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加茂 力 院長の独自取材記事

登戸内科・脳神経クリニック

(川崎市多摩区/登戸駅)

最終更新日:2020/04/01

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登戸駅から徒歩5分。「登戸内科・脳神経クリニック」は、一般内科の診療に加え、クリニックでは珍しいとされる神経内科の治療が受けられるのが特徴だ。大学や大規模病院でも手腕を振るってきた神経内科の医師、加茂力院長のモットーは「スペシャリストかつゼネラリストの医師であること」。パーキンソン病患者向けの地域包括ケアシステム構築にも取り組んでおり、穏やかで機知に富んだ語り口の中には、地域医療発展への熱い情熱も感じられる。専門の神経難病の話から長年の夢だという宇宙旅行の話まで、たっぷり語ってもらった。
(取材日2018年2月8日)

スペシャリストとゼネラリスト、両方を満たす医師に

まず、クリニックの特色から伺います。

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当院は風邪など一般内科の初期診療と、神経系疾患の専門的治療を行うクリニックとして2011年に開業しました。もともと私はこの近くの川崎市立多摩病院で脳神経内科の医師として働いていたのですが、長年診てきた患者さんを今後もきちんと診続けられる環境で開業しようと、この地を選びました。中にはもう30年以上の付き合いになる人もいるんですよ。脳卒中や神経難病の患者さんが多く通うため、院内はバリアフリーを徹底しました。車いすの方もストレスなく通えるよう移動が楽な造りにし、2階には広いリハビリテーション室を設けています。器具にもこだわり、車いすに座ったまま足の運動ができる先進機器を導入しています。

こちらではどのような診療を行っているのですか?

私の専門である神経内科の患者さんは大きく2つに分かれます。1つは脳卒中の方です。入院施設はないので、生活習慣病の管理など、主に退院後の継続的治療を行っています。もう1つは神経難病といわれるパーキンソン病や脊髄小脳変性症、アルツハイマー型認知症の方などです。通常、神経内科は大きな病院でしか診てもらえず、通うのに時間も労力もかかって大変ですが、ここならもう少し気軽に通っていただけるでしょう? それが開業した一番の目的です。他にはてんかんのお子さんや、頭痛でお悩みの若い方も多く来られます。もちろん一般内科も診ますし、川崎市立多摩病院の先生方による脳卒中予防の専門外来、循環器内科の診療、生活習慣病の外来なども受けられます。最近では訪問看護ステーションや居宅介護支援事業も開始し、医療と介護の連携強化を図っています。

診療モットーを教えてください。

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神経内科のスペシャリストとして、また総合診療のできるゼネラリストとして、両方を併せ持った医師であることです。神経内科の疾患は原因がわかりづらいので、患者さんの多くは「最近歩きにくくなった」など漠然とした自覚症状で来院されます。ですから、多角的な観点から診療する力はとても大切です。また、パーキンソン病などの神経難病は長く付き合っていかなければならない病気ですから、10年、15年と診る間にその方が風邪をひいたりがんになったりすることもあります。そのため神経内科のみならず全般的に診療できるゼネラリストでなければなりません。最近、「ロコモ」という言葉をよく聞くようになりました。ロコモティブ症候群の略称ですが、よく転倒するのは必ずしも運動不足が原因ではなく、実は神経難病による可能性もあり得ます。原因は何なのかを、常にスペシャリストとゼネラリスト、双方の目で解明していく必要があると思っています。

工学部から異色の転身。今も抱く宇宙への憧れ

先生はなぜ医師をめざされたのですか?

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高校時代は物理と数学をとても得意としていたので、実は最初は工学部に入って情報科学を専攻していました。人工知能について学んでいたのですが、そこで出会った親友が僕よりもできることに気づきショックを受けてしまって。それにIT関係は機械相手になりますが、僕はもっと人間を相手にしたかった。ちょうどその頃、大脳の生理学に興味を持ったこともあり、2年で中退して医学部に入り直しました。そして神経内科の授業を聞いた時、「進むべき道はこれだ」とすぐに確信。自分では来るべくしてここまで来たという感じです。

宇宙飛行士に応募されたこともあるそうですね。

神経内科を学んで宇宙飛行士になるのが僕の夢だったんです。実際に宇宙開発事業団NASDA(現・JAXA)が募集していた宇宙飛行士に応募したこともあります。でも願書を出した2週間後に耳の病気になって入院してしまい、泣く泣く断念しました。それでも宇宙への思いは消えず、神経内科で専門に学んだ脳神経の血液循環に関する「脳循環」と、宇宙医学を組み合わせ、宇宙で脳循環がどうなるのかといった実験のアイデアを考え出したりもしました。それは実際にソ連が1986年に打ち上げたミール宇宙ステーションの中で行われたんですよ。どういう人が宇宙飛行士に適しているかを調べる実験をしたこともあります。何かを強く願えばかなうものです。今もまだ、宇宙旅行をしたいという夢は諦めていませんよ。いつか実現してみせます。

今までで印象に残っている患者さんはいますか?

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パーキンソン病の患者さんが肺炎を患い、一時期入院された後、胃ろうで栄養を摂取し、尿道カテーテルを入れている状態で退院されたことがありました。在宅で療養することになったのですが、その間神経内科の医師が診る機会がなかったため、パーキンソン病に関する適切な薬剤治療ができず、寝たきりの状態が続いてしまって。しかし、あるケアマネジャーが気づいて当院への受診を勧めてくれ、薬剤を調整したところ3ヵ月くらいで元気になって、今では料理教室にも通えるくらいに回復されました。薬の使い方次第でパーキンソン病の症状はものすごく改善することもありますから、諦めないことが大切です。専門の医師でなければ見極めが難しいことも多く、例えば神経難病を患っているのに気づかず老人ホームに入られている人もいらっしゃるのです。見逃しを避けるためにも、クリニック間や介護施設との連携は大切です。

神経難病への理解をさらに広める

リハビリテーションにも力を入れているそうですね。

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はい。リハビリテーションというよりむしろ「運動」と捉えていて、施設でしかできない運動をしながら自宅でできる運動法も指導しています。医療保険と介護保険をうまく組み合わせて、より充実したトレーニングができるように考えています。訪問リハビリテーションにも注力していて、自宅を訪れる際にはつまづきやすい場所はないかなど、家庭内に隠れた「阻害因子」を排除することも意識していますね。現在日本には神経難病患者専用のリハビリテーションを学ぶ場が少ないので、その機会を増やすことが今後の課題です。当院のスタッフも国際神経学会に論文を発表したりして、日々知識や技術の向上に取り組んでいます。また、治療や機能回復訓練に関して大切なのはご家族の理解です。患者さんの病状に最も気づきやすいのはご家族ですから、診療のうち約4割は家族へ向けて話しています。病気のことを理解していると、患者さんの気持ちもずいぶん違いますしね。

地域包括ケアにも積極的に取り組んでおられるとか。

今、パーキンソン病の患者さんに特化した地域包括ケアシステムをつくっているところです。パーキンソン病の方は長年地域に住みながら治療を続けていくので、医療・介護のさまざまな専門職や関連団体、住民が関わる地域包括ケアをまさに必要としています。そのため医師のみならず、看護師やケアマネジャー、ヘルパーらも交えた研究会を開き、知識の共有を図っています。以前留学していたデンマークのコペンハーゲンでは、普通のスポーツクラブに健常者と障害のある方がいて、ともにプールに入ったりスポーツを楽しんだりして、当たり前のように地域で暮らせる環境が整っていました。そういう環境をしっかりつくって差し上げたいという思いもあります。

読者へのメッセージをお願いします。

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神経内科に自力でたどり着くのはなかなか難しいことだと思います。例えば「匂いがわからなくなった」という症状で、神経内科に行こうと思いつく人は少ないでしょう。夜中の寝ぼけや幻覚も、神経内科の病気である可能性がありますが、そうとは思わずに心療内科に行く方もいらっしゃいます。そのような方が少しでも早く病気を発見し、適切な治療が受けられるよう、今後もクリニック間や関係機関との連携を強めていきたいと考えています。医師である以上、患者さんを診療することが原点であり、終着点。これからもきちんと患者さんと向き合い、心を込めて診療していきたいと思っています。

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