鈴木 英雄 院長の独自取材記事
つくば消化器・内視鏡クリニック
(つくば市/つくば駅)
最終更新日:2024/01/18
2023年7月に開院した「つくば消化器・内視鏡クリニック」は、胃がんや大腸がんなど、消化器系がんの予防医療と炎症性腸疾患の治療に特化したクリニック。筑波大学附属病院で、消化器内科を専門とする医師として多くの消化菅疾患の診療や内視鏡検査を行ってきた鈴木英雄院長が、「つくば市から胃がんと大腸がんで命を落とす人をゼロに」を目標に掲げて開院した。鈴木院長は、現在も筑波大学附属病院で月に何度か外来を担当。大学病院から徒歩1分という立地の良さから連携体制も盤石だ。専門の内視鏡検査では、患者に寄り添い、受診しやすい工夫を重ねる鈴木院長に、同院の特徴や医療への思い、今後の展望などについて話を聞いた。
(取材日2023年8月23日)
大学病院と同レベルの治療ができる環境を整備
開院までの経緯を教えてください。
1994年に筑波大学医学専門学群を卒業し、その後、大学病院や県内の基幹病院で、消化器内科の医師として研鑽を積みました。2005年からは、筑波大学大学院人間総合科学研究科消化器内科学で講師を務め、アメリカ留学を経て、帰国後は筑波大学附属病院つくば予防医学研究センターの設立に携わりました。私の専門は消化器内科ですが、大腸や胃など消化管の分野を得意としています。胃がんの原因となるピロリ菌を除去することで、胃がん防止が期待できるという事実から予防医療の重要性に気づき、がんの早期発見や生活習慣病の改善に取り組んできました。このような経験の中で、胃がんや大腸がんによって命を落とすことを防ぐための適切な環境が整っていないことを痛感したことから、クリニックの開院を決意しました。予防医療は、当院の大きなコンセプトの一つです。
炎症性腸疾患もご専門の一つと伺っています。
当クリニックのもう一つの柱は、炎症性腸疾患への対応です。指定難病に定められているクローン病や潰瘍性大腸炎など、炎症性腸疾患の患者さまに対してきめ細かく対応できるクリニックの数はまだ少ないのが現状です。炎症性腸疾患は増加傾向にあり、特に若い方に多い病気です。つくば市は学生が多く、他の自治体よりも平均年齢が低いことから、専門の医療機関に対するニーズは高いと思います。予防がなかなか難しい病気で、原因も定かでないことが多く、男女ともに20代が発症のボリュームゾーンです。ただ、治療方法に関しては、近年、選択肢が非常に増えています。点滴や飲み薬など新薬が毎年登場しています。当院では最新の情報を仕入れ、大学病院と同レベルの治療ができるよう環境を整えています。
大学病院との連携体制も整っているそうですね。
当院は、つくばエクスプレスのつくば駅からは少し離れていますが、筑波大学附属病院から徒歩1分の場所にあります。そういった意味で、ある程度安定した状態の患者さまの受け皿として機能できればと考えています。私は現在も大学病院で月に2~3回外来を行っているので、そこで安定した状態の患者さまを当院へ誘導したり、逆に重症化している患者さまを大学病院へ逆紹介するというかたちで、大学病院のサテライト的な外来の役割りも果たしていきたいと考えています。
細部にまで配慮して取り組む消化器内視鏡検査
院名にもあるとおり、消化器内視鏡もご専門の一つですね。
現在、診療は私一人で行っているため、午前中に3件の胃カメラ、午後に2件の大腸カメラ枠を設けています。おかげさまで、大腸カメラはすでに1ヵ月先まで予約が埋まっている状況なので、今後は枠を増やしていこうと考えています。当院では、眠るようなリラックスした状態で検査を受けていただけるよう鎮静剤を用いた胃カメラや大腸カメラにも対応しています。茨城県内には、鎮静剤で内視鏡検査を受けられる医療施設がまだ少ないこともあって、以前、胃カメラや大腸カメラでつらい思いをしたという方の来院も増えていますね。
鎮静剤以外にも検査を受けやすくするための工夫はありますか?
当院では、大腸カメラ用にトイレつきの専用個室を3部屋用意していて、他の人に気兼ねなくトイレを使用していただける環境にしています。家で下剤を飲んでいただくことも可能ですが、茨城県は車社会ですから、途中でトイレに行きたくなると大変ですし、万が一気持ち悪くなってしまった場合でも、院内であれば看護師がすぐに対応できるというメリットがあります。下剤の種類もいくつかそろえていて、味と剤型が異なる3つの下剤から好きなものを選んでいただけます。また、大腸カメラ検査では空気を入れて大腸を観察するため、おなかが張って苦しくなる欠点がありましたが、当院では空気より速やかに腸管に吸収されやすい炭酸ガスを用いて検査を行い、検査後のおなかの張りの軽減を図っています。
細かな部分まで配慮されているのですね。
最近、取り入れているところは多いようですが、内視鏡室にはブルーライト照明を導入しています。補色効果によって病変を認識しやすくなるほか、モニターへ照明の映り込みを防ぐことにもつながります。ブルーライトには、患者さまだけでなく医師もリラックスさせる効果もあります。また、当院では検査後に休んでいただけるリカバリースペースと電動のストレッチャーを3台用意していて、内視鏡室からそのまま起き上がらずに、同じベッドでリカバリールームまで移動できます。私自身も大腸カメラを受けたことがありますが楽な検査ではないので、一度検査を受けて2度と受けたくないと思う人が発生しないよう配慮しています。
つくば市で胃がんや大腸がんで命を落とす人をゼロに
診療で大事にされていることは何でしょう。
患者さんは一人ひとり皆さん困っていらっしゃる方ですから、患者さんに寄り添う医療を提供していきたいと考えています。当院は、豊富な知識と経験に基づいた安全な専門医療を提供すること、患者さまに寄り添った高いホスピタリティーを維持すること、そして、常に向上心を持って課題を解決していくこと、という3つの理念を掲げています。つくば市は、まだまだ検診の受診率が低いですし、炎症性腸疾患の患者さんが治療に満足されていないという面もあります。そういったことを改善できるように、われわれが少しでもサポートできればという思いで日々の診療にあたっています。
先生が医師を志され、消化器内科をご専門に選ばれたのはなぜですか?
私は小さい頃、よくケガをして、骨折で入院することも何度かあり、変な言い方になりますが医療にはなじみがありました。実家が歯科医院だったこともあり、医療が身近にあったことが医師を志したきっかけの一つです。消化器内科を専門に選んだのは、医師になりたての頃、内視鏡に興味を持ったからです。がんに関しては、診断から治療まで一貫できる科はなかなかありません。早期に限られはしますが、内視鏡で診断し、そのまま治療できるというところにやりがいを感じました。
地域にとってどのようなクリニックでありたいとお考えですか?
当院は消化器、特に予防医療と炎症性腸疾患に特化したクリニックです。炎症性腸疾患の方の中には休職を余儀なくされたり、結婚を躊躇される方もいらっしゃいます。炎症性腸疾患の患者さんが普通に社会生活を送れることをめざし、つくば市から胃がん、大腸がんをなくす。当院のこの2つの柱は、どちらも内視鏡が関わってくる分野です。また、つくば市医師会の活動では、がん検診について行政のほうからのアプローチもできるのではないかと考えています。他科のクリニックの先生方との周辺連携も進めていますので、今後は、総合病院のようなかたちでお互いに紹介できるシステムも構築していきたいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
家族にがんの人が多い、ピロリ菌が陽性である、便に血が混じるという方は、なるべく早く受診してください。バリウム検査や便潜血検査など、すでに検診で異常が見つかった方は、症状がなくてもぜひ受診していただきたいと思います。炎症性腸疾患については、診断がついているけれど、なかなか良くならないという方も受け入れています。一般的なおなかの不調には、胸やけや胃もたれ、便秘、下痢などさまざまありますが、このような症状がある方に来ていただければ、いろいろな検査、治療のアドバイスができると思いますので、気軽にご相談ください。