山崎 麻由子 院長の独自取材記事
やまざき漢方内科診療所
(久喜市/東鷲宮駅)
最終更新日:2026/08/04
土に近い暮らしをしている人は、生命力が強い。腎臓内科の専門家として長年入院患者と向き合う中で得たその確信が、埼玉県久喜市に2023年に開院した「やまざき漢方内科診療所」の礎となった。院長の山崎麻由子先生は、日本内科学会総合内科専門医や日本東洋医学会漢方専門医など複数の資格を持ち、西洋医学と東洋医学を融合させた診療で患者一人ひとりの困り事に丁寧に向き合う。田園風景の残る穏やかな環境にたたずむ同院は、敷地内に雑木の庭を設け、院内には国産の木をふんだんに用いたぬくもりある空間が広がる。「患者さんがいらっしゃるだけでお元気になるような場をつくりたいんです」と明るい笑顔で語る山崎院長に、独自のコンセプトや診療への思い、今後の展望を聞いた。
(取材日2026年7月1日)
患者の声に導かれたどり着いた「土に近い診療所」
まずは、先生が医師の道を志されたきっかけを教えてください。

小さな頃から、食べた物が体の中でどう変化するのか不思議に思うなど、人体の仕組みに強い興味がありました。そんなある日、母がケガをして近所のクリニックで処置を受けた時、幼い私は怖がるどころか、目の前の処置に夢中で見入っていたんです。すると処置を行っていた先生に、「将来お医者さんになれるね」と声をかけていただいたのがとてもうれしくて、それが原点になっています。父は歯科医師でしたが、私は人の体全体を診る医師になりたいと思い、東京女子医科大学に進学しました。卒業後は腎臓内科を専門に選び、慢性期の患者さんと長くお付き合いする診療を重ねてきました。病気を抱えながらもその方らしく暮らせるようなお手伝いをしたいという思いは、勤務医時代からずっと変わっていません。
漢方にも深く携わるようになったきっかけを教えてください。
学生時代、月経痛がひどくて婦人科を受診したことがありました。そのとき処方された漢方薬は、ただの痛み止めとはまったく違う、体が心地良く整うよう促されていくような感覚があり驚いたのです。漢方への関心はその時から始まりました。一方、腎臓内科の外来では、検査データを中心に診療を進める場面が多いのですが、患者さんが本当に訴えたいのは「今こういうことで困っている」という日々の不調だったりします。例えば、「口が苦い」と毎回おっしゃる方がいて、検査では異常が見つからないため、それ以上の対応ができないのです。そんなジレンマを感じていて、漢方なら何かできることがあるかもしれないと考えるようになりました。そうして、内科系の専門医資格を一通り取得したタイミングで、母校の漢方専門部門に国内留学し、本格的に学ぶことにしたのです。
開院にあたって、どのようなクリニックを思い描かれましたか?

薬で治療するだけではなく、場所そのものが患者さんを癒やすような医療の形を実現したいという思いがありました。勤務医時代、患者さんの中でも普段から畑仕事をされている方は、とりわけ生命力が強いと感じていたんです。また、患者さんが届けてくださった野菜のおいしさに驚いたことも、土の力に目を向けるきっかけになりました。土壌の微生物の多様性と人間の腸内環境はとてもよく似ていて、自然に近い暮らしが本来の治癒力を引き出してくれるのではないかと考えています。敷地内には土中環境から整えた雑木の庭を設け、四季折々の自然を感じられる空間にしました。来た時にふっと元気になれる場をつくりたい。その思いを込めて「土に近い診療所」というコンセプトにしています。
体の「通訳者」として、一人ひとりに寄り添う診療を
こちらで提供している診療の特徴を教えてください。

当院は内科・漢方内科・腎臓内科の3つの診療科を設けています。クリニック名から漢方のイメージを持たれがちですが、一般的な内科疾患や腎臓の専門診療もしっかり行っています。診療で一番大切にしているのは、まず患者さんのお話をじっくり伺うことです。例えば、「血圧の薬を一生飲み続けるのは避けたい」とおっしゃる方にも、まずはなぜそう思われるのかをお聞きしています。糖尿病や腎臓病の病気があったり、ご家族に脳梗塞など血管の病気が多い方には薬を使って治療したほうがいい場合がありますし、介護のストレスで血圧が上がっている方なら、薬で血圧を整えながらストレスには漢方で対応するという選択肢もありますからね。背景やお気持ちを伺ってみないと判断できないことがほとんどですので、どんなお悩みでもまず一度お話を聞くことを大切にしています。
特に重きを置いている考え方はありますか?
漢方には「養生」という考え方があり、私はこれをとても大事にしています。巷には健康情報があふれていて、「こうしなければ」とがんじがらめになっている方が少なくありません。例えば、3食きちんと食べなきゃと無理をして、かえって胃の調子を崩している方もいらっしゃいます。そんなとき「2食でも良いんですよ」とお伝えするだけで、気持ちが楽になられることがあるんです。私は自分の役割を、患者さんのお体の通訳のようなものだと思っています。世の中の情報がその方に合っているかは、お体を診てお話を聞いてみないとわかりません。西洋医学と漢方の両方の視点を持てることが当院の強みですので、検査の数値だけでなく食事や暮らし方も含め、その方に合った形を一緒に考えていきたいと思っています。
患者さんが心地良く過ごせるよう、工夫されている点を教えてください。

病院に来るだけでも緊張して血圧が上がってしまう方は多いので、いらした時よりも少し肩の荷を降ろして帰っていただけるような診療を心がけています。受付から診察、薬の受け取り、お会計まで、一連の流れすべてが心地良いと感じていただける場でありたいですね。院内には調剤室を設けて、診察後にそのまま薬をお渡しできるため、薬局に立ち寄る手間が省けます。漢方薬はメーカーによって特性が異なりますので、院内で処方できるとより適切な選択につながりやすいという利点もあります。また、血圧などの測定はあえて機械任せにせず、看護師や検査スタッフが手で測り、お話を聞いてから診察に入る流れにしています。そうしたやりとりの中に、生活の様子や体の小さな変化など大切な情報が見えてくることが多いからです。
来るだけで元気になれる場を、この地域に
スタッフの皆さんについてお聞かせください。

スタッフを募集した時、一番大切にしたのは「人が好き」かどうかでした。本当に温かいスタッフがそろってくれたと思っています。みんな些細なことにもよく気がつき、患者さんにとても優しく対応してくれるんです。受付で患者さんと世間話をしたり、診察前にちょっとした相談を受けたり、そうしたやりとりの中で自然と笑顔が生まれて、患者さんが笑いながら帰っていく。そんな良い流れができていると感じます。開院以来一人も辞めずに続けてくれていることも、うれしいことですね。
今後、どのような取り組みに力を入れていきたいですか?
診療だけにとどまらず、食や自然を通じた健康づくりにも取り組んでいます。今年は友人が育てた大豆を使って味噌作りのワークショップを開きました。また、患者さんから「このすてきな待合室で、障害がある子の親御さんが集えるサロンをつくりたい」とご提案をいただき、近く実現する予定です。また、敷地内には果樹も植えていて、お子さんたちに「今これがなってるから食べて帰っていいよ」と声をかけることもあります。植物の専門家を招いての観察会なども計画中です。食や自然、人とのつながりを通じて健康への関心を高めていただく、そういう広い枠での医療を少しずつ実現できたらと思っています。無理をせず、細くても長く地域に寄り添い続けることを大切にしていきたいですね。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

「こんなことで来ていいんですか?」と遠慮される方が少なくないのですが、冷え性や生理痛など、些細に思えるお悩みでも、ご本人にとっては日々の暮らしに支障が出るほどつらいこともあります。不調は不調ですから、どうか気にせずご相談いただきたいと思っています。初診のお電話でも「こういう相談で行っていいんでしょうか」と尋ねてくださる方が多いのですが、同じようなお悩みで来られる方はほかにもたくさんいらっしゃいますのでご安心ください。何でも治せるわけではありませんが、まずはお話を伺って一緒に考えていきますよというスタンスでお待ちしています。体のことで少しでも気になることがあれば、お一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。

