つらいときはいつでも相談を
緩和ケアで実現する自分らしい人生
れんげ在宅クリニック
(出雲市/大津町駅)
最終更新日:2024/08/30


- 保険診療
病気によってもたらされる肉体や精神、社会的な苦痛、そして「自分らしさ」を失うことのつらさ。患者が抱えるそれらの痛みと向き合い、さまざまな角度から解決を図っていくのが「緩和ケア」だ。終末期医療と結びつけられがちな緩和ケアについて、緩和ケア内科を専門とする「れんげ在宅クリニック」の花田梢院長は「病気の宣告や治療中に感じる不安や苦痛に向き合うのも緩和ケアです」と説明してくれた。必ずしも解決できる問題ばかりではない、そんな現実の中でも「患者さんとご家族の話をよく聴き、何ができるのかを真剣に考えること。そして、逃げずにそばで一緒に歩んでいくことが、私たちの役割です」と力強く話す姿が印象的な花田院長に、緩和ケアや、自分らしい人生を送る上で大切な「アドバンス・ケア・プランニング」について詳しく話を聞いた。
(取材日2023年10月23日)
目次
その人らしさを大切にし、つらい中にも穏やかさや生きていく支えを見い出す
- Q緩和ケア内科とは何でしょうか?
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A
▲「“寄り添う”より“逃げずにそばにいる”が近い」と、花田院長
まず、苦痛は、肉体的な苦痛、精神的な苦痛、社会的苦痛、そしてスピリチュアルペインの大きく4つに分けられます。社会的苦痛とは、仕事ができないことによる経済的不安や、社会参加の機会が失われることへの苦痛などが挙げられます。スピリチュアルペインとは「自身の存在意義の喪失」に伴う苦痛のこと。病気のために夢や人生の目標を諦めざるを得なくなった方がおられるとします。その方が抱える苦悩は想像を絶するものでしょう。複雑に絡み合う、そうした「痛み」を客観的に評価し、解決できるものは解決し、そして解決しづらいものがあっても、逃げずに患者さんのそばでともに歩んでいく。それが緩和ケア内科の医師が果たすべき役割です。
- Q末期がんやご高齢の患者さんの終末期医療とは違うのですか?
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A
▲患者の希望や抱えている課題を知るために面談や対話を重要視する
緩和ケアは何も、命の残り時間が少なくなったときに限ったものではありません。がんをはじめとした「深刻な病気を診断された時」から、緩和ケアの介入は必要だと思っています。患者さんの告知を受けたショックや、治療と生活の両立をどうするかといった悩みに向き合い、いかに穏やかで自分らしい日常生活を送っていけるかを一緒に考えていけるからです。肉体的な痛みを取ることはもとより、それ以上にどのようなアプローチができるかが、医師の技量の見せどころです。そのためには患者さんの話をよく“聴く”ことが大事。話し合う中で、その人にとって重要なもの、心の支えや活力となるものが見いだせれば、人はすごく強くなれると思っています。
- Qどのくらいのタイミングから相談してもよいものでしょうか?
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A
▲医療・介護のサービスや器具レンタルについても丁寧に説明する
ご本人が「つらい」と思ったタイミングでいいんです。早い段階で緩和ケアを開始したほうが、医療的な面でも良い状態をより長く保つことができるケースもあります。例えば、膵臓がんのような強い痛みのある病気の場合、神経ブロック注射などで早期から痛みを緩和できれば、副作用のある医療用麻薬の使用量を減らすことができます。また、治療を続ける上で、治療初期から痛みを緩和し、食事や睡眠をしっかりを取って体力を維持することはとても重要です。緩和ケアは、治療だけではなく、食事や睡眠のような生活に根差した課題の解決をめざす要素も大きいんです。抱えておられる病気や生活状況などを伺い、対応方法を一緒に考えていきます。
- Q治療以外での関わりとは、具体的にはどのようなものでしょう?
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A
▲自宅に出向いての訪問診療が行えるのも同院の強みだ
意外と知られていないものだと、「息苦しさ」の緩和でしょうか。心不全などで息苦しさを感じている患者さんには「温度と湿度を少し下げましょう。サウナと逆ですね」とお話しします。快適に過ごせるように生活環境を見直すことも緩和ケアの一環です。また、口から食事のできない患者さんが「一口でいいから食べたい」と希望された場合、摂食・嚥下に詳しい言語聴覚士や管理栄養士らと実現できる方法を考えます。食事は生きる喜びにつながりますし、何より家族の方も喜ばれますね。緩和ケアでは「ご家族は第二の患者さん」といわれ、ご家族も含めてケアをするのが大前提。相談に乗るのはもちろん、無理されていないか目を配りお声がけしています。
- Q自分らしい人生を送るために大切と思われることはありますか?
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A
▲出雲市が取り組む終活支援ノートも用い、人生設計について考える
「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の実践です。これは、すべての方に言えますが、将来的な変化に備えてご自身の人生と最期の選択について一度真剣に考えておいてほしいのです。ご本人がしてほしいこと、してほしくないこと、そして見落としがちなのがその方の価値観を一番示してくれる「その理由」について、意思疎通できるうちにはっきり伝えておく。治療方針や積極的な生命維持治療の是非などの希望を残しておくのは、自分らしい人生を送るために必要なだけではなく、ご家族の苦悩や後悔を少しでも軽くしてあげるためにもとても重要です。ACPについては、島根県のサイトにも有益な情報が載っているのでご参考いただきたいです。