通院が難しい患者への訪問診療
クリニックレベルの治療をめざす
天川大島にしきどクリニック
(前橋市/前橋大島駅)
最終更新日:2023/11/14


- 保険診療
超高齢社会を迎えた今、自宅で必要な医療を受ける訪問診療や往診のニーズはどんどん高まってきている。とはいえ、自分や家族が訪問診療を受けたことがない場合、どのように診療を進めていくのかイメージがつかない人も少なくないのではないだろうか。「訪問診療は決して敷居が高いものではありません。介護保険を活用してホームヘルパーさんを利用したり、レスパイト入院を利用したりしながら、無理のない治療計画を立てていくことが大切です」と話すのは、「天川大島にしきどクリニック」の錦戸崇院長。今回、訪問診療の対象となる患者をはじめ、自宅で可能な治療、利用の流れなど詳しく語ってもらった。
(取材日2023年7月14日)
目次
患者だけでなく、家族の都合やケアなども考慮していくことが重要
- Qまずは、訪問診療の対象となる患者さんについて教えてください。
-
A
▲昼休みの間に訪問診療を行っている錦戸院長
おうちから外に出ることができない方、通院が困難になることが予想される方などが対象です。高齢で寝たきりの方はもちろん、難病の方や重度の障害があっても入院せずに自宅で過ごしたいという方、がん・悪性腫瘍で最期は自宅で緩和ケアを受けたいという方も含まれます。訪問診療というと高齢者を対象にしたイメージをお持ちかもしれませんが、脳性まひで人工呼吸器を使っている子どもなど幅広い世代が対象です。
- Q往診との違いは何でしょう?
-
A
▲バリアフリーで車いすでも入りやすい院内
患者さんの症状などに応じて診療の頻度を決め、定期的に訪問するのが訪問診療です。一方、普段は元気な方も含め、「急に具合が悪くなったので、自宅で診てほしい」というのが往診ですね。いずれも保険診療になりますが、診療に伺う時間帯や曜日、保険の負担割合などによって費用は変わります。当院の場合、平日午前の診療は12時30分終了、午後の診療は16時開始にしていますが、このお昼休みの間に訪問診療を行っています。
- Q訪問診療を利用する際の流れをお聞かせください。
-
A
▲「通院が難しくても医療を提供したい」と錦戸院長
患者さんやご家族から「訪問診療を受けたい」と直接ご依頼いただくこともあれば、地域のケアマネジャーさんから「訪問診療をしたい患者さんがいる」といった相談を受けることもあります。この場合は、先に介護保険を使って訪問看護やホームヘルパーさんの介護などを受けている方も少なくありません。ほかにも、入院中の患者さんで退院後の暮らしに向けて訪問診療を検討される方もいますね。なお、訪問診療を開始する前には、あらかじめ治療計画を立てます。患者さんやご家族のご都合が良い日時にご自宅へ訪問し、診療の疑問点や不安なことなどをヒアリングした上で、患者さんの状態や症状に合わせて訪問頻度も決めていく流れです。
- Qクリニックレベルの治療をめざしているそうですね。
-
A
▲外来診療と変わらない治療を心がける
クリニックのようにCTやMRIを撮ることはできませんが、これらはそもそも毎回撮るようなものではありませんよね。訪問診療では聴診や血圧測定をはじめ、必要に応じて採血検査や心電図検査、エコー検査などを行うことができます。治療は酸素吸入や点滴も行えますし、クリニックとほぼ同レベルといっても良いのではないでしょうか。外に出ることが難しい患者さんが通院したい場合、介護タクシーやホームヘルパーさんに依頼しなければいけませんし、やはり負担は大きくなってしまいます。ご自宅でクリニックレベルの治療を受けられれば、メリットは大きいはずです。医療側にとっても素の患者さんを見ることができるなどのメリットがありますよ。
- Q患者さんの家族に知ってほしいことなどはありますか?
-
A
▲社会の高齢化に伴い近年ニーズの高まる訪問診療に対応
訪問診療は、医療の一つの体系です。決して敷居が高いものではありません。また、訪問診療はご家族の支えがないと成立しません。ですが、ご家族が疲れてしまうと、訪問診療を続けることは難しくなってしまいます。そのような場合、ご家族の休息を目的に患者さんを一時的に施設に入れるレスパイト入院を手配したり、介護保険でホームヘルパーさんに協力をお願いしたりすることも可能です。訪問診療といっても、いろんなやり方があることを知っていただきたいですね。当院ではご家族の心のケアやスケジュール、生活リズムなども大切にしながら、無理のない治療計画を立てるように心がけています。