加久 翔太朗 院長の独自取材記事
clinic WIZ のぼりと・ゆうえん小児科
(川崎市多摩区/向ヶ丘遊園駅)
最終更新日:2025/11/19
小田急線・向ヶ丘遊園駅から徒歩6分。「clinic WIZ のぼりと・ゆうえん小児科」は、幅広い研鑽を積んできた加久翔太朗院長が、自身の理想とする小児医療を提供したいという熱意のもと2023年に開業した。子どもに関わるどんな気がかりも診られる場所をめざし、風邪などの感染症による発熱を含む身近な症状から、神経発達症(発達障害)や言葉の遅れ、アレルギー、集中治療を経た新生児・乳児のフォローアップといった専門性が要求されるものまで、幅広く対応する。理知的な話しぶりの端々に小児医療への熱い思いがにじむ加久院長に、開業2年を経ての思いと、理想とする小児医療などについて改めて話を聞いた。
(取材日2025年10月23日)
小児一般診療から専門診療まで、包括的にアプローチ
改めて、クリニックの特徴を教えてください。

地域の一次医療機関として、包括的に小児医療にアプローチすることをめざしています。風邪などの感染症による発熱など、よくある症状を診ることはもちろん、アレルギー疾患や神経発達症(発達障害)など、さまざまな小児疾患に、幅広く対応します。そのために、多彩な専門性を持つ小児科医師、言語聴覚士、心理士、看護師、助産師、保健師、薬剤師といったスタッフによるチーム医療を提供しているのが特徴です。多職種のチームにより、一般的な小児科クリニックではあまり対応されてない、6歳未満児へのアレルギー血液検査やPCR検査、気管支喘息に対する呼吸機能検査である呼気一酸化窒素検査、食物アレルギーへの経口負荷試験、脳神経小児科、児童精神科、小児心療内科の専門診療や心理検査も実践しています。
幅広く対応されているのですね。
クリニックに相談したものの、「専門的な検査や診療は総合病院へ」と紹介されたという方も多いでしょう。しかし、総合病院で長く診療してきた経験から、総合病院の外来でできることは、クリニックでもできるはずだと考えますし、自分ならより受診しやすく身近なクリニックで受けたいと思います。小児科は、消化器内科や循環器内科のように診療内容が細分化されていません。小児に対する総合診療という意味が含まれていると考えており、小児科を診る医師である以上は、一部だけを得意として「この症状は診るけれど、あの症状は診ない」とは言いたくありません。もちろん、手術や入院が必要な場合などは適切に連携しますが、「風邪や発熱だけでなく、アレルギーや発達、メンタルや障害の相談まで、何でも診られる身近なクリニック」であることを大切にしています。
総合病院レベルの検査や診療を受けられるのはなぜですか。

専門性を高めたチームスタッフが充実しているのが最大の理由ですが、小児科をめぐる保険制度の設定によるところもあります。小児科で、一般的に広く採用されている診療報酬請求の方式では、6歳未満の外来診療料は一律に設定されています。この方式では軽症の方の請求額が高く設定され経営が安定する一方、どんな検査や処置を行っても医院として請求できる額が一定であり、費用のかかる検査や処置を行うと、医院側の負担が大きくなってしまう側面もあります。当院では、クリニックでも必要な検査や処置が受けやすい体制を整えるため、総合病院と同じ出来高方式での算定とし、年齢等に制限を設けることなく、必要だと判断した医療を適切に実践しています。
急な体調不調も多いため、日曜も含め診療体制にも工夫
診療は予約制が基本となるのですね。

多くの小児クリニックは順番予約制を導入されていますが、当院では平日と土曜日は時間予約制です。14日先までの日時を指定できる一般診察および予防接種・健診の枠と、当日朝から予約できる発熱時の外来枠を用意し、ウェブで予約を受けつけています。症状や状況によっては早く受診したほうが良いケースもあるため、ご入力いただいた主訴を看護師が逐一チェックし、必要と思われる場合は来院時間を繰り上げる連絡をすることもあります。加えて、小児科は「夜中に急に具合が悪くなって朝一番で診てほしい」といったニーズが発生しやすいことから、朝の開院後20分間はあえて予約を受けつけず、直接来院された方の順番に診療するスタイルにしています。それ以降もすぐに診てほしい場合は、小児救急科で対応しています。また、日曜日の午前も診療しています。日曜日は普段のような専門科での対応はできませんが、急な体調不良では頼っていただければと思います。
開院から3年を迎えるにあたって、どのようなことを感じていらっしゃいますか。
ありがたいことに多くの子たちが受診してくれており、特に神経発達症などでは、「近隣では診療できる医療機関が見つからなかったから」と、遠方からもお越しいただいています。一方で、「かかりつけ医は他にあるが、検査だけ受けさせたい」「他院で処方されている薬を出してほしい」というご要望をいただくこともあります。検査も処方も、お子さんの症状とその背景を十分に理解して行うべきと考えているため、当院が初診の場合は改めて症状と背景を伺い、時には保護者の方のイメージとは別のご提案をすることもあります。誤飲リスクの高いシロップ薬は避けてドライシロップを出したり、誤嚥の恐れがある喘息用のテープの処方には慎重であったりと、病院の小児救急科での経験から、ご家庭での取り扱いについてもイメージしながら処方しています。こうした方針の理由も、ご納得いただけるよう丁寧に説明していきたいと感じています。
医療型日中ショートステイも併設されていますね。

「HARMONIOUS」は、酸素療法や人工呼吸器などの、医療的なケアが必要なお子さんを一時的にお預かりし、保護者に休んでいただくことを目的とした医療型日中ショートステイです。これまでこの地域には、医療的ケアのため保育園に通えなかったり、病院から退院できないほどではないものの不安が残ったりするお子さんを預かる、医療型の活動支援施設はほとんどありませんでした。地域で困っているご家族の力になりたいと考えられるよう保育・療育・幼小児ケアを専門とするスタッフがお待ちしていますので、安心して頼っていただきたいと思います。
ここで生まれて、ここで育てて良かったと思える街に
この場所で開業された理由は?

開業そのものが目標だったわけではありませんでしたが、これまでさまざまな病院で研鑽を積む中で、勤務医では自分の理想とする総合的な小児医療をめざすのは難しいと感じていました。両親も小児科医で、家族の医療法人で開業したほうが理想に近づけると考えるようになりました。向ヶ丘遊園は、僕自身が生まれ育った場所です。思い入れもありますし、在籍した聖マリアンナ医科大学や、川崎市立多摩病院、国立成育医療研究センターのいずれとも緊密に連携できる場所でもあることからこの場所で開業しました。向ヶ丘遊園という名のとおり、この土地には昔は遊園地がありました。僕の思い出の中に残っている遊園地のように、患者さんにとって「あの時ここで診てもらえて良かったな」という思い出に残るクリニックをめざしています。
今後の展望を教えてください。
総合的に診ることができてこそ小児科だと考えているので、新生児期からの対応にも力を入れています。地域に生まれた子の成長を一緒に見守り、結果的に「ここに生まれ育って良かった、ここで子育てして良かった」と思っていただきたいですね。特に初めてのお子さんでは生後2ヵ月の予防接種までにもさまざまな不安があるもの。肌荒れやおへその状態、鼻詰まりなど、小さな気がかりも気軽にご相談ください。また、区役所に近いこともあり、行政の保健師や栄養士との連携はとても大切にしています。臨床から得た課題感や知識をもとに、行政機関の方や他の先生方と議論することもあります。助産師を中心に妊婦さん対象のお茶会を開催するなど、出産前からのご縁づくりにも取り組んでいます。
最後にメッセージをお願いします。

国は医薬分業を進めていますが、具合の悪い小さな子を連れてクリニックから薬局へ移動し、再度待ち時間を過ごすのは大変です。また、せっかく訪れた薬局でも、昨今では在庫切れで薬を受け取れないというケースもあります。そうした状況を踏まえ、風邪薬や軟膏などは院内処方としました。今後も地域のお子さんと親御さんのために、本当に価値のある小児医療とは何か、小児総合診療とは何か、を考えながら提供していきたいと考えております。

