亀谷 貴浩 院長の独自取材記事
ここみクリニック
(広島市中区/八丁堀駅)
最終更新日:2024/07/11

広電1号線の八丁堀電停から徒歩2分、百貨店や飲食店、オフィスが立ち並ぶ広島の中心地で、2023年10月に開業した「ここみクリニック」。ストレス社会に生きる現代人の心身ともに支えたいと、内科だけでなく心療内科も標榜している。天然木材のルーバーが印象的なモダンで洗練された待合室には、居心地の良いカフェのようなカウンター席もあり、眼下に街を眺めることができる。亀谷貴浩院長は、現在もゴルフで活躍する爽やかなスポーツマン。場所柄、若い世代の来院が多いこともあり、気軽になんでも相談できる先生といった感じで好感が持てる。そんな亀谷院長に、クリニックの診療の特徴について話を聞いた。
(取材日2024年6月14日)
頭痛や吐き気、腹痛が、実は心の病気という可能性も
内科と心療内科の2つを標榜しているのですね。

心と体はつながっているため、内科の症状と心理的な症状は密接な関連性があります。頭痛や吐き気、腹痛などさまざまな身体的症状は体の臓器だけでなく、心の問題が関係していることも少なくないのです。逆に心の問題だと思っていたら実は身体的な病気だったということもあります。私はもともと内科出身で、内科の中でも家庭医療を専門にしているのですが、日本の診療科は、例えば、循環器や呼吸器、腎臓、胃腸、そして精神といったように臓器別に分かれており、どうしても診療科の垣根があります。「心の治療」の大切さを感じていても、勤務医のままでは内科と精神科の両方の観点から患者さんを診ることが難しい面がありました。そこで、心療内科クリニックや精神科病院でも勤務した経験を生かし、内科・心療内科の架け橋になるようなクリニックを開業しました。この2つを標榜しているクリニックはまだ少なく、それが当院の特徴であり強みだと思います。
先生のご専門である「家庭医療」はどんな医療なのでしょうか?
「家庭医療」という言葉は聞いたことがない人もいるかもしれません。欧米では浸透している考え方で、領域としては総合診療やプライマリケアと似ています。その中でも家庭医療は、患者さんや地域との関係性を重視し、予防医療、複数疾患の併存、心理社会的問題なども含めて、包括的に対応していく医療になります。例えば、地域のかかりつけ医には「おなかが痛い」「呼吸が苦しい」「皮膚がかゆい」など、さまざまな相談が寄せられますが、それに対して「私は専門外なので診られません」「あちらの科に行ってください」という対応では患者さんは困ってしまいます。なので、「どんな症状でも診ますよ」という総合的な診療の技術や知識がある医師でないと務まりません。もちろん、より専門的な治療が必要であれば、基幹病院などと連携しますが、その判断も含めて、かかりつけ医として家庭医療を行う医師は、まず相談に応じる入り口となる重要な役割を担っています。
精神疾患に興味を持たれたきっかけを教えていただけますか?

内科は薬による治療になります。薬というものは臨床試験が行われ、そのデータをもとにしたガイドラインがあって、こういう症状だったらこうする、こういう検査数値だったらこうするといったように、治療手順が決められています。その手順どおり進めていけば安心なのですが、逆にいえば、流れ作業だと感じるときもありました。しかし、精神疾患の治療はそうではありません。患者さんによってバックグラウンドが全然違いますし、症状も本当にさまざまです。昨日まで良かったと思ったら、いろいろなことがあってまた悪化してしまうなど、治療ルーティンの予測もつきません。そういった予測不可な症状にいかに臨機応変に対応していくか、医師としての力量や個性が出せます。また、引きこもりなどで社会から遮断されている方に社会復帰していただくというのも医師としての醍醐味だと思います。
できるだけ薬を使わず、否定的な考え方の「癖」を矯正
心療内科での診療方針についてお聞かせください。

当院では薬をできるだけ使わずに、認知行動療法などで「考え方の癖」を矯正していくということを大事にしています。自分はなんて駄目なんだろう、自分が頑張らないといけない、といった自虐的ともいえる思考や生きづらい気持ちに焦点をあて、まず、なぜそうなったのか原因を考えます。おおまかに原因は、抑圧的な家庭環境もしくは学生時代の極端ないじめ体験などが影響している場合が多く、トラウマ体験のケアをしていきます。今現在の自分の考え方は自覚している患者さんが多いのですが、なぜそうなったのか過去の原因まではたどり着くことは一人では難しいです。そこを導いて、最後はどういう考え方をしたら楽になるか、ストレスに対して抵抗力が上がるのかをレクチャーします。根本的な自分のストレス耐性を上げて、健全な自己愛を身につけていくのです。
診療で心がけていることは何でしょう。
患者さんの話を丁寧に聞くことです。あとは患者さんのニーズをくみ取ることですね。薬を使いたくないという方が圧倒的に多いのですが、中には早く改善したいということで薬を希望される方もいます。患者さんのニーズが、できるだけ薬を使いたくないのか、症状改善のスピード重視なのか、また、話を聞いてほしいのか、仕事を休みたいだけなのか、仕事を続けながら治療したいのか、個々の患者さんの希望によって、医師側のサポートの仕方が変わってきます。また、食事の栄養バランスや睡眠など、生活習慣のアドバイスもしています。初回の診療は基本的には血液検査をして、精神的な症状を来す原因を内科的な視点でも診ています。
患者層について伺います。

心療内科だと、10代、20代前半の患者さんが多いですね。会社員の方や学生さんも来院されます。不登校なども最近はかなり若年化している印象で、小学校に行きたくないという小学生のお子さんもいます。若い世代の患者さんの中には、心の傷が深く、カウンセリングが必要な方も多いです。逆に40代、50代の患者さんは、仕事のストレスや家庭のトラブルなどの悩みが多いですね。大人の患者さんは比較的改善まで時間がかからない印象です。一方、内科を受診される患者さんは、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスなどの感染症、花粉症、高血圧症、糖尿病など、症状は多岐にわたります。診療のほか、健診やワクチン接種なども行っています。
ホームドクターとして、心と体のさまざまな不調を診る
予約やお会計などオンライン化されていて便利そうですね。

予約や問診などはオンラインで可能ですし、カードを事前にインターネット登録していただければ支払いもオンラインでできます。予約から事前問診、チェックイン、会計までシームレスにオンライン化しています。外来診療については、仕事の合間に立ち寄られたりする患者さんもいますし、心療内科だとあまり長居したくないという患者さんもいらっしゃいますので、できるだけ診療が短時間で済むように配慮しています。支払い方法もクレジットカード払いやQRコード決済など充実させています。
ところで、休日の趣味などを教えていただけますか?
趣味はゴルフやランニングです。平日の夜も毎日走っています。ゴルフや駅伝の医師の全国大会というのがあるのですが、県の代表として大会に出たこともあります。スポーツはメンタル面にもプラスに作用するので、患者さんにもお勧めです。運動によって夜もぐっすり寝られるようになりますし、食事も取れるようになります。また、人とコミュニケーションを取る上でもスポーツは良い練習になりますよ。
今後のビジョンをお聞かせください。

体や心の症状を含め、「町のお医者さん」として、小さなお子さんから、働き世代、高齢の方まで、そして頭のてっぺんから足の先まで、あらゆる年代のあらゆる症状を医師としてサポートしていきたいです。どんな些細なことでも構いませんので、一度お気軽にご相談いただければと思います。診療では再診率に着目していて、初診で来てくれた患者さんが3回通院してくれる率を70%以上キープすることを目標としています。3回以上来院の患者さんが多いということは、当院を信頼してくださっている患者さんが多いという証になると思うんです。また、今後は分院もつくっていきたいですね。内科を診て心療内科も診る診療スタイルは当院の大きな強みだと思いますので、当院の取り組みや考え方をさらに広げていきたいです。