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胡 青余 理事長の独自取材記事

白石ともメンタルクリニック

(札幌市白石区/白石駅)

最終更新日:2024/08/27

胡青余理事長 白石ともメンタルクリニック main

白石駅より徒歩1分とアクセス良好な「白石ともメンタルクリニック」。広々とした清潔感あふれる院内には5つの診察室があり、それぞれの診察室は避難経路が確保され、かつプライバシーにも配慮した造りだ。理事長は「超がつくほどのおしゃべり」と話す中国出身の胡青余先生。エンジニアから医師になったという異色の経歴の持ち主で、気さくでユニークな人柄だ。白衣を着用しない方針で、患者に「自分は孤独ではない」と安心感を与えられる診療をめざしているという。医師の自分本位な医療よりも、地域が求める医療を提供したいと意欲的に語る胡先生に、開業の経緯や地域医療、診療に取り入れている漢方のことなどを聞いた。

(取材日2024年3月25日)

半導体関連会社のエンジニアから精神科医に

精神科医をめざしたきっかけを教えてください。

胡青余理事長 白石ともメンタルクリニック1

医師になる前に勤めていた大手半導体関係の会社の敷地内に歯科医院があり、勤務中に利用したことがありました。冗談のような話ですが、待合室でぼーっと蛍光灯を見ていて、「埃がついているなあ。掃除をしていないんだなあ。……医師になろうかなあ」と思ったんです。誰にも言えず、悶々とした状態で仕事に戻ったのを覚えています。そこから勉強を始めました。最初は小児科志望だったのですが、子どもが好きすぎて向いていないと言われたんです。インパクトが強いのか、変な人扱いをされて嫌われてしまうタイプ。結局、精神科を選んだのは、同級生の1人が精神科志望だったからです。勉強しなくても成績が良く、口達者で、彼に大きく影響を受けました。負けたくなかったのだと思います。

卒業後のご経歴を教えてください。

大阪大学医学部を卒業後、2年間は医局の関連病院に勤めました。その後、岩手県の病院に5年半、函館市の病院に1年半、札幌市のクリニックに6年半勤務しました。岩手県は、人口に対して病院の数が少なく、地方にいくほど医師不足が深刻でしたね。岩手県の病院での勤務後、精神保健指定医に合格し、幅広く診療する精神科医から自分の好きな分野の研鑽を積みたいと考えるようになりました。当時は認知症に興味があり、認知症病棟をつくるとのことで運良く函館市の病院から声がかかり、そちらに勤めることになりました。1年半、一般の精神科診療からは遠ざかり、認知症の患者さんを診療する外来だけを担当しました。こちらもたいへんやりがいがありましたね。

札幌市内のクリニックでも働かれたのですね。

胡青余理事長 白石ともメンタルクリニック2

はい。病院勤務時代は「外来でもう少ししっかりと患者さんを受け止めることができたら、入院させずに済んだかもしれない」と悔しい思いもたくさんしました。もっと外来でできることがあるのではと考え、早期発見・早期治療、より軽症の段階で症状を抑えることをめざすには町のクリニックだと思ったのです。朝から晩まで、常勤2人、非常勤2人の医師で患者さんを診ていました。私の性格上、来院される患者さんを断れないので、ものすごい数の患者さんを診ていましたね。そのクリニックの先生は「病状を悪化させないように導くのが腕の見せどころ。それが最近やっとわかってきた」とおっしゃっていて、当時60代後半の先生からそういう言葉を聞いて、たいへん影響を受けました。夜、みんなが帰った後に先生と2人でディスカッションをすることもよくありました。

エゴではなく、医療を幅広く提供するのが地域医療

地域医療を提供する立場として意識していることは何ですか?

胡青余理事長 白石ともメンタルクリニック3

自分のやりたい医療だけを提供しないことです。北海道は医師が少ないので、患者さんが診てほしい時に診てもらえないという問題が起こりがちです。自分が好きな分野だけを極めていたら、その分野以外が診られなくなる。それが嫌なのです。自分のエゴよりも地域が必要なことを提供するのが開業医の務めだと考えます。これこそが地域医療だと思うのです。そのためには「自分の専門分野外でもまずは診療する」「制限を設けない」ことが大事。実際、新型コロナウイルス感染症流行時には精神科の診療と並行してPCR検査を受けつけていました。地域のニーズと実際に提供される医療とのギャップをどう解決するかを考えた上での判断です。自分は精神科医であり、地域の医師。地域が必要とする医療を提供するのが、本当の意味での地域医療だと思います。

医師としてターニングポイントとなった出来事はありますか?

勤務医時代の出来事です。ある患者さんが夕方過ぎに来院されたのですが、さすがに遅い時間だったこともあり、病院側も明朝に診させてもらいたいと伝えて、一度お帰りいただく対応を取りました。ただ、その対応がその患者さんを追い込んでしまったと後々わかりました。自分が直接断ったわけではないのですが、あの時近くにいた私が診療しなかったことも事実です。「なんで診てあげなかったんだろう」「たった15分でも受け止めてあげられたら」と、今でも悔しくて仕方ありません。それから私は変わりました。まさにターニングポイントだったと思います。

精神科の役割は何だと思いますか?

胡青余理事長 白石ともメンタルクリニック4

人がつらい時に「とりあえず」のことでも何かを施すことだと思います。本来はきちんと段階を踏んで診断をしていくことが求められますが、状況や症状によっては適切ではないこともあります。大事なのは、その時必要とされる診断をして、今日できることをすること。話を聞くことだけが大事なのではありません。「何かあったら頼れる場所がある」「孤立無援ではない」「話を聞いてくれる人がいる」「今日からここのクリニックは自分の味方」と感じてもらうことや、安心感を抱いてもらえるように導くことが重要なのです。

東洋医学と西洋医学を織り交ぜ、一人ひとりの味方に

漢方診療にも力を入れていらっしゃるそうですね。

胡青余理事長 白石ともメンタルクリニック5

はい。漢方薬を処方するのは漢方薬でなら期待できることがあるからです。例えば、喉の違和感がある方が耳鼻咽喉科で調べると「ヒステリー球」「ストレス球」などと呼ばれる症状と診断されることがあります。東洋医学ですと、エネルギーの流れが悪くなって甲状腺のあたりで詰まってしまう「気滞」と呼ばれる症状です。耳鼻咽喉科では対応が難しい患者さんも、気の循環を改善するための漢方薬で症状の緩和が見込めることもあります。私は中国の上海出身で、小さい時から漢方は医療の1つとして身近にありました。もちろん患者さんのご要望をお伺いしますが、西洋薬は副作用として眠気が現れるものが多いので、眠気を引き起こさないほうが良い職業の方や高齢の方にもお勧めしています。西洋医学を軸に診るか、東洋医学を軸に診るかで、その患者さんの病状がまったく違って見えることもあり、両方の考え方を同時進行で頭の中に巡らせながら診療しています。

どういった患者さんが多いですか?

幅広い症状の方がいらっしゃいますが、特に認知症や統合失調症、不安症、うつ病、躁うつ病などが多いです。躁うつ病や統合失調症は長く通わないといけない場合もありますが、「自信が出てきたので、困ったらまた来ます」と言われることを楽しみに診療しています。私はおそらく、人一倍自分に自信があるほうだと思います。自信というのは、他人に分けても減りません。自分が与えられるだけ、自信でも希望でも分けて差し上げたい。人生捨てたもんじゃない、これからです。どれだけつらくても、今が谷底。地平線より下を向いているとどんどん暗くなります。せめて地平線と同じ、真っすぐ前を見るだけでも前向きな気持ちにつながるでしょうし、私みたいに口を開けて上を向いていたらより明るい気分になると思います。お話ししていく中で、自信や勇気を取り戻していっていただけたらうれしいです。

今後の展望を教えてください。

胡青余理事長 白石ともメンタルクリニック6

患者さんが診てもらいたい時に診てもらえない状態をなんとか解消したいので、もう少し医師が増えたらいいですね。北海道でそれが解消できたら、個人的には大阪市西成区のあいりん地区の精神医療を進めたいです。今は整備されてきてはいますが、まだ覚醒剤を服用した人への医療や福祉問題などの事態は深刻です。北海道よりも精神科医が必要な地域です。必要なところに必要な医療を提供するのが医師の役目。以前は早期発見のチャンスがあるのに精神科を受診しづらかったり、我慢してしまったり、患者さんに疾患の自覚がなかったりするケースも往々にありましたが、社会の精神科疾患への理解度も上がり、こちら側から来院を促してきたことも功を奏して、近年は早期治療が望めるようになってきました。当院も患者さんの力になりたいと思っています。困った時は気軽に足を運んでいただけたらうれしいです。

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