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大橋 博樹 院長の独自取材記事

多摩ファミリークリニック

(川崎市多摩区/登戸駅)

最終更新日:2020/06/26

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登戸駅から徒歩約5分の場所にある「多摩ファミリークリニック」は、内科と外科、小児科を中心に、家族全員の健康に関与する「家庭医療」に注力するクリニック。研修医時代に家庭医療という分野を知り、「町のお医者さんとして家庭医療に特化したドクター」の必要性を強く感じてこの道を志したという大橋博樹院長。2010年の開院以来、医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、事務スタッフなどさまざまな職種との連携で家庭医療を提供し続けてきた。3世代、4世代で通う家族も多く、患者ニーズのみならず、地域ニーズに応える取り組みにも余念がない。患者の言葉に進んで耳を傾ける大橋院長に、家庭医療の特徴や同院での取り組みについて聞いた。
(取材日2016年2月19日/再取材日2020年3月17日)

世代を問わず、家族全員の健康を見守る「家庭医療」

家庭医療について教えていただけますか?

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日本で「かかりつけ医」と呼ばれる町の先生方は、もともと何らかの専門をお持ちで、循環器や消化器などのトレーニングを受け、大学病院や市中病院で活躍された後に地域医療に携わります。僕ら家庭医療を専門とする医師は、最初から地域で一般的な病気全般を診断できるよう3年間のトレーニングを受けています。現在、国内でこのトレーニングを受けた医師はまだ多くないようですが、アメリカでは40年以上の歴史を持つ医療分野です。何を専門にしようかと悩んでいた研修医の頃にそのことを知り、アメリカのミシガン大学へ見学に行きました。アメリカでは約2割の医師が最初から家庭医療を専門として選んでいます。僕らは、家庭医療に携わる医師を「家族全員のお抱えの医者」と呼んでいますが、子どもの診察から高齢者の訪問診療まで行うため、最初から地域の中で育ててもらうということが一つのコンセプトになっています。

家族みんなで同じ病院に通えるというのは便利ですね。

当院では、3世代で通っておられるご家族が多いですが、4世代にわたる世帯も診させていただいています。訪問診療も行っているので、年配の患者さんのお宅で診察を行い、その場でお孫さんの予防接種の相談を受けて帰ってくるということもありますね。家族全員を診ていると、家庭環境の変化によって生じる病気にも気づきやすいです。たとえば、義理の両親と同居している方が風邪をひいて来院されたとします。僕たちは患者さんの家族も診ているので、風邪の原因がお義父さんの介護疲れからきているのではないかと判断できます。そこで、患者さんが休息できる時間をつくるための一歩踏み込んだ提案ができることもあります。こういったことができるのは、家族全員を診ている僕たちの強みだと思います。

家庭医療を専門とする医師の育成にも注力しておられますね。

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現在も2人の先生が当院で勉強されていますよ。医師たちは、年齢を問わず診察していくことになりますので、対応できる分野を広くしなければなりません。しかも、地域の人々が羅患しやすい病気に関しては、病院で行っている診療と同じような内容で提供する必要もあります。当院でトレーニングを受ける医師たちは、これまで大学病院など大きな病院で過ごしているので、ここではさらに実際的なトレーニングを行います。例えば、訪問看護ステーションや行政など、さまざまな機関との連携をスムーズに取る訓練や、患者さんの話を聞く技術を学びます。医療技術はもちろんですが、医師として患者さんや他の医療機関の人に信頼してもらうことも必要です。

家庭や地域全体というズームアウトの視線で病気を診る

診療の際に心がけていることは何ですか?

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患者さんと接する際に、一人の人間として接することを大切にしています。長年会社の役員として一生懸命働き、部下からも尊敬されていた方が、高齢で寝たきりになってしまったとしましょう。すると、病院では年下の医師や看護師から「おじいちゃん」と呼ばれる場合があります。でも、こうした呼び方で人によっては傷つけてしまうことがあるんです。もちろん、フレンドリーな接し方を好まれる方もおられるので臨機応変な対応が必要ですが、最初は誰に対してもきちんとした態度で接するようにしています。また、医師一人ですべてを抱え込むとスムーズに対処できなくなることもありますので、看護師や薬剤師、医療事務といったそれぞれの立場でアンテナを張り巡らし、患者さんの変化で気づいたことをお互い共有するようにしています。

患者さんとの印象深いエピソードがあれば教えてください。

幼い子どもから年配の方まで診察しているので、ご家族の出来事に寄り添わせていただく機会は多いですね。例えば、当院で乳児健診を行っていた赤ちゃんが小学校に入学したり、通ってくれていた当時は高校生で避妊や性病に関することをお話ししていた子が、最近無事出産したという話も聞きました。その患者さんの家庭では、おじいさんを当院で看取らせていただきました。世代の移り変わりをご家族と一緒に経験させていただけるのは、本当に貴重なことだと感じています。緊急で往診に行く場合、家族もすっぴんだったり部屋着のままだったりすることもあり、医師というよりも家族や親戚のように感じてくれているのかなと思うこともあります。気軽に話せる関係を築けているのはうれしいことですね。

まさに家族全員を診るお医者さんですね。

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正直、医師がここまで家族のプライベートな部分に踏み込んでも良いのか迷うこともありました。しかし、「先生に聞いてもらってよかった。ここで診てもらってよかった」と言われることもあります。そういう感想を聞けたとき、自分たちの診療スタイルが受け入れられていると実感できます。現在の医療は専門分野に分かれているので、特定の部分にズームインの視線になりがちです。もちろんそれは病気をくわしく調べる上で大切なことですが、家庭医療では家族や地域という視点、いわばズームアウトの視線で病気を診ます。こういうクリニックも必要なのではないでしょうか。

地域包括ケアに関わる人たちをワンチームに

薬剤師や看護師に相談できる窓口を設けていらっしゃるそうですね。

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主に薬の相談やチェックを行うため、薬剤師が患者さんの相談に応じています。例えばめまいを訴えている患者さんに対して、そのめまいが実は以前に処方した不整脈の薬の副作用であったとか、口の中の苦さの原因が目薬だったということが薬剤師への相談でわかったこともあります。薬剤師は薬のエキスパートなので、医師である僕たちも支えられていますね。また、赤ちゃんの離乳食をどのように与えたらよいのか、おむつの選び方や取り替える頻度はどれくらいかといった相談は、女性の方が話しやすいこともありますよね。そこで、看護師専用の相談の窓口を設けて患者さんが何でも話せる環境をつくっています。医師、看護師、薬剤師、医療事務にはそれぞれの職種独自の専門性を患者さんに向けて発信することがいい結果につながると考えています。

さまざまな職種によるチーム力もこちらの強みですね。

当院では、医師、看護師、薬剤師のほか、ソーシャルワーカー、事務スタッフ、ドライバーなど、多職種のスタッフがいますが、それぞれの視点だからこそわかることを大事にして、結果として一つの方向性に向かっていくことが重要だと考えています。患者さんのニーズだけでなく、地域のニーズにとことんこだわっていきたいと考えると、医師だけでそれを担えるとは思えません。例えば、終末期にどのような医療やケアを受けるかを事前に家族や医師と話し合う「人生会議」においても、医師だけではななか難しく、いろいろな立場の人に聞いたり、一人の人間として聞いたりして、チームとして関わっていくのが大事なのかなと思います。そのチームビルディングも重要になってくるので、当院では、スタッフ全員が忌憚なく意見を交換し、コミュニケーションを取るための取り組みも行っています。

最後に今後の展望をお願いします。

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子どもから大人までを診療する当院だからこそ、本当の意味での地域包括ケアを多摩地区で実践するお手伝いをしたいと思っています。地域包括ケアというと、どうしても高齢者だけのものというイメージがありますが、地域包括ケアを受けるべき人は例えば障害がある方、医療ケア児、そういう方にももっと光を当てて診ていくことも含まれます。当院だけで何かをやるのではなく、多摩地区の地域包括ケアに関わる人たちをワンチームにしていく取り組みや仕掛けをつくっていきたいと思います。

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