日ノ下 文彦 院長の独自取材記事
日ノ下医院
(京都市西京区/桂駅)
最終更新日:2026/06/17
阪急京都線・桂駅から徒歩4分、落ち着いた雰囲気の住宅地にたたずむ「日ノ下医院」。院長を務める日ノ下文彦先生は、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)を卒業後、アメリカ・ハーバード大学での研究や「国立国際医療研究センター(現・国立国際医療センター)」腎臓内科で務めた科長職など、約50年にわたり国内外で研鑽を積んできた。2023年には生まれ育った京都・桂の地に戻り、同院を開業。その豊かな経験と学識を地域医療に注いでいる。物腰やわらかな語り口ながら、診療の際に重要視している「人の命は地球より重い」という信念は揺るがない。年齢を重ねてもハッピーに暮らせる「老い楽」をめざすという独自の視点で診療にあたる日ノ下院長に、開業の経緯や診療への思いを聞いた。
(取材日2026年5月15日)
国内外で研鑽を積んだ専門家が、地元で挑む地域医療
まずは、こちらで開業された経緯を教えてください。

東京での仕事がひと区切りとなり、生まれ育った京都・桂の地で地域医療に貢献したいと考えたのがきっかけです。それまでは勤務医や研究医、大学の教官として、ほとんど関東で過ごしていました。地域のかかりつけ医としての臨床は自分にとっても新たなチャレンジで、それもまた楽しいと思えたんですね。せっかく京都に戻るのだからと、建物は京町家風にこだわっています。看板には胡粉という貝殻を砕いた白い顔料を使い、書道家の方に書いていただいた毛筆体の文字をあしらいました。院内も天然木の床や天井、やわらかな和風の照明で、料亭や旅館のような雰囲気にしています。トイレの洗面台に陶器のボウルを据えたり、2階にラウンジ風の待合スペースを設けたりと、細部まで心を配りました。
開業前は、どのようなご経験を積まれてきたのですか?
東京医科歯科大学(現・東京科学大学)医学部を卒業後、そのまま同大学院に進んで博士課程を修了しました。大学院では研究と並行して研修医としての臨床経験も積み、その後は腎臓を専門に選んでいます。慢性腎炎や腎障害、慢性腎不全、透析といった幅広い領域で臨床の研鑽を重ねつつ、さまざまな研究にも数十年にわたって取り組んできました。途中、アメリカ・ハーバード大学医学部の病理学教室に客員研究員として在籍し、腎炎のメカニズムを考える上で参考になる多くのヒントを得ました。その後は「虎の門病院」腎センター内科での勤務を経て「国立国際医療研究センター(現・国立国際医療センター)」腎臓内科で科長を務め、大学では教授として後進の指導にもあたるなど、臨床と研究の両面で研鑽を積んでまいりました。
臨床と研究の両面で研鑽を積まれたのですね。

はい。約30年前、漢方薬の芍薬甘草湯がこむら返りに有効ではないかと考え、漢方薬メーカーと協力してその研究に従事し、その有用性を確かめた上で普及に努めてまいりました。本院でも多くの患者さんにこむら返りの診療を行っています。2014年から7年間、厚生労働省指定のサリドマイド胎芽症に関する研究班の班長を務め、東京で2回サリドマイド胎芽症の国際シンポジウムを開催したほか、「サリドマイド胎芽症診療ガイド2020」を編纂しました。また、サリドマイド胎芽症についてはテレビや新聞での情報発信にも力を入れてきました。
「予防に勝る薬はない」、「老い楽」を見据えた診療
こちらではどのような診療を行っていますか?

当院では広く内科全般を扱っています。高血圧や糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症をはじめ、気管支炎や肺炎、喘息、心臓の疾患まで、内科やその周辺領域のことには幅広く対応できます。アレルギー科も標榜しておりますので、花粉症でお困りの方もおみえになりますし、腎臓の疾患で、近隣だけでなく遠方からも多くの方が頼ってこられます。患者さんは40代以降の方が中心ですが、多くの場合はご本人に目立った自覚症状があるわけではありません。健康診断で数値の異常を指摘されたとか、今後の健康管理を任せられるかかりつけ医を探しているとか、そういったかたちでおみえになるケースが大半です。検査をしたり診察をして初めてわかるタイプの病気がほとんどですが、長年の経験からさまざまな疾患を念頭に置いて、正確かつ迅速に病態を把握し的確に診断して適切な治療を行うよう心がけています。
日々の診療で、特に力を入れていることを教えてください。
私は「老い楽」という言葉を使っていますが、これは「年齢を重ねてもハッピーに過ごせる」という意味で考えた造語です。80代や90代になっても健康で、人に頼らず自立した暮らしを送れる。そういうライフイメージに導いていくことが、当院の診療の大きな軸になっています。そのためにまず大切なのは、中年の時期から適切な健康管理に取り組むことです。「予防に勝る薬はない」というのが私の一番の信念ですから、大した症状がなくても軽く見ず、高血圧ならしっかりコントロールし、糖尿病なら定期的に採血して数値を適正に管理していく。その積み重ねが、心筋梗塞や脳梗塞といった深刻な病気を未然に防ぐことにつながるのです。
腎臓内科の診療について、詳しく教えてください。

当院の腎臓内科で中心になっているのは、慢性腎臓病の管理です。透析が目前に迫っているという方もいらっしゃいますが、腎機能がやや低下している段階でおみえになる方も多いですね。慢性腎臓病は少しずつ悪化していくのが一般的なのですが、その進行をなるべく抑えることをめざして診療にあたっています。できるだけ透析をせずに過ごせるよう、腎機能を落とさないための生活上のコツをお伝えしたり、お一人お一人に合った薬をうまく選んだり、食事内容についてアドバイスしたりと、できることはたくさんあります。漢方医学も取り入れながら、これまで蓄積してきた知識や経験を生かして、その方に合った方法を探っていくのが私の強みではないでしょうか。
10年先も20年先も、健康に寄り添い続けて
長年の医師生活を通じて、これは変わらないというものはありますか?

「人の命は地球より重い」とホームページにも掲げていますが、これは勤務医時代から信念としてずっと持ち続けている言葉です。「国立国際医療研究センター(現・国立国際医療センター)」で科長を務めていたときにも同じフレーズを掲げていましたから、50年近い医師としての歩みの中で培ってきたものであり、開業しても変わることはありません。具体的には、いわゆる3分診療ではなく、ゆっくりお話を伺いながら丁寧に診察し、重篤な問題の芽を見極めて摘み取ることを大切にしています。病気をできるだけ早い段階で迅速かつ的確に見つけることも心がけています。スタッフにも、患者さんに丁寧に接すること、あいさつを大切にすることを日頃から伝えています。
今後、どのような医院をめざしていきたいですか?
当院を選んで受診してくださった方には、10年たっても20年たっても健康を維持していただきたい。それが一番の願いです。あくまで私は一地域の医師です。熱が出たから治療をして終わり、肺炎を治療して終わりという一過性の診療ではなく、ライフサイクルの終わりまで快適に過ごしていただけるよう、長く寄り添っていくことを大切にしています。内科の診断には自信がありますので、質の高い診療をこの先もずっと続けていきたいですね。専門の腎臓に限らず、幅広く内科系の診療を充実させながら、地域の皆さんに信頼されるかかりつけ医でありたいと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

繰り返しになりますが「予防に勝る薬はない」というのが私の一貫した思いです。高血圧にしても糖尿病にしても腎臓の病気にしても、目立った自覚症状がないからといって軽く見ず、できれば中年の時期から信頼できる医師のもとで定期的な健康管理に取り組んでいただきたいと思います。その一つ一つの積み重ねが、10年先20年先も健康で自立した暮らしを送るための大きな力になるはずです。当院では腎臓内科の専門性を生かしつつ、内科系の診療も幅広く行っていますので、ちょっとした体調の変化や健診の結果が気になるときにもお役に立てるのではないかと思います。年齢を重ねてもハッピーに過ごせる「老い楽」に向けて、これからもお手伝いを続けてまいります。

