大橋 博樹 院長の独自取材記事
多摩ファミリークリニック
(川崎市多摩区/登戸駅)
最終更新日:2026/06/25
登戸駅から徒歩5分ほどの場所に位置する「多摩ファミリークリニック」。2010年の開業以来「地域のニーズに応えること」をモットーに、医師を中心としたスタッフ体制を拡充。内科と小児科、外科の外来と訪問診療の両面から地域住民の健康を支えている。家族全員の健康に関わる「家庭医療」の専門家である大橋博樹院長は「常に地域の皆さんのニーズに反応し、それに応えられるよう変化していくクリニックでありたい」という。その結果、訪問診療やオンライン診療を含む診療面はもちろん、子育てママのサポートや健康相談など、さまざまな活動を展開している。そんな大橋院長に、家庭医療や同院での特徴的な取り組みについて聞いた。
(取材日2026年2月25日)
専門にとらわれず、家族単位で診る「家庭医療」を実践
まずはクリニックの特徴を教えてください。

当院は赤ちゃんからご高齢の方まで、ご家族全員の健康をワンストップで支えることをめざして2010年に開院しました。インフルエンザや胃腸炎などの感染症をはじめ、アレルギーや生活習慣病、呼吸器疾患、腰痛・膝痛などの整形外科疾患、打撲や切り傷の処置まで幅広く対応しています。大きな特徴は、家族医療を専門とする医師が複数在籍していることです。「かかりつけ医」と呼ばれる町の先生方の多くは、循環器や消化器など特定分野で研鑽を積み、大学病院などで経験を重ねた後に地域医療に携わります。一方、私たち家庭医療を専門とする医師は、初めから地域で一般的な病気全般を診られるよう研鑽を積んでいますので、「専門外だから診られない」ということはありません。どのような健康問題もまずは診療し、自分で治療できる範囲を見極めた上で、より高度な検査や治療が必要と判断した場合は専門病院へ速やかにご紹介しています。
家庭医療のメリットは何でしょうか?
当院には3世代、4世代で通ってくださるご家族も多いのですが、ご家族全員を診ていると家庭環境の変化による体調不良にも気づきやすくなります。例えば、義理のご両親と同居している方が風邪で来院された場合、その背景に介護疲れがあるのではと推察できます。単に治療するだけでなく、休息の時間をつくるといった一歩踏み込んだ提案につなげやすい点も家庭医療の大きなメリットです。また、当院では訪問診療も行っており、高齢の患者さんのご自宅でお孫さんの予防接種の相談を受けることも可能です。
最近はどのような患者さんが多いのでしょうか。

新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、社会活動が戻るにつれて、受診される患者さんの相談内容も広がってきました。発熱など感染症での受診は引き続きありますが、お子さんの便秘や発達に関するご相談、アレルギー症状や生活習慣病など、「これくらいで受診していいのか」と来院を控えていた方々が再び足を運んでくださるようになっています。ご高齢の方では認知症に関するご家族からの相談や、通院が難しくなり訪問診療へ切り替わるケースも増えています。病気の治療だけでなく、仕事や介護、住環境といった生活背景にも目を向け、患者さんやご家族がこの地域で安心して暮らし続けられるよう支えていきたいと思っています。
複数の医師と多職種が連携し、幅広い診療や活動を展開
複数の医師が在籍しているのも大きな特徴ですね。

はい。6人の常勤医師は全員が家庭医療の専門家で、診療に対する基本的な考え方を共有しているため、チームとして一貫した医療を提供できることが大きな強みです。一人の医師が継続して同じ患者さんを診ることは変化を見逃さない点で重要ですが、複数の医師が関わることで多角的な視点から診療できるというメリットもあります。また、外来は医師4人体制を基本とし、午前は4診、午後は2~3診と診察室を複数稼働させています。こうした体制により、例えば乳児湿疹では薬を処方するだけでなく、塗り方やご家庭でのスキンケアまで具体的にお伝えするなど、一人ひとりと丁寧に向き合う時間を確保しています。さらに、複数の医師が在籍しているからこそ、訪問診療にも力を注ぐことができています。
訪問診療についても教えてください。
医師・薬剤師・看護師・ソーシャルワーカー・事務・ドライバーで構成された多職種チームで、患者さんとご家族の療養生活をサポートしています。24時間365日体制で、がんやALS・パーキンソン病といった神経難病、脳卒中後遺症、認知症といった病気で通院が難しい方のほか、人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、痰の吸引といった医療的ケアが日常的に必要なお子さんへの訪問診療にも対応しています。また、近年は腹膜透析の在宅管理にも力を入れています。腎不全が進行すると透析療法が必要になりますが、血液透析は週に数回医療機関へ通う必要があります。一方、腹膜透析は自宅で行うことができ、生活の質を維持しやすい治療法です。ご本人・ご家族の負担をなるべく軽減し、住み慣れた場所で自分らしく生活を続けるにはどうすれば良いのか、皆で考えながらその時々で最善の方法を探していければと思っています。
医師や看護師以外にも、さまざまな職種の方が活躍されているのですね。

はい。当院では、医療を通じて地域の課題やニーズに応えることを大切にしています。そのため、医師や看護師だけでなく、介護・福祉・行政など多機関・多職種との協働で、さまざまな活動に取り組んでいます。院内に助産師による子育て相談、薬剤師の服薬相談、ソーシャルワーカーの医療福祉相談などの相談窓口を設けるとともに、町内会のお祭りや老人会にも足を運び、地域の皆さまのニーズをくみ取るよう努めています。また、この地域では回復期病棟を持つ病院が限られているため、急性期治療後すぐに在宅療養へ移る方も少なくありません。そこで、訪問診療を行う医師や看護師、ケアマネジャー、ホームヘルパーらと情報を共有し、ショートステイなどの社会資源も活用しながら支援の方法を一緒に考えています。介護事業所や行政とも協力しながら、誰もが安心して暮らせる地域づくりを進めていきたいですね。
充実したチーム体制で、地域のニーズに応え続ける
診療の際に心がけていることを教えてください。

患者さんやご家族と、一人の人間として向き合うことを何より大切にしています。例えば、長年会社で責任ある立場を務め、周囲から信頼されてきた方が、高齢となり寝たきりになったとします。医療現場では「おじいちゃん」と呼ばれることがありますが、医療者側は親しみを込めたつもりでも、その一言がその方の尊厳を傷つけてしまう場合もあります。状況に応じた柔軟さは必要ですが、まずは誰に対しても敬意を持って接することを心がけています。また、医師一人で抱え込まず、スタッフと役割を分担しながら、それぞれの立場で気づいた変化を共有し、チームで患者さんを支えるようにしています。
ところで、なぜ多摩エリアで開業されたのですか?
登戸駅近くにある川崎市立多摩病院の立ち上げに関わったことがきっかけでした。当時は自分で開業するつもりはありませんでしたが、担当していた患者さんから「近くに物件があるから開業してほしい」と背中を押され、決意したのです。開業当初は小児科クリニックが少なく、患者さんの多くはお子さんでしたが、地域の高齢化が進むにつれて在宅医療へのニーズが高まり、訪問診療を開始しました。さらにコロナ禍を機にオンライン診療を導入し、腎不全患者さんの増加から腹膜透析の在宅管理にも取り組むようになりました。自分たちの理想を追うというより、地域や患者さんの声に応え続けた結果、今の形になったと感じています。これからもニーズに合わせて形を変えながら、地域とともに歩んでいきたいと思います。
最後に、読者にメッセージをお願いします。

今や高度な医療は大きな病院でしか受けられないという時代ではなくなり、在宅でも必要な医療を受けられるようになりました。治療後の生活や経過まで長く支えられることは、医師としての大きなやりがいでもあります。子どもから高齢の方まで診る当院だからこそ、多摩エリアで本当の意味での地域包括ケアを実践していくことが使命だと考えています。年齢や病気の有無に関わらず、困ったときにまず相談できる存在となれるよう、これからもまい進してまいります。私たちで対応できない場合も、次につながる道をご提案します。どうぞお気軽にご相談ください。

