アレルギーの専門家に聞く
アトピー性皮膚炎治療の今
えがおの森こどもアレルギークリニック
(川崎市高津区/高津駅)
最終更新日:2025/06/19


- 保険診療
強いかゆみを伴う湿疹ができ、悪化と改善を繰り返す「アトピー性皮膚炎」。集中力の低下や、見た目の変化によるストレスなどで日常生活が阻害され、生活の質の低下が懸念される疾患である。治療しても再発するイメージが強いため、「体質だから仕方ない」と思い込んでいないだろうか。実は、そうしたイメージは既に過去のものだ。アトピー性皮膚炎の治療法は飛躍的に進化しており、早期に介入すれば症状の「寛解」が期待できるようになってきているという。さらには、アトピー性皮膚炎をきっかけとして発症するその他のアレルギーの予防にもつながるという。アレルギーのエキスパートである「えがおの森こどもアレルギークリニック」の樺島重憲院長に、受診の目安や治療すべきタイミング、新たな治療などについて話を聞いた。
(取材日2025年5月13日)
目次
進化する治療法を適切に、かつ早期に取り入れ、症状の悪化や連鎖的なアレルギーの発症防止へ
- Qアトピー性皮膚炎はどんなときに疑うべきですか。
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A
▲乳幼児湿疹とアトピー性皮膚炎の違いについて話す樺島院長
生後1~2ヵ月くらいになると、赤ちゃんの肌に赤い発疹が現れることがあります。ほとんどの場合、この時期の発疹は、お母さんの脂の分泌が増えたことで起こる乳児性湿疹という肌トラブルで、病気ではありません。皮膚がガサガサになることはありますが、かゆみはそれほどなく、適切なスキンケアをしていれば生後3~4ヵ月頃に治まるでしょう。一方、アトピー性皮膚炎の場合、生後3~4ヵ月を過ぎても湿疹が消えず、頭や顔から手足へと広がってかゆがるようになります。おかしいな、と思ったら、ぜひ早めにクリニックを受診してください。
- Qアトピー性皮膚炎を疑ったら、何科を受診すると良いのでしょう。
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A
▲普段から相談できる医療機関をもつことも大切
小児科か皮膚科のどちらかですが、乳児性湿疹と迷うような乳児期の場合、皮膚だけでなく全身を診る小児科のほうが良いと思います。アトピー性皮膚炎は、食物アレルギーを合併していたり、成長するにつれて気管支喘息やアレルギー性鼻炎といったその他のアレルギーを次々と発症する「アレルギーマーチ」の起点になったりすることが多いからです。食物アレルギーがわかった場合に、安全な離乳食の進め方をアドバイスできるのもメリットではないでしょうか。なお、治療をしてもなかなか症状が改善しないときは、先進の情報に基づいた最善の治療ができるよう、アレルギーの専門家がいる小児科クリニックへのご相談をお勧めします。
- Qアトピー性皮膚炎の診断後は、どのように治療を進めるのですか?
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A
▲治療についてわかりやすい説明を心がけている
先新のガイドラインでは、症状の再発を防いで寛解を維持するための「プロアクティブ療法」が推奨されています。症状が出た肌にステロイド外用薬を塗っていち早く炎症の改善を図り、少しずつ保湿にシフトしていく治療法です。これに加えて、最近では塗り薬、飲み薬、注射薬で新しいお薬が登場しました。塗り薬は3種類あり、いずれもやや弱めのステロイドくらいの有用性があり、症状が比較的軽度な場合に適しています。続けて使っても副作用が出にくいのもメリットですね。飲み薬と注射薬は、重症のアトピー性皮膚炎に適しています。これまでは諦めるしかなかったような症状の方、こじらせてしまった方には、福音といえるのではないでしょうか。
- Q治療法はどのように選択されるのでしょう。
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A
▲薬の塗り方についても丁寧に指導を行う
治療の選択肢を複数提示し、最も良いと思える方法を一緒に考えていきます。ただ、前述した先進の治療法は、いずれも価格が高めであることに注意が必要です。塗り薬の場合、体が大きいと使う範囲が広く、必然的に費用がかさみますので、あまり体が大きくない乳幼児のお子さんに使うことが多いです。それ以外は、プロアクティブ療法を行います。ステロイドに怖いイメージを持つ方もいる方もしれませんが、指示どおりに使えば怖い薬ではありません。当院では、アレルギーに関する専門的な知識を持った看護師が薬の量や塗り方を丁寧に指導しますので、わからないことはなんでも聞いてください。
- Q家庭で気をつけることはありますか?
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A
▲普段の生活の中での変化にも気をつける
アトピー性皮膚炎は、どうしても時間がかかります。少し良くなったと思って、自己判断で薬をやめると悪化することがあるので、医師の指示どおりに薬を使いましょう。また、アトピー性皮膚炎のお子さんは、肌のバリア機能が弱く乾燥肌のことが多いです。保湿をしてバリア機能を補い、余計な刺激を防ぐようにしてください。アレルゲン物質のほこりやカビ、ダニを肌につけたままにするのも刺激になりますから、清潔を保つことも大切です。よく泡立てた石鹸の泡で包み込むようにして、手で優しく丁寧に洗うといいですね。特に肘や膝などのしわは汚れや汗がたまりやすいため、忘れずに洗いましょう。