千葉 春子 院長の独自取材記事
かえでの杜クリニック
(札幌市中央区/山鼻9条駅)
最終更新日:2024/10/07

札幌市電・山鼻9条駅から徒歩2分、札幌市営地下鉄南北線・中島公園駅から徒歩7分と、利便性の良い街の中心部にある「かえでの杜クリニック」。獨協医科大学卒業後、北海道大学病院などで長年リハビリテーションの診療に携わってきた院長の千葉春子先生が、理学療法士である夫と2023年に開業した。リハビリテーション科に加え、一般内科疾患もトータルで診療できるように内科も標榜している。「季節ごとに違った彩りを見せてくれるカエデの葉に、人々の各世代ならではの美しさと通じるものを感じ院名にしました」と千葉院長。患者が自分らしく生活できるようサポートしていきたいと話す千葉院長に、診療内容や患者への思いなどを聞いた。
(取材日2024年8月30日)
在宅療養の患者の体調・身体機能を手厚くサポート
最初に、リハビリテーションの分野に進んだきっかけを教えてください。

医学部に入学後、病気を患った祖母の様子を見て、治療や施術に興味を持ったのを覚えています。大学を卒業し、医師として働き始めた頃、患者さんの喉に挿入していた管を替える治療に携わったのですが、交換後の患者さんの第一声が、私の名前だったんです。私の手を握り名前を呼んでくれたことは今でも忘れられません。また、研鑽を積んでいく中でリハビリテーションについては、疾患などでできなくなってしまったことを再獲得していくという、人の尊厳に関わる治療であると気づきました。さまざまな経験を経て、リハビリテーション、特に嚥下障害について深く学ぶようになりました。
大学病院で働いておられたとのことですが、なぜ開業されたのですか?
北海道大学病院のリハビリテーション科に入局後、かなり長く同じ場所で働いていたので、環境を変えたいと思うようになっていきました。育児休暇中にほかの病院に一時的に勤務した際に、訪問診療に携わる機会があったんです。患者さんのお住まいの様子や家での過ごし方をじかに見たことで、リハビリテーションと在宅医療の関わりの深さを実感し、在宅医療に関わりたいと思うようになったんです。母が訪問診療専門の歯科医師でしたので、私も以前から開業を勧められてはいたのですが、リハビリテーション科医の開業はあまり多くはないので躊躇していました。そんな時、理学療法士である主人が一緒に開業しようと背中を押してくれたんです。主人とは長年一緒に仕事をし、患者さんに対する姿勢やめざす方向が一緒なので、二人三脚で頑張っていこうと思い切って開業しました。
リハビリテーション科とともに内科を標榜されているのは珍しいのでは?

そうかもしれませんね。リハビリテーションが必要な患者さんの多くは内科疾患を抱えているので、一つのクリニックで治療できれば患者さんの負担が軽くなると考えたんです。昔に比べて在宅療養の患者さんがかなり増えており、家で過ごすとなると内科の加療とリハビリテーションの両方が必要なので、時代のニーズにも合うと思いました。在宅療養の患者さんを内科的にも、運動機能面や生活機能面からもサポートしています。内科は風邪などの一般内科疾患を診察していて、内科診療のみ受診される患者さんも多いですし、オンライン診療も可能です。リハビリテーションについては、要介護認定を受けている方の通所リハビリテーションと、通院困難な場合の訪問リハビリテーションの両方に対応しています。
それぞれの患者の目標に合わせた治療プランを提供
リハビリテーションというと、患者さんの運動機能にアプローチするというイメージがあります。

単に運動機能に働きかけるだけではなく、先ほども少しふれましたが、基本的動作の能力を少しでも取り戻すまでがリハビリテーションの目標と考えています。例えば、「立って足を動かせるようになり、転ばずに歩行できるようになる」、「おかゆを食べることができるようになり、次に白飯など固形物を食べることができるようになる」といったことです。初期の脳梗塞などはこのような流れでできることを一つ一つ増やしていきます。訪問リハビリテーションでは、主に自転車などを用いた有酸素運動や筋力増強訓練、日常生活動作訓練を行っています。筋肉がまひしている部分にボツリヌス毒素製剤を用いた注射療法を行い、さらにストレッチを続けるというように、内科治療などのアクションにリハビリテーションをプラスし、症状の改善を図っています。
どのような流れでリハビリテーション治療を行っているのですか?
できるだけ多くの患者さんを診たいですが、診療の質を維持したいので、通所リハビリテーションは一度に3人まで診療しています。訪問リハビリテーションについては、初回に私が体の動きや生活状況を細かく見させてもらい、診療内容を精査します。約3ヵ月ごとに目標を立て、私が達成状況を確認し、ケアマネジャーさんや患者さんと話し合いながら目標をブラッシュアップさせていくんです。「訪問リハビリテーションで上向きになってきたので通所に移行」、「通所と訪問のリハビリテーションを週1回ずつ」、「冬だけ訪問リハビリテーションを受診」など、柔軟に対応しています。治療プランの選択肢の幅が広いのは、リハビリテーション科医の強みではないでしょうか。
リハビリテーションの治療において大切にしていることを教えてください。

当院の患者さんに対しては、入院中のリハビリテーションなどとは異なり、例えば自力でトイレに行くことをめざすなど、生活に直結するリハビリテーションを行うことが多いです。ですから、それぞれの患者さんで治療内容や方法がまったく異なる、完全にオーダーメイドのリハビリテーションになります。そのため、患者さんやご家族などから細かくお話を伺い、できるようになりたいことや思いをきちんと吸い上げることが大切です。お話をもとに、どこまで伸びしろがあるのか、能力を上げることができそうなのかを分析し、治療計画に反映しています。
多様なニーズに応える「小回りの利く医療」をめざす
開業して時間がたちましたが、開業して良かったと思うことは何ですか?

患者さんからの「ありがとう」という言葉がモチベーションにつながっていますね。特に開業してからは、患者さんに近い環境で診療できているメリットを日々実感しています。多くの患者さんは、入院先の病院や整形外科クリニック、前の勤務先などからの紹介を通していますが、中には自分からリハビリテーションを受けたいと来院される患者さんもいます。それぞれの患者さんと診療を通して良い関係を築いていきながら、長くお付き合いしていきたいですね。
今後の展望を聞かせてください。
内科については生活習慣病の予防、さらには、女性医師であることを生かして女性向けワクチンや女性の健康の推進に取り組んでいきたいと考えています。街の中にあるので、働く世代の健康に貢献できればと思っています。また、基本的には私がすべての業務をこなしていますが、患者さんの数が順調に伸びているので、周辺業務をスタッフなどに担ってもらうことも視野に入れています。環境を変えても医療の質を維持できるよう、自分のペースを大切にしながら、患者さんの幅広いニーズに臨機応変に対応できる「小回りの利く医療」を続けていきたいですね。私自身も体が資本なので、以前から勧められている筋力トレーニングにもっとしっかり励みます(笑)。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

当院では、一人ひとりの患者さんに対し、丁寧に診察させていただくことを心がけています。ただ、患者さんに余計なストレスをかけないように、決済など診察以外のことはできるだけスピーディーに済ませるよう努めています。待ち時間を最小限に抑え、非接触を心がけていますので、内科・リハビリテーション科ともに診察は完全予約制です。予約制というと身構えてしまうかもしれませんが、空きがあれば当日でも診察します。札幌以外のエリアからも通いやすい場所にありますし、訪問リハビリテーションは定山渓を除く札幌市内全域をカバーしていますので、なんでも気軽に相談してほしいですね。