はご高齢の患者さんがご家族に付き添われて来られることも多いのですが、まずはご本人とお話をすることを大切にしています。丁寧な診察とお待たせしないことの両立に努めていますが、杖や車いすを使用している方も多いため、通常よりお時間がかかります。そこで診察室を2つ設け、私が両方のブースを行き来して診療にあたることで、患者さんにゆっくり移動していただきながら待ち時間を最小限にとどめ、かつ効率的な診療体制を取っています。また、車いすでも移動しやすいよう、入り口からスロープをつけ、院内全体をバリアフリーにしました。トイレもバリアフリー対応です。
音楽を用いたケアの可能性についてどうお考えですか?
最近では補完代替療法として、非薬物療法といった薬を使わないケアも注目されています。音楽もその1つです。音楽を聞くことでリラックスしたり、気持ちが高揚したりした経験は誰しもあるはずです。私たちにとって音楽は、生きる力を与え心を豊かにするためになくてはならないものです。音楽を身近に感じてもらいたいという思いから、待合室にピアノを置きました。これから演奏会を開くなど、音楽を通じて地域の方とつながる機会も設けたいと思います。
最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
小さなことでも丁寧にお答えしますので、悩みや不安に感じていることがあれば何でも相談してください。例えば、頭痛は脳神経内科の領域ですが、何十年間も悩まされていながら、市販の頭痛薬で何とかやり過ごすことでかえって慢性化を招いている方もいらっしゃいます。頭痛と一口にいっても原因はさまざまで、それぞれに合った治療が必要です。我慢せずに医療機関を受診していただくことが、改善への近道にもなります。MRIも備えていますので、より精密な検査が可能です。糖尿病をはじめとする生活習慣病にも幅広く対応しています。また私自身、演奏会でピアノを弾いたり、コンサートで指揮者を務めたり、音楽活動をしています。音楽を聞くだけでもいいので、ぜひいらしてください。リクエストも大歓迎です。