永尾 征弥 院長の独自取材記事
ふじさわ脳とからだのクリニック 脳神経外科・内科
(藤沢市/藤沢駅)
最終更新日:2023/11/14
藤沢駅から徒歩5分のところにある「ふじさわ脳とからだのクリニック 脳神経外科・内科」。脳神経外科と内科を掲げ、頭痛やめまい、物忘れや生活習慣病など幅広い症状に対応している。院長の永尾征弥先生は、大学病院や救急病院で主に脳卒中の治療にあたってきた、いわば「脳の専門家」。脳卒中の多くは背景に高血圧や糖尿病などの生活習慣病があることから、「脳の専門家が体全体を診る」をテーマに掲げ、大きな病気を引き起こさないための診療を心がけている。「患者さんお一人お一人の些細な困り事から向き合いたいと思っています」と、話す永尾院長に、体全体を診る上で大切にしている考えや診療方針などについて話を聞いた。
(取材日2023年9月29日)
必要な検査のみ行い、患者に負担のない診療を
脳神経外科を選んだ理由、開業するまでのご経歴など教えてください。
富山医科薬科大学、現在の富山大学の医学部を卒業し、大学の医局や救急病院などで、20年ほど脳神経外科医として勤務をしてきました。脳に興味があった、というのが脳神経外科を選んだ一番の理由です。理由としては単純ですが、人間のすべてを司る脳というものに非常に関心があり、専門的に学びたいと考えました。勤務医時代は、救急、特に脳卒中の治療が最も多かったですね。また、脳卒中を発症し救急車で運ばれる患者さんの場合、背景には生活習慣病など何らかの持病を抱えていることが多くあります。そうした病気を持つ患者さんが入院した際は、持病の管理も他の診療科の先生と協力しながら行ってきました。
どのような理由から、藤沢市を開業の地に選んだのでしょうか?
神奈川県は、医局の人事で来て以来10年以上勤務していました。開業にあたっていろいろと場所を探していたのですが、クリニックを運営していく上で重要な、連携できる医療機関が周囲に充実していることが、ここを選んだ決め手の一つですね。それから、藤沢市の環境や雰囲気が良くて将来こんな街に住みたいなと感じたというのもあります。実家が静岡県で海の近くなので、自然と海の近くに惹かれていたのかもしれません。
開業にあたり、クリニックの設備などでこだわった点はありますか?
脳神経外科の診療で関係してくる検査機器というと、CTとMRIが挙げられます。当院ではCTを導入しており、これにより多くの病態のスクリーニングができます。また、MRIは正直申し上げると導入と維持にかなり高額なコストがかかるため、どうしても経営上検査数を増やす必要性が出てきてしまいます。患者さんにとって身体的にも費用的にも負担が少なくて済むように「不要な検査をしない」という方針もあり、あえて導入を見送っています。もちろん、症状によってMRI検査が必要な患者さんも当然いらっしゃいますので、その際は徒歩圏内の医療機関でスムーズに検査が受けられるようしっかりとした提携体制をとっています。「“画像検査では問題ないので経過観察”というような診療は絶対にしたくない」というのが私のポリシーでもあります。そのような私がめざす理想の医療ができる場所ということで、開業地を決定したという側面も大きいです。
「脳の専門家が体全体を診る」をテーマに
クリニックの診療方針や特徴についてお聞かせください。
当院は「脳の専門家が体全体を診る」をテーマとしたクリニックです。先ほどお伝えしたとおり、開業する前は脳卒中を主に診療してきましたが、脳卒中の原因を探ると、生活習慣病が背景にあることが非常に多いです。高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病、それから喫煙などの生活習慣ですね。それらによって動脈硬化が進み、脳卒中となって救急車で運ばれてくる……そんな患者さんを多く治療してきた経験から、そうなってしまう前に、もっと早期から治療に介入する必要性を感じるようになりました。脳卒中は治療できる病気ではありますが、多くの場合後遺症が残り、最悪の場合は命を落としてしまいます。人間の健康が悪化していく時間軸を考えたときに、最終的な「救急車で運ばれて手術をする」という状況をいかに防ぐか、そうした観点から、「脳の専門家として体全体を診る」というテーマを掲げています。
悪くなる前の早い段階から、常日頃のケアをしっかり行う必要性を感じたのですね。
もちろん、脳卒中が起きてしまった患者さんを治療、手術する医療者は大切です。しかし、そうならないことを逆算し、適切な医療をいかに患者さんに提供できるかが、地域のクリニックとしては極めて重要だと考えています。健康診断で何か問題があったとしても、多くの方が自覚症状がないために放置してしまいます。もしかしたら、その段階で治療をしなかったことで、10年後、20年後に症状がさらに進み、大きな病気になってしまうかもしれません。目の前の症状を治療するだけではなく、健康な人生のために長期的な視点で体全体を診る、そんなクリニックにしていきたいと思っています。
開業して感じる勤務医時代との違い、やりがいなどはありますか?
病院に勤務していた時は、私個人というよりは、病院の名前や規模に信頼を置いて来てくださる患者さんが多かったと思います。この病院なら大丈夫と来てくださった方に対して、その日に外来担当だった自分が診療をする、または救急搬送された当日の担当が自分であった、という感じです。一方で、開業してからは、クリニックのホームページで私のメッセージを見て、医師としての私個人を頼ってわざわざ足を運んでくださる方もいるため、より一層、身が引き締まる思いがします。また、病院勤務の時は外来では脳以外のご相談は他の診療科を紹介していましたが、今は、できる限りお一人お一人に寄り添って、その患者さん全体のことを私自身が理解するという意識もより強くなりました。そういった意味で、さらに勉強が必要ですし、いい意味で新鮮な緊張感のある毎日ですね。
治療継続ができるよう、オンラインで通院の負担軽減も
オンライン診療も行っていると伺いました。
例えば、頭痛や慢性疾患で通院している方では、オンライン診療はいろいろとメリットがあります。初診の患者さんの場合は、直接診察しないとわからないことが多いのでオンラインは向いていませんが、再診でお薬をもらうために定期的に通っている患者さんなどの場合は通院負担を減らすことができます。また、お仕事や家事などが忙しく通院できない方や、認知症患者さんで通院することが大変な方などでも有用です。定期的な通院が難しいために治療をやめてしまうのであれば、治療を継続する手段としてもオンライン診療は一つの選択肢として有用と考えます。
クリニックとしての今後の展望や将来に向けてやりたいことなどありますか?
まず一つは、特にご高齢の方の生活全体を支えていけるように、地域の介護福祉施設などの職種の方たちと連携を深めていきたいと考えています。特に認知症患者さんの治療やケアにおいて医師だけでできることは限られてきます。高齢者を支える地域のいろいろな立場の方たちと情報交換しながら、より手厚いケアを提供していきたいですね。それからもう一点は、患者さんとしっかり向き合うクリニックにしていきたいと思っています。自分で責任を持って診ることができないほど大勢の患者さんに来ていただくよりは、お一人お一人に時間を割きながらお付き合いしていける規模感で診療していくことが理想です。クリニックの展望というよりは、私を頼って来院された患者さんに十分な医療を提供できるように、日々の診療を通して医療者として私個人の見識をさらに深めることが最終的な私の展望と考えています。
最後に、地域の方、患者さんへのメッセージをお願いいたします。
昔たいへんお世話になった先生に言われた、「修理屋のような医師になっては駄目だぞ」という言葉が、今でもずっと胸に残っています。その時は毎日大勢の患者さんが救急搬送され、次から次へと新しい患者さんに対応する日々でした。そんな日常に忙殺されて、医師として大切な、患者さんと向き合う気持ちをなくさないようにという意味だと思っています。多くの患者さんの困り事や悩み事に寄り添え、結果として何でも相談に来ていただけるようなクリニックとなり、長く皆さんとお付き合いしていきたいと考えておりますので、お気軽に足を運んでいただければと思います。