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東 一成 院長の独自取材記事

入間けやきクリニック

(入間市/入間市駅)

最終更新日:2025/10/06

東一成院長 入間けやきクリニック main

入間市駅のすぐそばにある「入間けやきクリニック」は、2023年に地元出身の東一成院長が開業した訪問診療専門のクリニックだ。東京医科大学病院の救命救急センターで勤務した後、その後精神科で3年間修行するという異色の経歴を持つ。「救命救急と精神科、両方の知識と経験が在宅医療でものすごく役に立っている」と語る東院長。母親が暮らす入間市に訪問診療専門クリニックの数が少ないことを知り、「自分が生まれ育った入間市で在宅医療を盛り上げたい」と開業を決意した。患者の価値観を尊重し、生活の中に医療を届ける東院長に、訪問診療への思い、地域医療への思いを聞いた。

(取材日2025年9月11日)

救命救急と精神科の経験を訪問診療に生かす

入間市で開業された経緯を教えてください。

東一成院長 入間けやきクリニック1

私はもともと入間市の出身で、母は現在も入間市に住んでいます。母が高齢になったのをきっかけに入間市の在宅医療事情を調べてみたんです。すると、市内には訪問診療を専門にしているクリニックがとても少ないことがわかりました。自分の生まれ育った入間市に在宅医療を支える医師が少ないのならば、私自身が取り組めば良い、そんな思いから開業を決めました。現在、入間市の人口は約14万人で、そのうち約2万人の後期高齢者が暮らしています。それにもかかわらず、医療機関が駅周辺のエリアなど、いくつかの場所に偏っているという実情があります。こうした背景を踏まえて、訪問診療を専門とするクリニックで地域医療を支えていきたいと考えました。

救命救急センター、精神科、そして訪問診療という経歴について聞かせてください。

私の医師としての歩みは、東京医科大学病院の救命救急センターで始まりました。命の危機が迫っている緊急度の高い患者さんを診る仕事です。当時は月に15日ほど当直があり、常に緊張の中に身を置いての診療でした。その経験から、どんな状態の方が来ても、命に関わるのかどうか、緊急度を瞬時に判断する力が身につきましたね。また、自ら命を断とうとして緊急搬送されてくる患者さんも多く、身体的治療を終えた後の精神的ケアの重要性を強く感じました。それがきっかけで精神科で3年間修行することにしました。特に認知症専門病棟で精神症状を有する認知症患者さんを数多く担当した経験は大きかったです。実は医師3年目から並行して訪問診療も担当してきました。救命救急センターで診療した患者さんが、自宅で過ごすまでに回復した姿を見て感銘を受けました。救命救急での全身管理と精神科での認知症診療、この両方の経験が在宅医療で非常に役立っています。

こちらのクリニックでは、どのような患者さんを対象に訪問診療を行っているのですか?

東一成院長 入間けやきクリニック2

基本的に依頼があったら全部受けるようにしていますが、高齢の方を多く診ています。体が不自由になったり、認知機能が悪くなったりして通院できなくなった方々です。入間市内の地域によっては医療機関がなくて通院が非常に不便なエリアもあり、医療が必要なのに医療が届いていない状況にある方々もいらっしゃいます。そこに訪問診療として医療サービスを届けたいのです。

人生会議と認知症診療で患者と家族を支える

人生会議(ACP)に力を入れているそうですね。

東一成院長 入間けやきクリニック3

救命救急センターでの経験から、人生会議の重要性を強く感じています。日本では死が差し迫ったとき、自分で意思表示できる人は2割。8割の人はご本人に代わってご家族が最期の迎え方を決めているという現実があります。それなのに、ご家族と最期の迎え方について話をしたことがない方がほとんどです。訪問診療を初めて利用した時点で、ご自身でよく考えている人、ご家族と話をしている人というのは15%程度ではないでしょうか。がん患者さんは末期になると必ず自身の最期をどうするのか考えて話す機会がありますが、認知症、老衰、慢性疾患の方は徐々に衰えるため、きちんと話す機会がないまま時間が過ぎていくことが多いのです。だからこそ初診時に必ず人生会議の話をして、今後の自分はどう生きていくのか、人生の最期をどう迎えるのかについて、しっかりコミュニケーションを取って希望がかなうようにサポートしています。

認知症の方とそのご家族へのサポートについて教えてください。

できるできないを細かく説明することを大切にしています。認知症と診断されると、何もかもができなくなってしまった、と受け止めがちですが、実際は一人ひとり、できることできないことがまったく異なっています。日常の診療の中で、この方はこういうところができなくなっているけど、こういうことはできますよ、と具体的に説明することで、ご家族とご本人の認識のギャップを埋め、不安や不満の解消へとつながります。認知症になる人は家族に嫌われたくないと思っていますが、自分の状態をうまく説明できないことが多いんですね。例えば、私がご本人の代わりにご家族に説明すると「だから何回言ってもできなかったのか……」とご家族の気づきになり、すると家族関係の改善へとつなげられます。周囲の人の理解を深めるアプローチなので、患者さんとご家族に余計な負担を強いることがなく、少しでも長く仲良く過ごせる時間を作るための大切な取り組みなんです。

患者さんの価値観を重視する診療について教えてください。

東一成院長 入間けやきクリニック4

訪問診療は生活の中に医療を届けるものです。外来なら患者さんは医療を求めて来院しますが、訪問診療では生活の中に、必要な医療を届けに行く。この違いが大きいです。例えば、治療ガイドラインではこの薬を飲むように言われているから飲んでください、ではなく、患者さんの希望や生活スタイルを踏まえてメリット・デメリットを説明してご自身が選択できるようにしています。「お酒を飲むのが楽しみだけど、体を悪くしたくない」という相談には、「じゃあこういうペースで飲みましょう、量はこのぐらいにしましょう、飲み方も工夫できますよ」と一緒に考えていきます。患者さんの価値観を聞いて、その中で利益の大きいものを何種類か提案し、その時の気持ちに添うものを選んでもらう。それが基本的な考え方です。

地域全体で支える在宅医療をめざして

訪問診療においては地域連携が重要です。どのようにお考えですか?

東一成院長 入間けやきクリニック5

入間市全体で一つの病院という考え方を大切にしています。クリニックには看護師を置かず、地域の訪問看護師さんと連携する体制を取っています。診療範囲については入間市に限定しているのですが、もっと広いエリアをカバーすることも可能ではあります。でも訪問エリアをあえて入間市内に絞ることで、日常的に顔を合わせる訪問看護師やケアマネジャーと密に連携できます。その結果として、患者さんとそのご家族の満足度を高められています。開業から数年、訪問診療を続けてきて、連携の質が確実に上がっていると手応えを感じています。自分たちで全部をやるのではなく、看護のことは看護師さんに、マネジメントはケアマネジャーさんにお願いする。患者さんを中心に、医師、看護師、ケアマネジャー、ホームヘルパーがチームとして機能する。これが地域全体で患者さんを支える理想的な形だと考えています。

スタッフや地域の医療従事者との関係づくりで大切にしていることは?

楽しく仕事することを大切にしています。働き手の確保が難しい時代、働きやすくて魅力的な勤務条件を用意する努力は必要ですが、私がキーポイントとして考えているのは、一緒に地域で働く仲間のストレスを少なくすることです。仕事中のイライラなどの負の感情を減らして楽しく仕事をする。そして、みんなで良かったことを共有していく。そんな環境づくりを心がけています。人間関係に不満を抱えているチームでは絶対に良い医療の提供はできません。スタッフが気持ち良く働ける環境は、結果的に患者さんの満足度につながります。今、本当に楽しく仕事ができており、この雰囲気を大切にしたいです。

地域の方々へメッセージをお願いします。

東一成院長 入間けやきクリニック6

私は入間市で生まれ育ち、この地域で暮らす人たちを本当に大切に思っています。その根底には、母親や親戚が安心して過ごせる入間市であってほしいという思いがあります。患者さんは私の親世代の方がほとんど。私のことを医師というより地元で医療に詳しい後輩、ぐらいに受け止めてもらって、気軽に相談してもらいたいです。普段、相談しづらいこともしっかりお聞きします。不安を解消することは安心につながり、安心は人が生きていく上でとても大事なことです。そんな思いで日々診療にあたっています。安心して、心穏やかに日常生活を送っていただけたらと思います。

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