大垣 宣敬 院長の独自取材記事
新宿うるおいこころのクリニック
(新宿区/新宿駅)
最終更新日:2024/09/02
新宿三丁目駅直結のビル内にある「新宿うるおいこころのクリニック」は、心療内科・精神科のクリニック。白を基調にしたインテリアや照明にこだわった待合室は、ゆったりとくつろげる雰囲気だ。「診療のハードルが低い、不調を感じた時すぐに来ていただけるアットホームなクリニックをめざしています」と話すのは、2024年7月から院長を務める大垣宣敬先生。もともと内科全般を幅広く診ることができる医師を志していたという大垣院長は、専門の心療内科を柱に、より幅広い視点でさまざまな相談に対応している。早期治療に結びつくスピーディーな診断と診断書の発行、西洋薬に抵抗を感じる人のために漢方薬を導入するなど、患者目線で診療する大垣院長に同院の特徴や心の病気に対する思いについて話を聞いた。
(取材日2024年8月8日)
ハードルの低いアットホームな心療内科をめざして
院長ご就任までのご経歴を教えてください。
杏林大学医学部を卒業後、栃木県にある自治医科大学附属病院で2年間の初期研修を受けました。医師になって3年目からは国立病院機構栃木医療センターで、総合的な内科診療を学ぶべく勤務していたのですが、体調不良のため退職。回復した後、転職を考えた先が「新宿うるおいこころのクリニック」でした。2024年の4月から当院で診療を始め、7月から院長を務めています。
こちらのクリニックの特徴を教えてください。
当院は診療のハードルが低い、不調を感じた時にどなたでも来ていただけるアットホームなクリニックをめざしています。ですから、いろいろな心の不調のみならず、心配事などの相談に乗れるような体制を整えているところが特徴の一つであり、そこは継承していきたいところです。また、当院は新宿三丁目駅直結のビル内にあるので、夏のゲリラ豪雨の時であっても地下道から雨に濡れることなくお越しいただけます。アクセスの良さだけでなく、再診を含め夜の19時半まで診療を受けつけるなど、患者さんが受診しやすい体制を整えています。
働き盛り世代が通いやすい環境ですね。
患者さんの割合としては、都内で働いているビジネスパーソンの方が多い印象です。新宿区だけでなく、遠方からもいらっしゃいますね。当院が開院した去年の春から大きく変わってはいませんが、患者さんにリラックスして過ごしていただくことは、当院のコンセプトの一つですので、少しずつレイアウトを変えながら居心地の良い空間づくりにも取り組んでいます。診察室は、患者さんが安心してご自身のプライベートなことを打ち明けられるよう、すべて個室になっています。また、常勤の医師が数人、非常勤の先生も複数在籍しているのでドクターの層は厚いですね。精神科のバックグラウンドを持つ先生だけでなく他科を経験している先生もいるので、多種多様な診療スタイル、さまざまな視点からアドバイスを行い、幅広い患者さんにアプローチしています。
早期治療へとつなぐ迅速な診断と診断書発行に努める
具体的にどのような疾患に対応されているのですか?
日々のストレスなどが疾患につながっていく適応障害やうつ病の患者さんは多いですね。それ以外にも不安障害、適応障害の要因になる発達障害、ADHDや自閉症、双極性障害などにも対応しています。そのような疾患の患者さんに対して、当院では、できる限り早期に診断し、診断書をお出しすることを心がけています。診断書は、仕事などで負担を感じて休職を要求する際に必要となるケースがほとんどです。「明日からでも休みたい」という深刻な状況の患者さんもいらっしゃいますから、診察に加えて心理検査を行い、客観的な指標もしっかり調べ、患者さんのお話を聞き込みながら、総合的に判断して診断書を発行しています。すぐにお休みに入っていただき、早期治療ができるかたちで診療を進めています。
早期の治療は大切なのですね。
そうですね。ストレスが原因となっているうつ病や適応障害には個人差があって、ストレスは自分が意識していない時期からすでに始まっていることがあります。ストレスがかかっていると自覚している時間よりも、実際にはずっと前からストレスがあったという患者さんは多いですね。このストレスがかかってしまった時間が長ければ長いほど、治療にかかる期間も長くなります。なるべく早く医療介入できたほうが、患者さんの負担も少ないですし、人によってはお薬なしの改善をめざすことができます。そのような観点から、早期の医療介入を実現するため、迅速な診断に努めています。
治療はお薬だけというわけではないのですね。
患者さん自身が薬を飲むことに抵抗感を持つと、それ自体が不安な気持ちにつながってしまい、受けたくない治療を受けているという感覚になってしまいます。これに対しては自分自身が問題意識を持っているので、まずは丁寧にヒアリングをしながら、お薬の説明をしっかりと行い、納得した上で処方しています。それでも使いたくないという方には、例えば体に負担の少ない漢方薬を提案させていただくなどして、患者さんの気持ちや症状に合わせて、できる限り患者さんと一緒に決めていく治療をめざしています。また、最初の予診では公認心理師が患者さんのご状況を詳しくヒアリングする時間を設け、公認心理師の目線も診療に反映させています。
診療の際、大事にされていることは何でしょう?
内科の総合診療を行う先生方は、「患者さん中心の医療をめざす」ということをよくおっしゃいます。私もその考えは大切だと思っていて、治療の中心にいるのは患者さんで、その周りでご家族や医療者がいろいろなサポートをしながら、患者さん自身が自分の力で少しずつ回復に向かうことをめざしています。ですから、治療を進めるにあたっても、患者さんを置いていかないような治療を徹底することで、患者さん自身の「自分の力で治していこう」という気持ちを育みながら治療を進めています。心のご病気の可能性がある一方で、もともと内科的なご病気があって、それが原因で心に不調を来している方も一部いらっしゃいますから、検査を用いながら、内科的な病気も見逃さないよう気をつけながら診させていただいています。
心の病の経験を診療への信頼につなげたい
先生が心療内科をご専門に選ばれたのはなぜですか?
もともと精神科的な領域に興味はあったのですが、実は医師になってから自分自身が適応障害を患った経験があります。すごく苦しい思いをする中で、いろいろな方の力を借りながら、自分自身が治療を受ける経験を通して、世の中にはこういう苦しい思いをしている方がたくさんいらっしゃるのではないかという思いに至りました。自分のこの経験を診療に生かせるのではないか、経験から得たものを大事にしながら診療ができればと考えたことが、この道を選んだ一つのきっかけです。医療者が適応障害を患ったことに対して、驚かれる方もいらっしゃいますが、「この先生も同じ経験をしているのだから、任せても大丈夫そうだ」というところにつなげていけたらいいなと思います。
地域にとってどのようなクリニックでありたいとお考えですか?
開院当初から掲げている「受診するハードルが低く、なんでも話せるクリニック」という目標は継承していきたいと思っています。その中で、患者さんとわれわれの間で気持ちの共有ができるような環境と体制をつくっていくことが、今の課題です。そのため、スタッフ間で情報共有を行いながら、どのようなかたちで良い診療を提供できるかを常に皆で話し合い、風通しの良い環境を体制として整え、チームで患者さんの利益につなげていきたいと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
今の時代においても、心の病気はなかなか周りの理解を得づらい状況があります。そのため、周りに相談することができない患者さんをつくり、それが原因で自分の殻に閉じこもってしまうこともあると思います。ですから、自分が「必要だ」と感じたら、すぐに受診してほしいですね。受診という一歩を踏み出すことは、患者さんにとって大きなきっかけになります。人生は、その人自身の責任のもとで生きていかなくてはいけません。その背中をわれわれが支え相談しながら、ご自分で決めていけるメンタルの状態や環境を整えていきたいと考えています。患者さんの希望や未来への思いが、きっとこれからの人生に生きていくと思います。病気になったことが、考え方によっては一つのチャンスにもなり得ます。自分の人生をしっかりと主体的に考えることが大事だと思うので、それを実現するお手伝いをさせていただきたいと思います。