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加茂 力 院長の独自取材記事

登戸内科・脳神経クリニック

(川崎市多摩区/登戸駅)

最終更新日:2024/04/12

加茂力院長 登戸内科・脳神経クリニック main

登戸駅近くの「登戸内科・脳神経クリニック」は、大学病院や地域の基幹病院で長く脳神経内科に従事し、日本神経学会神経内科専門医でもある加茂力(かも・つとむ)院長が、「身近な場所で脳神経内科分野の専門的な治療を提供したい」との思いから2011年に開院。加茂院長は「私が専門とするパーキンソン病などの神経難病は、加齢による体の衰え(フレイル)やロコモティブ症候群、認知症などと混同され、発見が遅れることが多い病気。患者さんが早期に専門の医療機関を受診できるよう、多くの方に神経難病のことを知っていただきたいのです」と熱く語る。患者の地域での生活をサポートするため、医療介護連携にも熱心に取り組む加茂院長に同院の特徴や神経難病の診療について詳しく聞いた。

(取材日2024年1月24日)

脳神経内科の専門的な診療を身近な場所で提供

脳神経内科分野を中心に診療されていると伺いました。

加茂力院長 登戸内科・脳神経クリニック1

患者さんに身近な場所で、脳神経内科に関連した専門的な診療を提供したいと考え、当院を開院しました。私は大学病院の脳神経内科で長年診療し、川崎市多摩区にある川崎市立多摩病院の立ち上げから参加して、脳神経内科部長として勤務してきました。そうした経験をもとに、脳神経内科の患者さんを地域医療の中で診ていこうと思ったのです。当院を登戸駅近くで開院したのも、それまで病院で診てきた患者さんにも通いやすい場所でと考えたから。脳神経内科のほかに内科、循環器内科も開設し、患者さんの全身の健康管理にも対応可能です。当院1階は診療スペースに充て、2階は動きやすさと感染症対策を考えた広いリハビリテーション室で専門性の高いリハビリテーションを行っています。

脳神経内科ではどんな病気を診るのでしょうか?

根本的な治療法がわからず神経難病といわれるパーキンソン病、脊髄小脳変性症、重症筋無力症、多発性硬化症のほか、脳に関連したアルツハイマー型認知症やてんかんなどの患者さんが中心で、特に私の専門であるパーキンソン病の患者さんは多くいらっしゃいます。加えて、ほかの病院で脳卒中を治療した患者さんのフォローも行っています。神経難病では筋力の低下、体が動かしにくい、飲み込みにくい、発音しづらいといった身体機能の低下、行動の変化などの症状が見られ、生活の質が大幅に悪化してしまいます。同時にご家族の介助・介護の負担も増えるため、早めに病気を見つけて、専門家による適切な治療を受けることが大切。診断の際にMRI、CT、脳波検査などが必要な方については、連携する川崎市立多摩病院で検査を受けていただき、その結果をもとに診断します。

こちらで行っている治療について教えてください。

加茂力院長 登戸内科・脳神経クリニック2

神経難病は薬で病気の進行の抑制を図り、症状を緩和させるための治療が一般的です。当院では、神経難病の診療経験が豊富な私が、患者さんに適した薬物治療をご提案します。特にパーキンソン病は近年効果が期待できる治療薬が多く開発されており、仕事や家庭に復帰していただくことも十分に望めます。また、パーキンソン病に対するデバイス補助療法(DAT)、脳卒中後の体のこわばりを緩和するためのボツリヌス治療も行っています。さらに神経難病や脳卒中による身体機能の低下に対し、その回復・維持に向けて理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が連携して専門性の高いリハビリテーションも行っています。また、通院が難しい脳卒中治療後の患者さんには訪問リハビリテーションも可能です。

認知症にも似たパーキンソン病を適切に診断・治療

パーキンソン病の症状にはどんなものがありますか。

加茂力院長 登戸内科・脳神経クリニック3

手や足の震え(静止時振戦)、体の動きがゆっくりになる、筋肉が硬直する、転びやすくなる(姿勢保持障害)といった運動症状は比較的知られていると思います。加えて、やる気が出なくて動けない、夜間の不眠や日中に眠くなる睡眠障害、掃除のような特定の作業を延々と続ける、認知機能の障害、味覚や嗅覚の障害、過食など多様な非運動症状も起こります。高齢になると震えなど特徴的な症状がないパーキンソン病も見られ、専門家でないと診断が難しい病気なのです。このため加齢による体の衰え(フレイル)やロコモティブ症候群、認知症など別の病気と混同され、発見が遅れて病気が進行してしまうことも少なくありません。ご家族や周囲の方がこうした病気と思える症状になったら、一度「もしかしたらパーキンソン病では?」と疑問を持っていただくことが早期発見に役立ちます。

デバイス補助療法などの治療法について教えてください。

パーキンソン病はドパミンという体内の神経伝達物質が減少して起こる病気で、それを薬で補って症状のコントロールを図る薬物療法が中心になります。ただ、飲み続けていると薬の見込まれる効果が持続しなくなる「ウェアリングオフ現象」が起きる場合があり、患者さんによっては手術で体にデバイスを装着して治療をサポートするDATの適応も考えられます。当院ではDATの一種で、脳に電気刺激を与える脳深部刺激療法を熟知した医師が外来診療を担当。病院での手術後、数ヵ月におきに必要となる専門的な調整を当院で行うことが可能です。また、当院では口から食べたり薬を飲んだりするのが難しい患者さんに対し、積極的な治療の一環として栄養と薬を摂取するための胃ろうもご提案しています。

リハビリテーションはどんな点が特徴でしょうか?

加茂力院長 登戸内科・脳神経クリニック4

身体機能が低下するパーキンソン病などの神経難病は、薬物療法とリハビリテーションの両輪での治療が重要です。当院は筋力の維持・増強、食べるときに誤嚥性肺炎を起こしにくい姿勢の指導に加え、神経難病特有の症状にも対応した専門性の高さも特徴です。例えば、体が傾いてしまう姿勢異常は本人のボディーイメージの不具合が原因のことが多く、患者さんの姿勢を少しずつ調整してイメージを元に戻していきます。歩行時に最初の一歩が踏み出せないすくみ足も、足を踏み出す場所を意識させることで改善が期待できます。また、発音の困難さや食事を飲み込む力の低下には言語聴覚士が対応します。当院のリハビリテーションスタッフは新たな知識の習得や発表にも非常に意欲的で、私の監修のもと研究の成果をまとめた英語論文を年2本ほど書き、医学専門誌などに投稿しています。

医療と介護の地域連携で神経難病の早期発見に尽力

病気の早期発見のために地域連携も重視されているそうですね。

加茂力院長 登戸内科・脳神経クリニック5

ええ、フレイルやロコモティブ症候群、認知症のような症状を見たとき、神経難病を疑って当院のような医療機関を受診していただくことが早期発見の鍵ですが、それには高齢の方に接する機会が多い介護スタッフや訪問看護師、総合診療を担う医師などの協力が欠かせません。そこで私は川崎市多摩区で医療と介護の連携を図る「PNT(Parkinson's disease Network in Tama)」を立ち上げ、多職種が参加してパーキンソン病の多様な運動症状・非運動症状の情報を共有し、グループワークでお互いの理解を深める活動を進めてきました。今では顔の見える関係も築けて互いに紹介しやすくなり、パーキンソン病の患者さんの早期発見に役立っていると感じています。

そのほかの外来診療についてご紹介ください。

当院はパーキンソン病に対するDAT、脳卒中後の体のこわばりを緩和するためのボツリヌス治療の外来診療を週1回のペースで行っています。それぞれの外来は当院と連携する大学病院で治療を行っている医師が担当するため、専門的な知見に基づく適切な治療が期待できるでしょう。また、脳卒中治療後の再発防止には生活習慣病の管理が必要なため、循環器内科や生活習慣病を診る外来も開設しています。このほか川崎市立多摩病院の医師による脳卒中予防の外来診療、神経難病に関連した不随意運動、睡眠時無呼吸症候群の外来診療にも対応しています。

地域の方にメッセージをお願いします。

加茂力院長 登戸内科・脳神経クリニック6

パーキンソン病をはじめ神経難病の症状は多様で、味や匂いがわからなくなる味覚障害・嗅覚障害、睡眠中に叫ぶ・暴れるといったレム睡眠行動障害、便秘・頻尿、むくみ、冷えなどの自律神経症状なども含まれます。体の動き、行動・感情のちょっとした変化を「年だから仕方ない」「認知症だろう」とすぐに決めてしまわず、神経難病を専門とする当院に一度ご相談ください。パーキンソン病にかかっても、適切な治療と周囲のサポートがあれば100歳まで生きることだってめざせる時代になっています。神経難病についてより多くの方に知っていただければ早期発見につながり、長生きができる患者さんはさらに増えると思います。

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