荒木 俊介 理事長、斉宮 真理 先生の独自取材記事
はぐむのあかりクリニック
(北九州市八幡西区/穴生駅)
最終更新日:2025/03/11

「地域の子どもを育み、希望や明かりをともす」との想いを込めた、「はぐむのあかりクリニック」という名前の小児科医院がある。開業は2023年5月。産業医科大学病院のNICU(新生児集中治療室)などで20年以上、新生児や障害のある子どもの診療に携わってきた荒木俊介理事長と、2人の常勤小児科医を加えた3人体制で、一般小児科の外来から、子どもの腎疾患や内分泌疾患専門の外来、発達相談、全世代対応の訪問診療まで広く対応している。今回インタビューしたのは荒木理事長と、一般小児科と腎疾患専門の外来、発達相談を主に担当している斉宮真理先生。「子どもやそのご家族の困り事にともに向き合い、考え、一緒に解決していきたい」と穏やかに話す2人に、同院の特徴を詳しく聞いた。
(取材日2024年9月27日)
小児科、成長障害や夜尿症専門の外来、発達相談も
ぬくもりを感じる、温かい雰囲気の院内ですね。

【荒木理事長】ありがとうございます。待合スペースにある大きな木は当院のシンボルツリー。本棚を置いていて、そこに並べる本のセレクトにもこだわっています。また感染症対策として、通常の入り口とは別に入ることができる個室の待合室を用意。言葉の訓練やカウンセリングを行う「心理室」も備えています。当院は、風邪や便秘、アレルギー疾患など子どものさまざまな病気を診る一般小児科に加え、毎日午後の2時間は予約制で、乳幼児健診や予防接種はもちろん、成長障害や内分泌疾患、夜尿症や腎疾患、発達相談に専門的に対応しています。私を含め3人の医師は日本小児科学会小児科専門医で、さらに子どもの内分泌や腎臓、新生児、在宅医療などそれぞれの専門分野を生かし日々診療にあたっています。私と森下高弘先生は主に訪問診療を、斉宮先生には外来を担当してもらっています。
荒木理事長と斉宮先生の経歴について聞かせてください。
【荒木理事長】産業医科大学を卒業後、そのまま大学の小児科に入局。主にNICUで、さまざまな新生児疾患に24時間体制で対応してきました。その後、埼玉医科大学総合医療センターや、宗像にある障害児や高齢者への在宅医療を専門に行うクリニックで経験を積んだ後、大学病院を退院した子どもたちの成長を今度は外来や訪問診療というかたちでサポートしていこうと、当院を開業しました。
【斉宮先生】私には生まれた時から病気とともに生きてきた兄弟がいて、そこには必ず、ともに伴走してくれる小児科の先生もいました。あんな医師になりたいと産業医科大学に進み、私も理事長と同じく小児科に入局して、福岡市立こども病院や北九州総合病院などに勤務。日本腎臓学会腎臓専門医として子どもの腎疾患や、その他新生児医療や血液腫瘍などさまざまな分野で研鑽し、2024年4月から当院に加わりました。
斉宮先生が患者さんと接する時、大事にしていることは何ですか?

【斉宮先生】「今回来院した目的とは全然関係ないけれど、ちょっと聞いてもいいですか?」という子どもやご家族の声にきちんと向き合うことです。もちろん病気の治療のために来院されるわけですが、そこ以外でも、実は普段から困っていること、心配なこと、なかなか医師に聞けなかったようなことを率直にお話しいただけるのはとてもうれしいことです。「上の子のことなんですが」「指先の皮がむけているのが気になって」「こんなこと聞いていいかわからないけれど」などの声に対して、何かヒントになることが私から言えるかもしれないし、すぐ解決できなくても隣に寄り添って一緒に考えていきたいのです。診察が終わった時に、「今日ここに来て良かったな」と安心して帰っていただけるような診療を心がけています。
経験豊富な医師と看護師が集結し、チームで支える
成長障害や夜尿症などを診察する専門の外来について、詳しく教えてください。

【荒木理事長】私は日本内分泌学会内分泌代謝科専門医の資格も持ち、内分泌や甲状腺の疾患に専門的に対応しています。特に低身長、低体重といった成長障害では、成長ホルモンが出ていないなど何らかの病気が原因となっていることも。治療できる病気を見逃さないためにも、気がかりなことがあれば早めに受診してください。
【斉宮先生】私が担当する腎疾患専門の外来で多いのは、おねしょの相談です。以前は小学3~5年生あたりで相談に来られるケースが多かったのですが、夜尿症は治療できるという認知が広がってきたからか、ここ数年で相談年齢はかなり下がりました。5歳を過ぎておねしょが続く場合は夜尿症という診断がつき、本人のおねしょを治したいというやる気とご家族の理解があれば、飲み薬を使った治療などを進めていくこともできます。様子見でいいのか、治療を検討してもいいのか、まずはご相談いただければと思います。
子どもの発達に関する相談にも対応されています。
【斉宮先生】発達相談では、言葉が出ない、落ち着きがないなど年代に応じて出てくるさまざまな困り事について、まず小児科専門医が診察。必要であれば次回以降、公認心理師につないだりして検査やカウンセリングを進めていきます。発達相談については特に多くのお問い合わせをいただいており、現在初診は2ヵ月待ちの状態です。当院の発達相談の対象年齢は中学生以下。子どもの年齢が上がるとさまざまな精神疾患が混ざってくることも考えられるため、私の中できちんと線引きをし、ここで対応できること、できないことを誠実にお伝えした上で専門の診療科をご紹介することもあります。どこに相談したら良いかわからない方も多いので、当院を足がかりとして活用してください。
経験豊富な医師や看護師など、充実した診療体制も大きな強みですね。

【荒木理事長】森下先生は昔から互いによく知っている仲で、診療する上でもばっちり連携が取れていると思います。特に訪問診療については森下先生は私よりも経験が長く、場数を踏んでいるのでとても頼りにしています。また斉宮先生の親しみやすさ、患者さんに寄り添う姿勢、専門性にも全幅の信頼を置いています。斉宮先生が大学病院などの診療に出向く時間帯には、私や森下先生が代わりに外来に出たり、非常勤の小児科専門医2人に加わってもらったりして、みんなでバランスを取りながら診療しています。
【斉宮先生】看護師さんの主導で「双子会」「三つ子会」が開かれているのも、当院の特徴をよく表していると思います。双子や三つ子を持つ親御さんが定期的に集まり、“ならでは”の苦労や困り事を話してもらう場で、その間、お子さんは看護師さんや保育士さんが預かることも可能です。日程は随時SNSで案内しています。
子どもと家族の困り事に向き合い、隣でともに考える
診療にアプリを活用されているそうですが、どのようなものですか?

【荒木理事長】ご家族がお子さんの日々の成長や症状を記録し、それを私たち医師と情報共有できるようになっているアプリを導入しており、初診時にご案内しています。写真や動画も残すことができ、いつから何度の熱が出た、どんな湿疹が出たなど日記感覚で記録しておいていただければ診察がスムーズに進みますし、振り返る時にも役立ちます。受診の相談の電話が入ったら私たちは患者さんのアプリを確認して、「これなら様子を見ましょう」などアドバイスすることも。ご家族にとっても私たちにとっても、便利なツールです。
ところで斉宮先生ご自身も、子育て真っ最中だとか。
【斉宮先生】今6歳と5歳の子どもがいて、毎日、仕事を終えて家に帰ったらバタバタです(笑)。親御さんからよく伺う、「イライラしてつい怒ってしまう」「離乳食を全然食べない」「かんしゃくを起こして手がつけられない」といったお悩みも、私も同じように通った道で共感できるところはすごく多いですし、現在進行形で悩んでいたりします。小児科医として病気のことや発達のことなどはわかっているのですが、それと育児とはまったく別物。そこはもう育児初心者として日々積み重ねている感じです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

【斉宮先生】小児科医として子どもとご家族に伴走しながら、成長を見守り、私も一緒に成長していけたらと思っています。何でも気軽に相談していただけるような、近い存在になれたらうれしいです。
【荒木理事長】小児科外来と訪問診療を通し、子どもやご家族の悩みに寄り添い一緒に解決していく、そんな診療をめざしています。親御さんは、お子さんに関することで何か心配なことや困ったことがあれば気軽に来てください。子育ての悩みでも大丈夫です。一緒に解決していきましょう。