平田 裕 院長の独自取材記事
アエールこころのクリニック
(鹿児島市/鹿児島中央駅)
最終更新日:2024/12/11

JR鹿児島本線・鹿児島中央駅から徒歩数分という好立地に、「アエールこころのクリニック」が2024年5月に開院した。同クリニックの院長を務める平田裕(ひらた・ひろし)先生は、複数の病院の精神科に勤務し、認知症や統合失調症をはじめ多様な疾患・症状を診療してきた精神科・心療内科の専門家。親しみを持って、悩みを抱える心にそっと寄り添ってくれる魅力的な人柄だ。明るく優しい雰囲気に満ちた院内、ウェブ予約やオンライン診療の導入など、受診のハードルを下げる工夫を凝らすことで、患者が一歩踏み出し、気楽に通えるクリニックをめざしている。今回は平田院長に、診療のこだわりや患者への思いをたっぷりと聞かせてもらった。
(取材日2024年3月1日/情報更新日2024年11月12日)
悩みを孤立させずそばで寄り添いたい
初めに先生のご経歴を伺います。

鹿児島大学を卒業後、同大学病院で精神科の基礎を学びました。その後は複数の医療機関に勤務し、うつ病や不眠症をはじめ、適応障害、統合失調症、認知症など、さまざまな患者さんを診療してきました。他科と協力しながら入院治療や外来診療を行ったり、慢性期の統合失調症や認知症の患者さんの社会復帰をサポートしたり、救急部門で暴れる患者さんの対応に24時間あたったり……。多種多様な現場で異なる悩みを抱えた患者さんやご家族の方に出会えたのは、貴重な経験となりました。結果として「心の病気とは何か?」「より良い治療とは何か?」と常に内省するようになりました。患者さんに寄り添い支え、穏やかな生活が送れるようサポートしていくことが生きがいです。
心を診る科目を選んだのはなぜでしょうか?
人間の「心」への興味や、難治性の疾患を治したいという気持ちもありました。精神科においては統合失調症で、若い方が発症し、なかなか良くならず社会復帰を果たせないというケースもよく見られます。私が学生の頃には、周囲の理解も得られにくい病気で、そのまま人生が悲しい方向へ進んでしまい、場合によってはご家族に悪影響が及ぶことも。だから最初は「自分が統合失調症を治してやる!」くらいの勢いで精神科へ入局し、教授にも思いをぶつけましたが、現実は厳しく、統合失調症の治療はいまだ困難を極めます。それでも多くの患者さんやご家族と接する中で、認知症など別の病気を改善に導く大切さも実感し、可能な範囲で手を尽くしていきたいです。
どのような経緯で開業に至ったのですか?

病院勤務医では院外に出るのが難しく、受診した患者さんのことしか診られません。しかし地域に出られれば、患者さんやご家族との距離は縮められます。中には話を聞いてもらえるだけでも救われるという方もいらっしゃると思うんです。そんな方々に手を差し伸べたい、悩みを孤立させないようにそばで寄り添い支えたいという気持ちが積もりに積もり、開業に踏みきりました。
院内は癒やしや優しさが感じられる雰囲気です。
精神科であるからこそ、カジュアルで気楽に来られる雰囲気づくりを意識しました。ロゴマークはモットーである「More Smiles, More Happiness.」にちなんで、患者さんの幸せを願う気持ちを込めた優しい色の四つ葉のクローバーに。また、私自身、悩んでいるときに癒やし系のキャラクターを見てホッとした経験があり、心の妖精がモチーフのオリジナルキャラクターもつくりました。院内はぬくもり、温かみを大切にした木目調にして、受付や診察室のテーブルは天然の一枚板を採用しました。待合室はリラックスできるよう座り心地にも配慮し、できるだけ人と視線が交わらない造りとなっています。
薬は「心の湿布」。患者の価値観を尊重した治療を
診療の特徴についても教えてください。

治療の基本は、まずは対話です。話すことで悩みを吐き出し、気持ちを落ち着かせること。そして生活や職場の環境調整や、ゆっくり休んで療養することも大切です。しかし時間的な制約もあり、現実的には難しい場合があります。そのようなときは薬物療法も必要になってきます。精神科のお薬に対して「怖い」「癖になる」といったネガティブなイメージがあり、「できれば飲みたくない」と言われる方も多いです。若い方は特に「薬なんか飲まなくても」と、気合と根性で治そうとされる方も多いですし、その気持ちもわかります。しかし、適切なお薬を内服することが早期回復、つまり苦しい時間を短くすることにつながると考えています。
治療で薬を用いる際に心がけていることはありますか?
患者さんによくお話しさせていただくのは、「精神科のお薬を特別視しないでほしい」ということです。心が疲れているときは症状に合ったお薬を飲み、良くなったら止められるということを強調しています。「心の湿布」や「転ばぬ先のつえ」だと考えて内服していただけるとうれしいです。当クリニックでは、依存性がある薬は使いません。「シンプルで飲みやすい処方」を意識しています。1日に1回の服用で済むものや、半錠などごく少量から処方を始めることがほとんどです。治療の一手段としてお薬の良い点や懸念点をお伝えし、患者さんの価値観を尊重した上で、治療の方向性を一緒に決めていくようにしています。
実際にどのような患者さんが来られていますか?

20代から30代の社会人の方や学生の患者さんがほとんどで、女性の方が多いです。相談内容は、仕事や学業で抱えたストレスに伴う症状で、例えば不安な気持ちが続く、人間関係がうまくいかないといった心の不調から、不眠や頭痛、流涙、動悸や吐き気、めまいがするというような体の不調に関するお悩みが多いです。精神科や心療内科の受診をためらう方は、いまだ少なくありません。ですが「様子を見よう」と後回しにするのではなく、心や体に異変があれば、早めに受診して治療を受けることで、早期回復に結びつけることができます。悩みに向き合い、踏ん張ってしまうのが人間の性ではありますが、無理に頑張りすぎないで、一人で悩まず受診していただきたいです。だからこそ受診のハードルを下げる工夫を凝らしています。
受診しやすさや通いやすさにもこだわられているのですね。
初診での訪れやすさはもちろん、来なくなって調子が悪くなることを避けるためにも、通院しやすい体制を整えることにはこだわっています。例えば、土曜診療やウェブ予約を取り入れているほか、オンライン診療も開始しました。ウェブ予約は現在、再診の方のみ対応しておりますが、今後は初診の方にも対応していけるよう、システムの改良を重ねていこうと考えています。患者さんにとって電話をすること自体がすごくストレスになると思いますので、勇気のいる精神科の受診に対し、一歩踏み出しやすい環境でありたいです。
「もっと笑顔を、もっと幸せを」のコンセプトを実現
オンライン診療も行われていくのですね。

鹿児島には離島が多く、島に住まわれている方は簡単に精神科を受診できません。また、大都市圏とは違い公共交通機関が十分とはいえず、通院手段のない方もいます。心が疲れている方に、遠方から通院してもらうのは酷なことです。そういった方々をオンライン診療でフォローしていきたいと考えています。一方対面診療は、実際にお会いして感じられる患者さんの雰囲気など、得られる情報量が違いますので、オンライン診療を基本とする中でも、定期的な対面診療を織り交ぜながら、より良い医療を提供していきたいです。
患者さんとの対話で大切にされていることをお聞かせください。
礼節を保ちながらも、親しみやすさを感じてもらえるような対話を心がけています。私と話すことでお悩みが解消されて元気になってもらえるように、患者さんに寄り添いながら、支えていきたいと考えています。来院時は心がきつくても、最後は笑って帰ってもらえるように、普段ならば出せない感情をあらわにできる環境を提供していきたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

お一人で悩まず、気軽に相談に来てください。また元気になった後も症状がぶり返さないために、しばらくはクリニック通うことをお勧めしています。病気であるかどうか以前に、悩みがあるから来るという感覚でかまいません。いらしていただいたからには責任を持って治療します。社会復帰を一緒にめざしながら、寄り添い支えて応援していきます。精神科だからといって忌避感を持たず気軽に来られるような敷居の低いクリニックをめざして日々診療にあたっていますので、安心していらしていただけるとうれしいです。心のマッサージを受けに来るような気持ちでお越しください。お待ちしております。